はじめに
東京・渋谷でロルフィング・セッションと脳科学から栄養・睡眠・マインドの脳活(脳科学活用)講座を提供している大塚英文です。

先週(2025年4月8日〜)から、東京の市ヶ谷で日本ロルフィング協会主催のアドバンスト(上級)・トレーニング(AT)に参加している(講師は、Ray McCallと田畑 浩良さんの2名)。最初の4日間が終わり、週末を迎えた。
ATの学びの中で、深めていけるテーマは、
「一人一人に合わせたセッションを提供するには、どのようにフレームワーク(枠組み)を考えるか?」
ということだった。そこで今回は、この学びを実践に活かすための視点を中心にまとめたい。
ロルフィングの基礎は「観察力」にある
ロルフィングの基礎トレーニング(BT)は、まず決まった順序(10シリーズ)を学ぶことから始まります。
ここで重要なのは、手技そのものよりも、
「身体をどう観察するか?」
を徹底的に訓練することです。
Ida Rolfのアプローチ:Saturation Method
Ida Rolf博士は、トレーニング初期を「Auditing(観察)」と「Practitioner(施術)」の二段階に分けた。最初は施術をせず、徹底的に他者を観察するだけ。
これをSaturation Method(飽和法)と呼び、「観察が身体に染み込むまで」**情報を与え続ける方法と言える。この基礎があるからこそ、後に一人一人に最適化されたセッションが可能になる。
セッションを設計する際、3つの視点からみること
ATでは、アドバンスト・セッションの「3回シリーズ」「5回シリーズ」などをどのように提供するか?3つの視点からみると、設計しやすい
クライアントは何を期待しているか?(What does the client want/expect?)
- 身体的な不調だけでなく「何を望んでいるのか?」、ニュートラルを意識しつつ、クライアントのことを傾聴する。
「聞くこと自体が、すでにセッションの一部である。」
といってもいい。
クライアントにはどの原理・原則が必要か?(Which principle is lacking?)
ロルフィングには、以下の**5つの原理(Principles)がある。
- WHOLISM(全体性):身体を統一的なシステムとして見る。
- SUPPORT(支持):安定性と自己支持を促す。
- ADAPTABILITY(適応性):環境への柔軟な対応力を高める。
- PALANTONICITY(二方向性):相反する力のバランスを調整する。
- CLOSURE(完了):プロセスに適切な「終わり」を与える。
クライアントを観察し、今、どの原理が不足しているか?を見極めていき、セッションを設計する。
どの分類(Taxonomy)でアプローチするか?(What is the appropriate taxonomy?)
ここで登場するのが「Taxonomy(分類法)」という考え方です。
Jeff Maitlandが初めてロルフィングに取り入れたのだが、なぜこの言葉を使うのか?それは、ロルフィングという複雑な全体性のワークを、さまざまな観点から整理して捉え直すためだ。
身体は一つの「統合された存在」だが、
- 構造(筋膜・骨格)
- 機能(動き・パターン)
- 感情や神経システム
- エネルギーフィールド
といった異なるレイヤーを持っている。
これらを適切に整理し「今、どの観点から働きかけるべきか?」を選ぶために、分類(Taxonomy)が必要になる。
主なTaxonomyには以下があル。
- 構造的・セグメント的(骨格・筋膜構造への介入)
- バイオメカニカル(運動・機能改善)
- 機能的(動き・パターンを重視)
- 心理生物学的(感情や神経系との関係性)
- エネルギー的(情報場やフィールドへの働きかけ)
クライアントの状態に応じて、どのTaxonomyを優先的に見るかを選択することで、より深い、精度の高いセッションの提供が可能になる。
例えば、
- 腰痛を訴えているクライアントに対して、単に腰にアプローチするのではなく、
→ Support(支持)を全身からどう高めるか?の目線でセッションする。 - 動きにぎこちなさがあるクライアントに対して、
→ Adaptability(適応性)をどこから育むか?動きの改善の目線からセッションする。 - 明確な感情的テーマを持つクライアントに対して、
→ 心理生物学的なTaxonomyを用いて「安心・安全な場」を考慮しつつセッションする。
Taxonomyの視点を使うと、一人一人に合わせたセッション設計が明確になるといっていい。
まとめ
「一人一人に合ったセッションを提供する」とは、単なる手技を使うということではない。
それは、
- 観察力を鍛える
- クライアントのニーズを聴き取り、
- 5原則とTaxonomyを柔軟に組み合わせながら
セッションをデザインしていく、クリエイティブなプロセスとして考える。
個人的には、Rayや田畑さんのデモを通して、ロルフィングの奥深さと、セッション設計の自由度の高さを改めて実感している。
これからも、目の前のクライアント一人一人に、より誠実なセッションを提供できるよう探求を続けていきたい。
少しでもこの投稿が役立つことを願っています。