【R#401】なぜ人は“わかっているのに動けない”のか?──身体に固定されたパターンとロルフィング10シリーズ

はじめに

渋谷を拠点にロルフィング®のセッションを行っている大塚英文です。

「やった方がいいと分かっているのに、動けない」

転職したいと思いながら、何年も同じ場所にとどまっている。やるべきことは明確なのに、なぜか先延ばししてしまう。人間関係を変えたいのに、同じ関係に戻ってしまう。

こうした状態は、単なる怠けや意志の弱さではない。むしろ多くの場合、本人はすでに十分に考え、悩み、努力している。それでも動けない。

では、何が起きているのだろうか。

動けないのは「意志」の問題ではない

私たちはつい、「もっと頑張れば動けるはずだ」と考えてしまう。

しかし現実には、

  • 目標を立てても続かない
  • モチベーションが維持できない
  • 決断の直前で止まってしまう

ということが繰り返される。

これは、意志の問題ではない。なぜなら、身体が「止まる」方向に働いているからである。

身体に固定された「止まる構造」

人の身体は、これまでの経験をもとにパターンをつくる。緊張、不安、恐れ、過去の失敗。
それらに対処するために、身体は無意識に反応を学習していく。

たとえば、

  • 呼吸が浅くなる
  • 肩や背中に力が入る
  • 動きを小さくする
  • 感覚を鈍らせる

これらはすべて、「安全を守るための反応」である。

しかしこの反応が固定化すると、本来は必要のない場面でも、同じパターンが繰り返される。

その結果、前に進もうとすると、身体が無意識にブレーキをかけるという状態になる。

「執着」はどこに残るのか?

動けない人の多くは、「手放せない」という感覚を持っている。

  • 過去の出来事
  • 人間関係
  • 自分の役割
  • あるべき姿

頭では「もう必要ない」と分かっている。それでも離れられない。

これは心理的な問題のように見えるが、実際には、身体レベルでパターンが維持されている状態である。

つまり、執着とは「考え」ではなく、身体に残っている“形”や“緊張”である。

なぜ頭から変えようとしてもうまくいかないのか?

多くの人は、思考や感情を通じて自分を変えようとする。しかし、身体のパターンが変わっていなければ、同じ反応が繰り返される。

なぜなら、身体は思考よりも速く反応するからである。

あるクライアントの変化

以前、こんなクライアントがいた。

「自分と向き合うのが怖い」しかし同時に、「変わりたい」という好奇心もある。その方は、毎回セッションに来られるのだが、最初はほとんど世間話のような会話が中心だった。本質的な話に少し触れようとすると、途端に怖さが出て、言葉が止まる。

とても興味深かったのは、セッションの中ではなく、セッションの“後”に変化が起きていたことである。

身体が整った後、それまで強くあった「ビビり」の反応が、自然と弱まっていく。

その結果、毎回、ビジネス上の課題がひとつずつ整理され、心が少しずつスッキリしていく。

変化は「会話」ではなく「身体」から起きていた

私は特別なアドバイスをしたわけではない。むしろ意識していたのは、身体を整えることに徹することであった。

すると、

「わかっているのに動けない」状態から、
「わかっているから動ける」状態へ

少しずつ変化していった。

主語が変わるとき、人は動き出す

私はできるだけ、セッション中の会話をメモしている。

その方の10回の記録を見返したとき、非常に象徴的な変化があった。

それは、「主語」が変わっていったことである。

最初は、

  • 「周りの人がこうで…」
  • 「会社がこうで…」
  • 「環境が…」

といったように、主語は常に「他人」だった。

しかしセッションが進み、身体の感覚が深まっていくにつれて、

  • 「自分はどうしたいのか」
  • 「自分は何を感じているのか」

という言葉が、自然と増えていった。

身体感覚は「今ここ」に戻す

身体感覚には、「今ここ」に引き戻す力がある。

思考は過去や未来に向かいやすいが、身体は常に現在に存在している。

そのため、身体の感覚が回復すると、

  • 現実をより正確に感じられるようになり
  • 自分の状態が明確になり
  • 選択がシンプルになる

最終的に起こった変化

10回のセッションを終えたとき、その方はこう言った。「自分の幸せは、自分で取り戻すものだと分かりました」

これは、頭で理解した言葉ではない。身体・感覚・思考が一致したときに出てくる実感のある言葉である。

ロルフィング10シリーズがもたらすもの

ロルフィングの10シリーズは、単に身体を整えるものではない。

それは、人の「選び方」を変えていくプロセスである。

  • 感じ方が変わる
  • 見え方が変わる
  • 主語が変わる
  • そして行動が変わる

まとめ

人が動けないのは、考えが足りないからではない。意志が弱いからでもない。

それは、身体に「止まる構造」があるからである。

ロルフィングは、その構造に働きかける。

そして、

「どうするべきか」を考える前に、
「自然に動ける状態」をつくり出す。

もしあなたが、

  • わかっているのに動けない
  • 同じパターンを繰り返している
  • 手放したいのに手放せない

と感じているのであれば、

それは「考え方」ではなく、「身体のパターン」の問題かもしれない。

ロルフィングは、そのパターンを見直すための方法である。そしてそこには、これまでとは違う選択が自然に生まれる余地がある。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka