【R#342】「プレゼンス」とは何か?〜AT Phase 1の総括②〜AT-1(15)〜

はじめに

東京・渋谷でロルフィング・セッションと脳科学から栄養・睡眠・マインドの脳活(脳科学活用)講座を提供している大塚英文です。

2025年4月8日〜25日の最初の3週間(各週4日間、火曜日〜金曜日、合計12日間)、東京の市ヶ谷で日本ロルフィング協会主催のアドバンスト(上級)・トレーニング(AT)が終わった(講師は、Ray McCallと田畑 浩良さんの2名)。

ATの総括〜ニュートラルについて7回の連載

ATの前半のトレーニングを振り返ってみて、最も学んだことは、セッションの中で「ニュートラル(Neutral)」になるとは何か?だった。

今回、ATを総括する意味で、7回に分けて、以下のタイトルで「ニュートラル」についてまとめたい。

今回は「ニュートラル」という考え方を更に拡張し、「プレゼンス(presence)」についてまとめる。

プレゼンスとは「そこに在ること」

ロルフィングにおけるプレゼンスとは、単なる「存在」ではない。

  • クライアントのプロセスに干渉しすぎることなく
  • しかし無関心でもなく
  • 必要なだけ関わりながら、余計なものを持ち込まない

そんな絶妙な「そこに在る」在り方を指す。

プレゼンスとは「正しい行い(Right Action)」を可能にする状態としてみなすことができる。正しい行いとは、「手放すこと(letting happen)」と「関わること(making happen)」の適切なバランスをとること。

Jeff Maitlandは、正しい行いとは、「あるがまま(what is)」を尊重し、それを変えようとするのではなく、現れるのを許す姿勢と言っている。

プレゼンスがあればこそ、このバランスを、瞬間瞬間で調整し続けることができる。

プレゼンスがもたらす変化

プレゼンスのあるプラクティショナーがいるとき、セッションの空間は自然に変わっていく。

  • クライアントが自分の内側により深くアクセスできる
  • 必要なプロセスが無理なく展開していく
  • セッションが「直線的な操作」ではなく「開かれた探求」になる

つまり、プレゼンスとは、空間と身体に「変化が起きる余地(スペース)」をもたらす力でもある。

プレゼンスが欠けると、セッションは単なる「操作」や「修正」に堕してしまい、クライアントの深い変容を引き出すことは難しくなる。

プレゼンスを育てるために

では、どうすればプレゼンスを育むことができるのだろうか?前回お伝えした「ニュートラル」と同様、以下の考え方が役立つ。

ニュートラルに戻る

プレゼンスの土台は「ニュートラル」。自分自身が「今ここ」にあり、結果に執着していない。
背後のスペース(Back Space)を感じ、Hara(腹)に意識を置きながら、ニュートラルな状態に留まる練習を続ける。

手に「情報を形作らせる」

Shape the hand。クライアントの身体に自分の手を「形作ってもらう」。この姿勢は、プレゼンスを保つために極めて重要。自ら押したり、引いたりするのではなく、身体の声に耳を澄ませ、手を委ねること。

意図(Intention)ではなく、志向性(Intentionality)を持つ

「こう変えたい」という意図ではなく、「この方向に開かれている」という志向性を持つ。
志向性とは、結果に執着せず、プロセスに寄り添う態度。この態度がプレゼンスを支える。

プレゼンスと「触媒(Catalyst)」の比喩

プレゼンスは「触媒(catalyst)」と喩えてもいい。

  • 触媒は、化学反応を促進するが、自らは変化しない
  • プラクティショナーも、変化を「起こさせる」のではなく、
    変化が自然に起きる場を保持する

つまり、プレゼンスとは、深い介入でありながら、同時にニュートラルであるという、高度な状態と言ってもいい。

まとめ

プレゼンスとは、クライアントに干渉せず、しかし無関心でもない、適切な「そこに在る」在り方

正しい行い(Right Action)=「手放す」と「関わる」のバランスをとることを可能にする

プレゼンスを育むためには、

ニュートラルに戻ること
・手を形作ってもらうこと(Shape the hand)
・志向性(Intentionality)を持つこと

が重要。

プレゼンスは、変化を促進する「触媒(Catalyst)」のような存在である。

少しでも、この投稿が役立つことを願っています。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka