【R#284】ニュートラルな心〜「最小限」「待つこと」「間」

はじめに

東京・渋谷でロルフィング・セッションと脳科学から栄養・睡眠・マインドの脳活(脳科学活用)講座を提供している大塚英文です。

ロルフィングの手技を使って身体を整えていくと、徐々に世界に対する見る目が変化。「他人軸」で物事を見ていた世界が「自分軸」で物見る世界へと変化する。

前回、ロルフィングでは「筋膜」にアプローチするため、施術者(ロルファー)は、ニュートラルな状態になること。「筋膜」が動きたい方向へ動くまで待つこと。動き出したら(勝手に動き出したら)、その方向へ誘導すること。身体が整いたい方向へ変化し始めること。結果的に、身体内で主体性が働き出し「自分軸」で物事を判断するきっかけとなることをシェアした。

今回は、ニュートラル(中立)になること、って何なのか?について取り上げたい。

ニュートラルとは何か?

過去に、CTIコーチング(コー・アクティブ・コーチング)NLP(NLP Japanラーニングセンター)を含め、「人の話を聴く」ためには何が必要なのか?セミナーを通じ学んだことがある。共に強調していたのは、ニュートラルになることだった。

ニュートラルといえば「中庸になる」「ジャッジしない」「初心に戻る」等、と表現されることが多い。

世界に対する見方を変える〜身体から心へのアプローチ」に書いたが、

ニュートラルに関しては、鈴木俊隆さんの「禅マインド ビギナーズ・マインド(サンガ新書)」の言葉がわかりやすいと感じている。

以下引用すると、

In the beginner’s mind there are many possibilities, in the expert’s mind there are few.
初心者の心には多くの可能性があるが、専門家の心には可能性がほとんどない。

As soon as you see something, you already start to intellectualize it. As soon as you intellectualize something, it is no longer what you saw
何かを見ると、知性が働き始める。知性で考えると、見るものと違うものになる。

だからこそ、ロルフィングのセッションの提供を開始してから、瞑想を日々の生活の中に取り入れている。そして、常に、自分の中心軸を意識しながら、ニュートラルになることを心掛けている。

このように自分の「在り方(Being)」が大切。なぜならば、無意識のレベルで相手に伝わることからだ。

最小限の情報と、答えを待つ姿勢

このように「ニュートラル」なマインドを意識した上に、
「相手には、最小限の情報を与え、相手が答えを出すために考える時間と心のスペースを用意する」
を心がけるようにしている。

体験を含め、300人以上のクライアントさんにロルフィングのセッションを提供しているが、
「知識が豊富で相手にこれだけ知っているんだよ!」
と自慢しようと思えばすぐに出来ると思う。

ロルフィングのセッションを通じて感じるのは、一人一人の身体は違うこと。その上で、今までの知識が通用するかどうかわからないことだ。逆に、一人一人対峙するときには新鮮な眼、
「全くこの人については私は分かっていない」
という前提で接することの方がうまくいくのだ。

なぜならば、相手のことを全て知っている、全ての知識があるという前提で自分が接すると、相手が「理解されない」「ジャッジされている」「この場が安心安全ではない」と感じて心を閉ざしてしまうからだ。

さらにいうと、相手の悩みや問題点が言語化されるには思いの外、時間がかかるのだ。

「言語化」を「待つこと」の難しさ

鷲田清一さんの「「待つ」ということ」には、その点の言語化が上手いので、少し引用したい。

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「聴くということがだれかの言葉で受け止めることがあるとするならば、聴くというのは待つことである。話す側からすればそれは、何を言っても受け容れてもらえる、留保をつけずに言葉を受け止めてくれる、そういう、じぶんがそのままで受け容れてもらえるという感触のことである。とすれば、

<聴く>とは、どういう形で言葉がこぼれ落ちてくるのか予測不可能な<他>の訪れを待つということであろう。

なぜ言葉を迎えに行くのが<聴く>ことの最悪の形とになるのかといえば、語ることが自らに距離をとることだからである。苦しい時に、ひとはだれかにかたることでその苦しみを分かち持って欲しいと願うが、しかしその苦しみは最も語りにくいものである。苦しければ苦しいほど語りは難しい。理由は何重にもなっている。

まず、苦しい時にはそもそもそれを他人には語らないものである。苦しいはなによりも忘れたいことであり、語ることでそれをわざわざ思い出すことはない。苦しいことはまた、本人以外にはなかなか判りづらいものである。」

ニュートラルから外れる場合(1)〜役立ちたい!

現場でセッションを提供していると、ニュートラルから外れることがある。

例えば、
「自分はこの人のために役立てよう」
「治してあげたい」「このスキルを使いたい」
等。

いずれも、ニュートラルから離れ、自分の内面に入りすぎ(主観的になりすぎている)てしまい、自分の考えと他人の考えの区別ができなくなってしまう状態になってしまっている。このような場合は、相手がどのようなことを考えて、どういったことを課題を持っているのか見失ってしまう。

ニュートラルから外れる場合(2)〜目に頼りすぎる

身体を観察するときもそうだ。

目に頼り身体を観察すればするほど情報量が増えてしまい大切なものを見失ってしまうことがある

情報収集が多くなると、その人をありのままに見るのではなく、知識や技術が先走って、その人のためにならないセッションになってしまう。

対策は、目的をはっきりさせながら、情報を絞り込んでいくこと。ロルフィングでは、Less is Moreと表現。最小限の施術で最大限の効果が得られることへつながる。

これは、人の話を聴くときや「筋膜」へアプローチする時も同じこと。相手が自分の内面入り、自分で解決策を見つけ出す手助けをすることが重要。できるだけその人の話を聞いて、相手のガイド役となることだ。

会話に集中し
「気になったことを質問すること」

「直感で思い浮かんだことを問いかけてみること」
を行うこと。その結果として、情報が自然に絞り込まれていき、見えてこないことが見えてくるようになる。そして、相手が、自分の言葉で自分の状態を語り、必要とする解決策を自分で見つけることができれば大成功といえる。

まとめ

今回は色々な角度でニュートラルについて、
相手には、最小限の情報を与え、相手が答えを出すために考える時間と心のスペースを用意する
の視点からまとめさせていただいた。

少しでもこの投稿が役立つことを願っています。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka