はじめに
ヨガを始めて20年近くになる。最初は週1回、ジムに入っていたクラスだった。2008年4月からは渋谷のスタジオで週4〜5回の朝練習に変わり、それが6年続いた。いまは自宅で練習している。
その途中に、45日間のトレーニングが挟まっている。2011年5月から2014年10月まで。ヨガセラピー、指導者養成、アジャストメント、解剖学、リストラティブ、トラウマ、経絡、陰ヨガ。最後の4日間は、ミュンヘンでロルフィングの基礎トレーニングを受けている最中に、フランクフルトへ出て受けたものだ。
この記事は、その記録である。いつ、どこで、誰から学んだのか。そして、そこから何が後の仕事につながったのか。
ソースポイントセラピーやIMACの総括と違って、ヨガは日数だけでは表せない。土台に日々の練習があり、その上にトレーニングがある。だから両方まとめることができる。
アシュタンガ・ヴィンヤーサ・ヨガの実践
始まりは、ジムだった。TOTAL WORKOUT・渋谷店に週3回通って運動していて、そこへケン・ハラクマ(Ken Harakuma)さん主宰のIYC(インターナショナル・ヨガ・センター)のアシュタンガ・ヴィンヤーサ・ヨガ・クラス(以下アシュタンガ)が入っていた。週1回、それを受けたのが最初になる。筋力トレーニングよりも疲れにくく、精神的にリラックスできることが分かった。
1年ほど通ううちに、早朝に練習できる環境を探すようになった。「マイソール」「渋谷」で検索して、マイソール東京に連絡を取る。2008年4月1日、当時スタジオがあったスタジオ・ヨギー渋谷店に伺った。見学してから決めるつもりだったが、練習の雰囲気がよかったので、その場で週5回券(月18,000円)を買った。タリック・ターミ(Tarik Thami)先生のもとで練習を始めることになる。
平日は午前5時頃に起床し、午前6時に渋谷のスタジオに入る。週4〜5回。マイソールの指導法は、生徒が自習的に練習することを基本とし、必要に応じて先生からポーズのアジャストや指導が入る。
最初は柔軟性がなく、これは無理だと思っていたポーズが、少しずつ身体が開かれて、やがてできるようになる。2年過ぎて、少しずつできるようになり、2011年頃から、セカンド・シリーズへ。同シリーズに出てくるカポターサナという後屈のポーズは、つま先に手が届くまで、その後、週4〜5回の練習を2年かけた。
踵まで自力で届くようになったのは、それから先のことで、ロルフィングの10回シリーズを受けた2014年3月以降だった。
練習が継続できた理由は、素の自分でいられたことが大きい。タリック先生は器が広く、何でもよいと受け入れてくれた。話しやすい雰囲気も作ってくれた。これは、2014年10月に受講する、ロルフィング基礎トレーニング(Phase II)のGiovanni Felicioni先生と相通じるものがあった。
スタジオに通っていたのは2014年頃まで。2014年7月から一年の世界一周と、その間のドイツでのロルフィングのトレーニングで、通えなくなった。その後も、2020年7月31日にマイソール東京がクローズするまで、時々、マイソール東京に通う。結局、タリック先生との関係は12年になる。現在は自宅で練習している。
- 運動することとヨガ〜ヨガとどのように出会ったのか?
- マイソール東京がクローズへ〜ヨガとの出会い+タリックとの12年間+仲間との思い出
- ヨガの早朝練習〜約7年半が過ぎて
- ヨガを日々に取り入れてから10年〜ヨガの実践を通じて何が変わったのか?
アシュタンガの内側で深めた
アシュタンガの外に出る前も、アシュタンガの様々なインストラクターから学ぶ機会に恵まれた。
2010年5月7日と8日、ハワイ在住のナンシー・ギルゴフ(Nancy Gilgoff)のワークショップ。同年9月17日から19日、テキサス及びハワイ在住のデイヴィッド・スウェンソン(David Swenson)のワークショップ。どちらも、アシュタンガの創始者パタビ・ジョイス(K. Pattabhi Jois)の系統の指導者である。
タリック先生のリトリートにも参加した。2010年7月17日から19日、和歌山県高野山普賢院。2012年10月20日から25日、フィリピンのボラカイ島。2013年11月22日から24日、野沢温泉。いずれもマイソール東京の主催で、ここで練習仲間と親しくなった。
タリック先生がインドのマイソールへ行っている期間には、海外の指導者が代わって教えていた。Luke Jordan、Dominic Corigliano、Matt Corigliano、Mark Robberds、Jason Stein、Sonja Radvilla、Manuel Ferreira、Yan Ong、Hamish Hendry。特に、Dominicは、Senior Instructorの1人で、自然体で、自分の個性を最大限に発揮してくれるような指導が自分に合い、気づきも大きかった。
シャラート・ジョイス(Sharath Jois)のワークショップにも参加している。パタビ・ジョイスの孫で、2009年に祖父が亡くなった後、アシュタンガ・ヨガ研究所のディレクターを継いだ人である。ワークショップとして開催されたもので、招いた一人がタリック先生だった。
インドへ行かなくても、様々な先生方から影響を受けたことになる。これは、ロルフィングのトレーニングも同じで、アドバンスト・ロルファーの認定までに様々な先生方にお世話になった。
タリック先生自身のワークショップにも参加している。2015年8月30日の「アシュタンガヨガの基本: トリシュターナとヴィンヤサ」は、日曜日にもかかわらず40人ほどが集まった。座学が1時間あり、トリシュターナ(ドリスティ、アーサナ、呼吸)、バンダ、ヴィンヤーサの意義が扱われた。パタビ・ジョイスはウジャイ呼吸とは言わず Free breathing と言っていたという話も、このときに聞いている。
9月13日には2回目があり、立位のポーズを一つずつ見ていった。
最初のトレーニングは、ヨガセラピーだった
45日の記録は、2011年5月から始まる。
三浦敏郎(当時、三浦徒志郎)さんが下北沢で主宰していたクリパル・ジャパンで、フェニックス・ライジング・ヨガ・セラピーの3日間集中コースを受けた。5月3日、4日、5日。加えて5月7日に「瞑想の基礎」。アシュタンガの練習仲間からの紹介だった。
当時のブログには「コーチングとヨガが一緒になると」というタイトルで書いている。この方法が、身体を使ったコーチングのように感じられたからだ。
フェニックス・ライジングでは、プラクティショナーの補助を受けながらヨガのポーズに入り、エッジと呼ばれる場所に近づいていく。エッジとは、限界を超えることではなく、もう少し先へ行けそうだが同時に何かが起こり始めている、と感じる境界のことである。そこで「何が起きていますか?」と問いかけられる。答えを先生が教えるのではない。
身体に起きていることを感じ、その感覚に言葉を与えながら、自分で気づいていく。
2年前の2009年4月から12月まで、CTIのコーチングを応用コースまで学んでいた。そこには、クライアントはもともと完全な存在であり、自分で答えを見つける力を持っている、という前提がある。ヨガセラピーにも、それとよく似た考えがあった。違うのは入口で、コーチングは言葉から、ヨガセラピーは身体感覚から入る。
この3日間で扱われたのは、ポーズだけではなかった。人の話を意識的に聴くこと。体験を分かち合うこと。そして、自分と他人のあいだの境界。
境界については、外側の境界と内側の境界に分けて学んだ。外側の境界があると、自分と他人のあいだに距離を保ち、相手が自分に接触してくることを拒否したり許可したりできる。健全な境界を持っているときは、他人に接触する前に許可を得られるし、相手が安心できるように近づき過ぎないよう注意できる。内側の境界は、自分の考えや気持ちや行動が健全に働くように守る役目を果たす。
当時のブログには、コーチングとの共通性のところまでしか書いていない。境界の話が施術の主題になるのは、3年半後のロンドンからである。
そして15年後の2026年8月、同じ三浦敏郎さんのワークショップに参加した。そのときには、ロルフィングもロルフ・ムーブメントも学んだ後で、同じ体験の見え方が変わっていた。
- コーチングとヨガが一緒になると〜フェニックス・ライジング・ヨガセラピーのワークショップに参加して
- 瞑想と呼吸の大切さ
- 『ヨガの実践、その先へ』──2つのアプローチで深める「気づき」のプロセス〜Part 1:クリパル・ヨガ・ティーチャー・三浦敏郎さんとの出会い
- 『ヨガの実践、その先へ』──2つのアプローチで深める「気づき」のプロセス〜Part 2:どのようにして「場」を作っていくのか?
流派の外へ出て気づいたこと
ヨガの世界を見ていると、流派にこだわる人が多い。私も最初アシュタンガから入ったので、これがよいものだと思っていた。
それがクリパルヨガを受けて、他の流派の考えも知りたくなった。そこで2012年7月から、アンダーザライト ヨガスクール(UTL)で指導者養成のコースを受けることにした。2013年1月にRYT200の認定を受けている。
RYT200というのは、全米ヨガアライアンス(Yoga Alliance)という国際的な団体が認定する、200時間のヨガ指導者資格である。定められた内容と時間の課程を修了すると申請できる。RYTは Registered Yoga Teacher の略で、200は時間数を指す。
UTLを選んだのは、一つのヨガを習うのではなく、ヨガを見るための複数の視点を学べると思ったからだ。実際、講師陣の背景はそれぞれ違った。
クリパル・ヨガの合津静さん、アイアンガー・ヨガの奥野恵子さんと西岡ゆきさん、アシュタンガの楠原宏子さんとクランティ、シヴァナンダ・ヨガのHIKARUさん、ヨガ哲学の成瀬貴良さん、理学療法士の中村尚人さん、そしてアシュタンガの練習仲間でもある近藤真由美さん。
ところが、後から調べて分かったことがある。
コースで使われたトレーニング・マニュアルは、オーストラリアのバイロンベイにある Yoga Arts のものだった。UTLは公式に、ヨガアーツと提携していることを明記している。創設者のルイーザ・シアー(Louisa Sear)は1987年にバイロンベイでスタジオを開き、1994年から指導者養成を始めた人で、パタビ・ジョイスとB.K.S.アイアンガー、ギータとプラシャント・アイアンガーに学んでいる。
アジャストメントとアーサナの集中コースを教えたクランティは、2004年にロサンゼルスのヨガワークス(Yoga Works)で2か月の指導者養成を修了している。学んだ相手はリサ・ウォルフォード(Lisa Walford)とマティ・エズラティ(Maty Ezraty)。
ヨガワークスは1987年にサンタモニカで、エズラティとチャック・ミラー(Chuck Miller)が設立した。二人ともパタビ・ジョイスに学んだ人で、1992年にアイアンガーの指導者であるウォルフォードと組んで、アシュタンガ由来のヴィンヤサとアイアンガーの精密なアライメントを一つにした養成課程を作っている。
つまり、アシュタンガの外へ出るつもりで選んだ学校で、マニュアルを書いた人も、講師の師匠たちも、みなマイソールを通っていた。しかも二つの学校が、それぞれ独立に、アシュタンガとアイアンガーを一つに組む方向へ行き着いている。
そして、もう一段あった。アシュタンガもアイアンガーも、遡ると同じ一人に行き着く。クリシュナマチャリアである。パタビ・ジョイスもB.K.S.アイアンガーも、この人に学んでいる。
クリシュナマチャリアは、ヨガの根本原理はひとつで、変わるのは方法だと考えていた。方法は、教える相手に合わせて組み立てる。だから、パタビ・ジョイスにはアシュタンガの形で、アイアンガーにはアイアンガーの形で伝えた。流派が分かれたのは、伝えた相手が違ったからであって、教えている中身が違うからではない。
これを知ったのは、2013年5月に受けたレスリー・カミノフのヨガ解剖学コースがきっかけだった。カミノフの師はT.K.V.デシカチャーで、その父がクリシュナマチャリアである。流派にこだわらないつもりで外へ出て、その先で、流派という枠組みそのものが崩れたことになる。
11年後、ロルフィングの側で同じことを何度も書くことになる。系譜は一人のなかで重なっている。系統で選ぶのは役に立たない。その最初の実例が、ここにあったのだと思う。
教える側の課程で何を学んだのか
RYT200は6つの科目で23日間だった。TT1が4日、TT2が4日、TT3が10日、ATICが1日、AKICが2日、AMICが2日。200時間には、これと並行して受けた通常のクラスが含まれている。
TTは Teacher’s Training の略で、1が初級、2が中級、3が上級にあたる。残る3つは集中コースで、ATICが Adjustment Technique Intensive Course(アジャストメント)、AKICが Anatomy and Kinesiology Intensive Course(解剖学・運動学)、AMICが Asana Master Intensive Course(アーサナ)である。
TT1では、マントラ、ヨガの基礎知識、ヨガ・スートラの概説、食事、呼吸法と瞑想、解剖学を扱った。加えて、日々の練習を記録するという課題があった。手元のノートは、2012年7月31日の記録から始まっている。午前6時から8時、太陽礼拝からプライマリー・シリーズ、インターミディエイト・シリーズへ。
その日にどのポーズまで進んだか、身体が固い日と柔らかい日の差、心が動いているときは視線が定まらないこと。
TT2では、ヨーガの起源と流派、ラージャ・ヨーガとハタ・ヨーガ、サーンキヤ哲学の二元論、そしてアーユルヴェーダの概論。哲学の講義にはテキストがなく、口頭で進んだ。ノートには、自分とは何か、死んだ後どうなるのか、といった問いを追いかけた書き込みが残っている。
TT3が、教える側の課程だった。教え方の技術と倫理、カリキュラムの組み方、各アーサナの一般原則、アジャストメント、リストラティブヨガとマタニティヨガ、生徒との関係の築き方、安全な指導法。
ここで印象に残っているのは、倫理の扱い方である。ヤマとニヤマという、ヨガの古典的な戒めを、教える側の行動として一つずつ言い直していく形だった。
非暴力(アヒンサー)は、生徒の限界を尊重すること。自分自身の境界線を持つこと。生徒の個人情報を守ること。決定に責任を持つこと。個人的でネガティブなものを教室に持ち込まないこと。差別をしないこと。
正直(サティア)は、経歴をありのままに示すこと。自分が練習していることを教えること。
不盗(アスティア)は、教師だからといってエゴを乱用しないこと。機械的に教えないこと。生徒がゼロであっても気にしないこと。他の先生と競争しないこと。
そしてブラフマチャリヤは、ほどほどの距離感を持つこと。
ニヤマの側も同じ形だった。タパスは、生徒が探求できるように。スワディヤーヤは、常に関与してコミュニケーションを取り、生徒に呼びかけ、励ますこと。イーシュヴァラ・プラニダーナは、生徒に平等に、謙虚に、奉仕すること。そして、生徒自身が練習に責任を持てるようにすること。
自分の境界を持ちながら、相手の限界を尊重する。生徒自身が責任を持てるようにする。この2つは、後にロルフィングとロルフ・ムーブメントで繰り返し出てくることになる。
アジャストメント
ATICを教えたのはクランティで、教材は本人が書いた『Adjustment Manual for Yoga Instructors — 21 Essential Asanas』(YOGA BOOKS)だった。日英併記の本で、推薦文をリサ・ウォルフォードが寄せている。肩書きは、ヨガワークスのティーチャー・トレーニングのカリキュラム・ディレクター。
内容は、他人の身体に手で触れて姿勢を調える技術である。
クラスのはじめに、今日の練習では直接身体に触れてアジャストをすることがあるかもしれない、と伝えておく。触れられたくない場合は、クラスが始まる前かポーズの前に伝えるよう促す。アジャストをかける前には、生徒の弱さ、強さ、能力、ケガ、病気の有無を知っておく。クラスの間、一人一人の生徒とのあいだに何かしらの接触を持つ。
目を合わせる、触れる、言葉をかける。誰かをアジャストしているときには、クラス全体を視野に入れつつ、その人に集中する。一人で手一杯になって、残りの生徒を放っておいてはいけない。
触れ方についても細かい。圧は軽くかけ始め、徐々に深くしていき、また軽くして戻ってくる。急に圧をかけて相手のバランスを崩したり驚かせたりしない。余裕を持つことで、生徒に信頼してもらう時間が生まれる。バランスが必要なポーズでアジャストをした場合は、生徒が自分でバランスを取り直せたと確認できるまで手を離さない。
口頭でのアジャストの原則もあった。曖昧な指示は間違って捉えられる。空に向かってハートを開きましょう、ではなく、引き伸ばす、胸を広げる、胸を開く、といった言葉を使う。
2012年10月28日のことである。他人の身体に触れることを、最初にまとまった形で習ったのはここだった。
そして、アジャストは下半身から上半身へ行うとよい、と習っている。この順序は、アジャストメントの1日に限らず、指導者養成の課程を通して繰り返し出てきた。タリック先生も立位のポーズで同じことを言っていた。下半身のグラウンディングと土台を築いて、上半身は伸びているという感覚を持つ。
後にロルフィングの10回シリーズを学ぶことになるが、そこでも1回目が呼吸、2回目が足、3回目が体側と、下から順に積み上げていく。土台を作ってから上へ、という順序は、体系が違っても同じ形で出てくるのだと思う。
解剖学と運動学
AKICは、理学療法士の中村尚人さんが担当した。機能解剖学の総論から始まり、四肢、体幹、そして運動学としてアーサナの解析。動作分析、リスクの発生原因、緊急時の対応、予防まで扱われた。
ノートには、水平面での右回旋と左回旋、肩関節と股関節の外旋と内旋、足のアーチと前脛骨筋・長腓骨筋の関係といった書き込みが残っている。
その半年後の2013年5月25日と26日、レスリー・カミノフ(Leslie Kaminoff)のヨガ解剖学コースを受けた。配布された資料は、呼吸を軸にしたものだった。胸腔・腹腔・骨盤腔という3つの空洞と、吸気と呼気での形の変化。横隔膜の筋の走行と中心腱。心膜が中心腱に固く付着していること。呼吸に関わる筋の一覧と、主動が横隔膜で、補助は胸腔と腹腔の形を変えうるすべての筋である、という定義。
足についても扱われた。立っているとき、私たちは地面との関係のために特化して進化した身体構造の上に体重をのせている。足の構造は、対立する力を和解させ中和する自然の能力を示している。
それは、硬い靴と舗装された路面の生活には過剰なほどの設計になっている。ヨガは裸足で行うので、足と下腿の筋の強さと柔軟性を取り戻すことに多くの注意が向けられる。そして支持基底面は、足そのものの面積だけでなく、両足のあいだの空間も含む。
このカミノフのトレーニングが、近代ヨガの歴史を調べるきっかけにもなった。カミノフの師はT.K.V.デシカチャーで、その父がクリシュナマチャリアである。歴史の側は当時ブログに書いたが、解剖と呼吸の側については書いていない。それが記事になるのは、11年後にロルフィングの側からだった。
リストラティブヨガとトラウマ
リストラティブヨガは2013年1月26日と27日にレベル1、5月11日と12日にレベル2を受けた。奥野恵子さんと近藤真由美さん。基本の9つのアーサナとそのヴァリエーション、身体の観察の仕方、生徒一人ひとりに合った道具の使い方、アジャストの仕方。
2013年4月24日には、トラウマを克服するためのヨガを受けている。心療内科医の降矢英成さん、松村憲さん、近藤真由美さんの3人から8時間。ノートには、心的外傷後成長(PTG)、ヴィクトール・フランクル、ケン・ウィルバー、ジュディス・ハーマンの3段階(安全、想起と悲嘆、リコネクション)、そしてトラウマ・センシティブ・ヨガのデイヴィッド・エマーソンの名前が並んでいる。
この1日が、後にソマティック・エクスペリエンシングへつながる線の、最初の地点になった。当時はそう思っていない。2017年3月に1日のワークショップでソマティック・エクスペリエンシングに触れ、2021年から本格的に学び始めるまでに、8年かかっている。
その資格が、ロルフィングの出願要件になった
2014年6月、ヨーロッパ・ロルフィング協会(ERA)に問い合わせた。基礎トレーニングの出願には、手技療法の資格と実務経験が要件として入っていた。
そこで、ヨガ指導者資格の200時間と、ハンズオンの50時間、そして博士号を示して交渉した。教育委員会の判断を経て、要件の読み替えが認められた。2014年8月4日からミュンヘンで Phase I が始まる。
指導者養成の23日間が、ロルフィングの入口を開けたことになる。もっとも、読み替えた部分は実際に見られた。Phase I の解剖学の週の評価は条件付きの同意で、解剖学とハンズオンの経験がもっと必要だと書かれている。
45日は、ロルフィングの中で終わっている
45日の最後の4日間は、その Phase II の期間中に受けている。2014年10月23日から26日、フランクフルトの Inside Yoga で、David Regelin の30時間のティーチャー・トレーニング。ミュンヘンでのトレーニングは10月6日から11月26日なので、その合間に出かけたことになる。
この4日間については、印象に残っていない。ヨガの記録の最後が、ロルフィングの中に入り込んだ形で終わっている。
45日の中に、瞑想が二度ある
瞑想を最初に習ったのは、2011年5月7日、クリパルの「瞑想の基礎」だった。
当時のブログには、それまで何度かヨガのクラスで瞑想を習ったがしっくり来なかったので、あまり期待せずに行った、と書いてある。実際に受けてみて、瞑想が深いものであり、同時に実践しやすいものだと気づいた。呼吸に意識を向ける方法と、ロウソクの火を見つめる方法の2つを行った。対象は何でもよいのだという。
瞑想には2種類あることも習っている。意識的にエネルギーを高めて一点に集中する方法と、いま起きている内面を観察する方法。
ただし、このときは実践が続かなかった。
始まったのは2年半後である。2013年11月10日から14日、サラ・パワーズ(Sarah Powers)の陰ヨガ・ティーチャー・トレーニングで、瞑想の方法を習った。心がリセットされるから実践した方がよい、と言われた。朝晩12分。起床時と就寝前にベッドの上で横になり、アプリで12分のタイマーをかけて、呼吸に意識を向ける。簡単なので続いた。
その翌月の2013年12月、ロルフィングのセッションを受け始めている。半年後には仕事と向き合うようになり、2014年7月に製薬会社を退社して世界一周へ出た。当時のブログには、瞑想を続けてから1か月後に本来やりたいことを自然と考えるようになり、それが長期休暇と世界一周につながった、と書いている。
45日の中の5日間が、瞑想の入口だった。その同じ5日間が、経絡の入口にもなっている。
瞑想はその後、複数の経路から学んでいる。斎藤素子さん、TaoZenの大内雅弘さん、瞑想スペースAOYAMAの村上浩樹先生、そして2017年6月から1年通った表参道の教室。日常内観とジャーナリングにも取り組んだ。その展開については、もう一つのサイトで扱っている。
呼吸法という一本の線
呼吸法は、いくつもの入口から来ている。年の順に並べると、こうなる。
2011年5月、クリパルの「瞑想の基礎」で、瞑想の前段として。2012年から2013年、指導者養成のTT1とTT2で、科目として。2013年5月、カミノフのコースで、解剖学として。そして2015年、斎藤素子さんの連続講座で、プラーナーヤーマとして。
斎藤素子さんとは2015年8月15日に、佐藤博紀さんの紹介で初めて会った。9月に辻堂と藤沢のクラスに飛び入りで参加し、10月22日には自分のセッション・ルームで実践クラスを開いた。連続講座は11月3日、4日、16日、28日の4日間である。
同じ時期に、アシュタンガの側からも来ていた。2015年8月30日と9月13日のタリック先生のワークショップである。呼気と吸気のリズムを均等にすること。最初は音を出すが、練習を続けると隣に聞こえない程度まで静かになること。そして、吐くときにバンダを意識すること。吐き切るときがいちばん感じられる、と教わった。
同じウジャイ呼吸を、二人が別の説明で教えている。タリック先生はリズムとバンダの側から。斎藤素子さんは、喉を締めて気道を狭くすることで余計な力を使わずに長い呼気ができること、そして頸部を締めることで首が固定され、鎖骨や肋骨が動員されて働くべき筋肉が働くようになること、という2点から。
そして2018年1月、ロルフ・ムーブメントのトレーニングで、そのバンダが可動域を狭めている、という指摘を受けることになる。締め付けるという訳語が、そのまま身体の使い方になっていた。7年練習してきた自分の中心的なものへの指摘が、ヨガの外から来た。
ヨガの側から、後から入ってきたもの
45日のうち、当時は主題として意識していなかったものが、後から別の入口で戻ってきている。
経絡は2013年8月の経絡ヨガと、同年11月の陰ヨガで習った。12の経絡に対応するアーサナ、臓器と感情の対応。当時は脇に置いていた。それが5年後、ロルフィングの側から入ってくる。
坐法と呼吸とスペースについては、ヨガとロルフィングの接点として、別の連載で扱っている。
いま
現在は自宅で、自分のペースで練習している。早朝に起床して身の回りを整え、ヨガと瞑想を行ってから一日が始まる。
2019年からは、ロルフィングのセッションの提供に加えて、ヨガのグループレッスンも始めた。受ける側から、教える側へ移ったことになる。
まとめ
ヨガのトレーニングは45日である。ロルフィングの基礎トレーニングが84日、ロルフ・ムーブメントが30日、アドバンストが24日であることを考えると、多い日数ではない。
それでも、この45日から出たものは多かった。
他人の身体に触れることを最初に習ったのは、アジャストメントの1日だった。自分と他人のあいだの境界という考え方を最初に習ったのは、ヨガセラピーの3日間だった。教える側の倫理を最初に習ったのは、指導者養成の課程だった。瞑想を始めたのは陰ヨガの5日間で、その翌月にロルフィングが始まっている。そして指導者資格そのものが、ロルフィングの出願要件になった。
流派の外へ出るつもりで選んだ学校が、上流で同じ源流につながっていたことも、後から分かった。
一方、20年近くの実践の側は、日数では数えられない。同じ順番でポーズを行うことで、身体を一つの定点として、自分の変化を観察できる。昨日できなかったことが今日できる。昨日楽だった動きが今日は重い。その観察の習慣が、いまの仕事の土台にあるのだと思う。
ヨガのトレーニング(45日・2011年5月〜2014年10月)
クリパル(4日・30時間)
| 講座 | 日程 | 講師 | 会場 |
|---|---|---|---|
| ヨガセラピーの基礎 | 2011年5月3日 | 三浦敏郎(当時、三浦徒志郎) | クリパル・ジャパン(下北沢) |
| ヨガセラピーの応用 | 2011年5月4日 | 三浦敏郎(同上) | 同上 |
| ヨガセラピーの実践 | 2011年5月5日 | 三浦敏郎(同上) | 同上 |
| 瞑想の基礎 | 2011年5月7日 | 三浦敏郎(同上) | 同上 |
指導者養成 RYT200(23日・200時間)
2012年7月21日〜2013年1月13日、アンダーザライト ヨガスクール(代々木)。
| 科目 | 日程 | 日数 |
|---|---|---|
| TT1 | 2012年7月21日、22日、8月11日、12日 | 4 |
| TT2 | 2012年9月8日、9日、29日、30日 | 4 |
| TT3 | 2012年10月6日〜12月15日 | 10 |
| ATIC(アジャストメント) | 2012年10月28日 | 1 |
| AKIC(解剖学・運動学) | 2012年11月25日、12月2日 | 2 |
| AMIC(アーサナ) | 2013年1月12日、13日 | 2 |
講師(主なもの):合津静、楠原宏子、HIKARU、ガッソ有香、近藤真由美、奥野恵子、西岡ゆき、成瀬貴良、クランティ、中村尚人
ワークショップ(18日・100時間)
| 講座 | 日程 | 講師 | 会場 |
|---|---|---|---|
| リストラティブヨガ Level 1 | 2013年1月26日、27日 | 奥野恵子、近藤真由美 | アンダーザライト |
| トラウマを克服するためのヨガ | 2013年4月24日 | 降矢英成、松村憲、近藤真由美 | 同上 |
| リストラティブヨガ Level 2 | 2013年5月11日、12日 | 奥野恵子、近藤真由美 | 同上 |
| ヨガ解剖学コース | 2013年5月25日、26日 | Leslie Kaminoff | 同上 |
| 経絡ヨガ インストラクター養成講座 | 2013年8月18日、19日 | 阪崎義勝、金子賀津子 | 東京・板橋 |
| 陰ヨガ ティーチャートレーニング | 2013年11月10日〜14日 | Sarah Powers | 東京・新宿 |
| 30h Yoga Teacher Training | 2014年10月23日〜26日 | David Regelin | Inside Yoga(フランクフルト) |
アシュタンガのワークショップとリトリート(45日には含まない)
| 内容 | 日程 | 場所 |
|---|---|---|
| Nancy Gilgoff ワークショップ | 2010年5月7日、8日 | TOKYOYOGA青山/渋谷 |
| 高野山リトリート | 2010年7月17日〜19日 | 和歌山県・普賢院 |
| David Swenson ワークショップ | 2010年9月17日〜19日 | 大久保スポーツプラザ |
| ボラカイ島リトリート | 2012年10月20日〜25日 | フィリピン |
| 野沢温泉リトリート | 2013年11月22日〜24日 | 長野県 |
| タリック・ターミ ワークショップ(1回目) | 2015年8月30日 | マイソール東京 |
| タリック・ターミ ワークショップ(2回目) | 2015年9月13日 | マイソール東京 |
プラーナーヤーマ(2015年・斎藤素子さん/45日には含まない)
| 内容 | 日程 | 場所 |
|---|---|---|
| プラーナーヤーマ実践クラス(16名) | 2015年10月22日 | セッション・ルームZERO(渋谷) |
| 連続講座 1日目(12名ほど) | 2015年11月3日 | 同上 |
| 連続講座 2日目 | 2015年11月4日 | 同上 |
| 連続講座 3日目 | 2015年11月16日 | 同上 |
| 連続講座 4日目・最終回(13名) | 2015年11月28日 | 同上 |
ヨガについて書いた記事
- ヨガ × ロルフィング Gateway ── なぜヨガを続けても「届かない層」があるのか
- 『ヨガの実践、その先へ』──2つのアプローチで深める「気づき」のプロセス〜Part 1:クリパル・ヨガ・ティーチャー・三浦敏郎さんとの出会い
- 『ヨガの実践、その先へ』──2つのアプローチで深める「気づき」のプロセス〜Part 2:どのようにして「場」を作っていくのか?
- なぜ呼吸法は『身体の状態』を変えるのか──プラーナーヤーマと現代呼吸生理学
- 経絡という見方──筋膜は経絡とつながっている、とはどこまで言えるのか
