製薬業界の博士がなぜロルフィングの道を選んだか——その理由とミッションは「博士(PhD、医学)から認定ロルファー®へ」で詳しく書いた。

このページでは、その後の12年間のトレーニングの軌跡を記録している。どこで何を学んだか、誰に師事したか、そして各段階で何が変わったか——施術の深さの背景を知りたい方のための地図だ。
CHAPTER 1:出会い(2013年)
7年間のアシュタンガ・ヴィンヤーサ・ヨガの実践を通じて、身体感覚は磨かれていった。しかし同時に、肩や首の緊張がポーズの深まりを妨げていることも明らかになってきた。
様々な方法を試す中で、2013年12月、ロルフィングに出会った。
2013年12月29日から週1回、翌2014年3月2日まで計10回のセッションを受けた。筋膜へのアプローチによって身体の緊張が解けていく体験は、それまでのどの身体ワークとも根本的に異なるものだった。
CHAPTER 2:ベーシック認定(2014〜2016年)
10回のセッションを受け終えた直後、「これを学びたい」という確信が生まれた。2014年7月、外資系製薬会社を退社。世界一周の旅に出ながら、ドイツ・ミュンヘンでロルフィングのベーシックトレーニングに参加した。
トレーニングは4つのフェーズで構成されていた。
- Phase I(2014年8月・15日間):動き・解剖学・タッチの基礎(Munich)
- Phase II(2014年10〜11月・33日間):身体の統合(Munich)
- Phase III(2015年2〜3月・30日間):施術の実践(Munich)
- Phase IV Supervision(2016年12月・6日間):スーパービジョン(Munich)
84日間のトレーニングは、身体構造・重力・筋膜の関係を一から学び直す体験だった。製薬会社での11年間が「分子レベルの生命」を扱っていたとすれば、ロルフィングは「重力の中で生きる身体全体」を扱う世界だった。
2015年3月、認定ロルファー™として認定を受け、同年7月より渋谷で活動を開始した。
- ロルファーになるには何が必要か──資格・認定団体・トレーニングの全体像をロルファーが解説
- ヨーロッパのロルファーとしての認定までの歩みについて〜ヨーロッパ・ロルフィング協会・認定トレーニング
- ロルフィングの10回セッションとは何か── 身体が変わる3つのフェーズと各回の流れ
- 世界一周の旅との接続──製薬会社を辞めて旅に出た理由
CHAPTER 3:ロルフ・ムーブメント認定(2017〜2019年)
ロルファーとして活動を始めてから2年後、「動き」の教育に特化したロルフ・ムーブメントの探究を始めた。
ERA(ヨーロッパ・ロルフィング協会)主催のトレーニングに参加。Part 1〜3の30日間を経て、2019年12月、ロルフ・ムーブメント・プラクティショナーとして認定された。7名の教師から学んだ。
構造(筋膜・姿勢)へのアプローチだけでなく、「どう動くか」「どう重力と関わるか」という動きの教育が加わることで、施術は新しい深さを持つようになった。
CHAPTER 4:継続トレーニング(2016〜2017年)
認定を受けた後は、何を学ぶかを自分で決めることになる。ロルファーの道のりで、学ぶ内容を自分で選べる唯一の段階である。
2016年9月から2017年7月にかけて、6つのワークショップを受けた。合計26日間。
- Neural Fascial Mobilization(Jonathan Martine、12日間、東京):神経筋膜へのアプローチ
- Bone Work(Sharon Wheeler、5日間、東京):骨への直接的なアプローチ
- Structural Integration for the Cranium(Sharon Wheeler、4日間、シアトル):頭蓋への構造的アプローチ
- Trauma Workshop(Lael Keen、1日間、東京):身体とトラウマの関係
- Dimensions of Integration(Gael Rosewood、4日間、東京):ムーブメントからの統合
- Peter Schwind WS(3日間、ミュンヘン):筋膜と構造統合
Sharon Wheeler と Gael Rosewood は、いずれも1969年から1970年頃にIda Rolfから直接学んだ人である。体系化される前のロルフィングがどういうものだったかを、直接聞くことができた。
CHAPTER 5:ソースポイントセラピーの習得(2015〜2020年)
ロルフィング認定直後の2015年10月から、ソースポイントセラピーのトレーニングを開始した。Module 1・2(2015年・大阪)、補足コース(2017年・大阪)、Module 3(2020年・大阪)と計14日間、5年間にわたる学びだった。
光・音・動き・触れることを通じて、身体の設計図(blueprint)にアクセスするというアプローチは、「身体の中に答えがある」というロルフィングの哲学をさらに深めるものだった。
CHAPTER 6:IMAC(2015〜2021年)
ソースポイントセラピーと同じ時期に、IMAC(Integrative Movement Assessment & Conditioning)の学びも始まった。開発者はロルファーの佐藤博紀さん。アスレチックトレーナーとしてNFLとMLBで働いた経歴を持ち、オステオパシーのクラスで15年以上通訳をしてきた人でもある。
2015年12月から2016年4月にかけて基礎編を受けたが、そこで一度中断している。手技の経験が浅く、解剖学の基礎も不足していて、学んでも身につかなかった。2年半空けて2018年11月に再開し、2021年12月まで続いた。
関節と筋肉の可動域から身体を評価する方法として始まり、内臓と発生学へ進み、経絡を組み込んだ評価へ発展していった。ロルフィングの課程では扱われないクラニオセイクラル・バイオダイナミクスも、この方から学んでいる。
日本のロルファーで、最も影響を受けた方である。
CHAPTER 7:ソマティック・エクスペリエンシング(2021〜2023年)
2017年3月、日本ロルフィング協会の総会に合わせて開かれた1日のワークショップで、ソマティック・エクスペリエンシング(SE)に触れた。講師はブラジル在住のLael Keen。ロルフィングの10回シリーズのうち半分は通常どおりでうまくいくが、残りの半分には何らかのトラウマへのアプローチが要る、という話から始まった。
その1日が、4年後の32日間につながる。
2021年2月からSEの初級を12日間(Ariel Girretto)。2022年から2023年にかけて、DARE(Dynamic Attachment Repatterning experience)を16日間(Patricia Meadows)、Eye of the Needle(SE Master Class)を5日間(Dave Berger)。後半の2つは、通訳として入りながら受け取った。
訳すというのは、理解していなければできない仕事である。聞いて分かった気になることと、別の言語に置き換えることのあいだには、はっきりした差がある。訳せない箇所は、分かっていない箇所だった。
DAREで学んだのは、愛着理論である。幼少期の養育者との結びつきが、その後の対人関係や感情調整にどう影響するか。そしてそれが、呼吸、筋緊張、姿勢として、いまの身体に現れ続けているということ。
ロルフィングは身体の「かたち」に働きかける手法だが、その変化は物理的な領域にとどまらない。他者とどうつながるか、自分とどう向き合うか——そこにも及ぶ。身体に刻まれたつながりの記憶が、呼吸や筋緊張や姿勢に影響している。
トレーニングで扱った内容そのものはここには書けないが、DAREから受け取った愛着理論を、ロルフィングの視点で5回の連載として書いた。
- 愛着スタイルはなぜ身体に刻まれるのか──ロルフィングと愛着理論(第1回)
- ロルフィングとトラウマ──自律神経と愛着が示す身体の知恵(第2回)
- 愛着パターンはロルフィングで書き換えられるのか──関係性の再体験(第3回)
- ロルフィングはなぜ「安心の地図」を描きなおすのか──ポリヴェーガル理論(第4回)
- ロルフィングと愛着──「つながり直す力」が戻るとき(第5回)
CHAPTER 8:アドバンスト認定(2025年)
2025年7月、アドバンスト・ロルファーとして認定を受けた。
24日間に及ぶトレーニングは、10年間の実践を統合する体験だった。ベーシック認定から10年が経ち、身体の見え方・触れ方・言語化の深さが根本から変わっていることを実感した。
12年の深化が、今の施術につながっている
2013年の最初のセッションから2025年のアドバンスト認定まで、12年。
ベーシック認定(2015年)→ ソースポイントセラピーとIMACの習得(2015〜2021年)→ 継続トレーニング(2016〜2017年)→ ムーブメント認定(2019年)→ アドバンスト認定(2025年)——この軌跡は、単なる資格の積み重ねではない。
「身体の中に答えがある」という確信が、施術を重ねるごとにより深い実感として積み重なってきた歩みだ。
製薬会社での11年、26カ国・65都市の世界一周、そしてこの12年のロルファーとしての探究——すべての体験が、「頭ではわかっているのに動けない」という問いに向き合うための土台になっている。
| 年月 | 内容 |
|---|---|
| 2013年12月 | ロルフィングとの出会い・10回のセッション受講 |
| 2014年7月 | 外資系製薬会社を退社・世界一周の旅へ |
| 2014年8〜11月 | ベーシックトレーニング Phase I・II(Munich) |
| 2015年2〜3月 | ベーシックトレーニング Phase III・認定ロルファー™ |
| 2015年7月 | 渋谷にて活動開始 |
| 2015年10〜11月 | ソースポイントセラピー Module 1・2(大阪) |
| 2015年12月〜2016年4月 | IMAC 基礎編(大阪) |
| 2016年9月〜2017年7月 | 継続トレーニング 6ワークショップ・26日間(東京/シアトル/ミュンヘン) |
| 2016年12月 | ベーシックトレーニング Phase IV Supervision(Munich) |
| 2017年12月 | ソースポイントセラピー補足コース(大阪) |
| 2017〜2019年 | ロルフ・ムーブメント・プラクティショナートレーニング(欧州) |
| 2019年12月 | ロルフ・ムーブメント・プラクティショナー認定 |
| 2018年11月〜2021年12月 | IMAC 内臓編・基礎コース・上級コース・統合編(大阪/東京) |
| 2020年10月 | ソースポイントセラピー Module 3(大阪)・習得完了 |
| 2021年2月〜11月 | ソマティック・エクスペリエンシング 初級(12日間・オンライン) |
| 2022年1月〜2023年5月 | DARE(16日間・オンライン・通訳として参加) |
| 2023年6〜7月 | Eye of the Needle / SE Master Class(5日間・幕張・通訳として参加) |
| 2025年7月 | アドバンスト・ロルファー™認定 |
身体から変わりたい方へ
まずは体験セッションで、あなたの身体に何が起きているかを確認してください。
なぜこの道を選んだかを知りたい方へ
トレーニングの記録ではなく、「なぜ製薬業界の博士がロルフィングの道を選んだか」というミッションと哲学を読みたい方はこちら。
思考・認識から変わりたい方へ
同じ問い——「頭ではわかっているのに動けない」——を哲学・脳科学・認知バイアスの視点から扱っているのが、Mind and Bodywork Labだ。身体からのアプローチと、思考からのアプローチ。両方を知ることで、変容はより深くなる。
→ Mind and Bodywork Lab:このサイトの歩き方
著者:大塚英文(Ph.D.)|認定アドバンスト・ロルファー™/ロルフ・ムーブメント・プラクティショナー/ソースポイントセラピー・プラクティショナー。東京・渋谷を拠点に、ロルフィング®セッションを提供している。
