この記事は、2015年にトレーニングを終えた直後に書いた総括に加筆し、2026年8月現在の視点から見直したものである。当時の記録をもとにしながら、その後に分かったことや、制度がどう変わったかを書き足している。
はじめに
ロルフィングの認定を受けるには、ヨーロッパ・ロルフィング協会(ERA)の場合、3段階のトレーニングを受ける。私は2014年8月から2015年3月まで、ドイツのミュンヘンでこの3段階を受け、認定ロルファーとなった。その後、2016年12月に Supervision Workshop を受けて、基礎トレーニングを終えている。
ここでは、それぞれの段階で何を学ぶのかを中心にまとめた。各項目の詳しい内容は、当時ひとつずつ書いた記事へのリンクから辿れる。
なお、本文の中心は2014年8月から2016年12月までの当時の制度である。現在は Level 制に再編されており、その変化については最後にまとめた。最新の情報は協会の案内を確認していただきたい。
ロルフィングに出会うまで
2013年12月23日、伊藤彰典さんと偶然出会ったところから、すべてが動き出した(「出会い〜ヨガのポーズを深めるため、様々な方法を試す中で発見した」)。当時はリリーフ・スペースで施術されていて、その場で10回シリーズを申し込んだ。伊藤さんは現在、The Circle で活動されている。
ヨガのポーズを深める方法を探していた時期だった。10回シリーズを受け終えた段階で、ロルファーになることを決めている(「セッションを受け終えて」)。

トレーニングに入るまで
審査書類として必要なものは?
出願には、いくつかの条件を満たしている必要があった。
認定ロルファーから10回シリーズを受けていること。認定 Rolf Movement Practitioner からムーブメント・セッションを5回受けていること。大学の学位。マッサージなど、軟部組織に直接触れる手技の資格か経験。
これに加えて、Admission Paper という課題論文を提出する。5000語から8000語。前半は、なぜロルファーになりたいのか、何がその決断につながったのか、なぜ今なのか、そして自分が受けた10回シリーズで何を経験したか。後半は解剖学と生理学で、関節の自由度と運動面、結合組織の種類と機能、呼吸に関わる筋と構造。この3問が必須で、さらに足、肩、脊柱、大腿、骨盤、筋収縮の6問から3問を選んで答える。
英語で書く。審査は匿名で行われるため、論文に名前は入れない。
ある程度の語学力と、解剖学や生理学の下地が要る。日本人にとってはハードルが高いと思う。
2014年6月に問い合わせて、8月に始まった
仕事に追われて手続きに手をつけられず、協会に最初のメールを出したのが2014年6月14日だった。8月4日に始まるコースについて、まだ申し込めるのか、費用はいくらか、何を準備すればいいのか、授業はすべて英語か、住まいの手配で助けはあるか。そういったことをまとめて聞いている。
翌日、コース・コーディネーターの Martina Berger さんから返事が来た。まだ申し込めます、月曜に出願書類と Admission Paper の課題を送ります、と。
10回シリーズは既に受けていた。問題は手技のほうで、私にはマッサージや指圧の資格がない。そう伝えると、具体的な基準が返ってきた。マッサージや指圧の講座なら、最低3日間の集中コースを受け、その後30人以上に対して50時間ほど実践すること。触れることに自分が慣れ、相手も触れられて安心できるようになり、解剖学の知識が手に入っている状態になるため、という説明だった。
そこで、自分の経験を具体的に書いて送った。全米ヨガアライアンスの200時間の指導者資格を持っていること。30人以上の生徒に対して、合計50時間を超えるハンズオンの経験があること。ヨガの指導では、後屈、前屈、ねじりといったポーズごとに、怪我を防ぎ適切なアライメントを取るために、解剖学の知識に基づいて手で誘導すること。加えて、分子細胞生物学の博士号を持ち、基礎医学研究と製薬会社での経験を合わせて解剖学と生理学の素地があること。
CVを送ってほしい、教育委員会にかけて判断する、という返事が来た。数日後、手技の経験は Phase I に出願するのに十分である、という回答が届く。ただし条件が付いた。Phase I が始まるまでに、下着だけの状態のクライアントに、肌に直接触れる練習をしておくこと。そして、Phase I の期間中に全教師が学生を評価し、解剖学や触れる技術が不十分と判断されれば、そのまま Phase II へ進む許可は出ない、と。
書類の締め切りは6月23日の月曜に設定された。当日、書類と論文を送ったが、この時点で揃っていないものがあった。大学の成績証明書は25日にならないと出ない。10回シリーズを行ってくれたロルファーの署名は翌日になる。ムーブメント・セッションの相手はまだ見つかっていない。
それでも受け付けてもらえた。ムーブメント・セッションについては、Phase I の前にミュンヘンに着けば現地で受けられる、として2人を紹介された。ミュンヘンで働いている日本人ロルファーの中村かおりさんと、トレーニングセンターの近くにいる Dorit Schatz さん。ドイツ国内のムーブメント施術者の一覧、宿泊先のリスト、会場までの地図も一緒に送られてきた。
そして、手技については、せっかくの機会なのでタイ古式マッサージの資格を取ることにした。6月末から7月にかけて Level 1 と Level 2 を受けている(「ITMタイ古式マッサージコース Level 1を終えて〜初めてボディワークのスキルを身につける」「ITMタイ古式マッサージコース Level 2を終えて〜いいものを提供すること」)。要件を満たすためだったが、初めて身につけたボディワークの技術になった。
受諾の連絡が届いたのは6月末。問い合わせから2か月足らずでミュンヘンにいたことになる(「Trainingへ向けての準備」)。
締め切りを過ぎていても、要件を完全には満たしていなくても、まず問い合わせてみる価値はあると思う。要件は形式で決まっているように見えて、実際には何ができるかで判断されていた(「なぜミュンヘンで学ぶことにしたのか:資格取得までの手続きと費用」)。

トレーニングに入った後
Phase I では何を学ぶのか
Phase I は3週間、15日間。Foundations という名前がついている。2014年8月4日から22日まで、ミュンヘンで受けた。
構成は3つの科目に分かれる。Movement、Anatomy、Touch。それぞれ1週間ずつで、教師も科目ごとに替わる。私の回は、8月4日から8日が Movement で Rita Geirola 先生、11日から15日が Anatomy で Konrad Obermeier 先生、18日から22日が Touch で Giovanni Felicioni 先生だった。
各週にアシスタントがつく。Movement はスペイン人の Fuensanta Muñoz de la Cruz 先生。医師の資格を持つアドバンスト・ロルファーで、2年後の Supervision Workshop でも再会することになる。Anatomy は Caroline May 先生。Touch は Patricia von Weichs 先生で、この方は Phase II でも同じ Giovanni 先生のアシスタントを務めた。音の振動を使って身体を調える方法を教わっている。
この3つが、ロルフィングを支える柱である。身体をどう動かすか、身体がどうできているか、どう触れるか。手技そのものはまだ習わない。10回シリーズにも入らない。その前段にあたる。
初日は自己紹介が中心だった。仕事を辞めて国外に出た直後で、手放したぶんだけ新しいものが入ってくる状態でトレーニングに入っている(「Training Phase I 初日「手放すこと」」)。参加者は16人。国籍は10か国に分かれていた。フランス3人、ドイツ3人、スイス3人、アメリカ、ベルギー、スウェーデン、デンマーク、ウクライナ、ポーランド、日本が各1人。英語が母語の人のほうが少ない。
このうち2人は、全日程を通す学生ではなかった。1人は Movement の週だけ、もう1人は Anatomy の週を除く2週である。教室にいる人数が16人から14人に変わるのは、そのためだった。当時、科目ごとに受けられる形式が別に用意されていて、Phase I にもその出入りがあったことになる。全部を通す人と、必要な週だけ受ける人が同じ教室にいた。
Movement の週では、自分の身体がどう動いているかを観察する。Anatomy の週では、解剖学を本ではなく身体で学ぶ。触って確かめ、動かして確かめる。Touch の週では、どう触れるかを扱う。圧の入れ方、どの層に届いているか、相手が何を感じているか。
3週間の記録は3本に分けて書いた(「1週目を終えて」「2週目を終えて」「3週目と最終評価」)。
どのように評価されるのか
Phase I には関門がある。最終日に Admissions Interview があり、ここで Phase II へ進む許可が出る。出願時に受けた「解剖学や触れる技術が不十分なら Phase II へ直接進む許可は出ない」という条件は、この面談を指していた。
ただし、評価は最終日にまとめて行われるのではない。週ごとに、その週の教師が評価用紙を書く。5段階で項目ごとに採点し、最後に「この学生が Phase II へ進むことに同意する」かどうかを記入する。3週間で3回、独立した評価が積み上がる形である。
項目は週によって違う。Movement では、自分の過程との関わり方、他の学生との関わり方、教師との関わり方、助けを求められるか。身体を使う質、触れる質、身体観察、対話を支えられるか。Anatomy では、用語の理解、情報量を消化できるか、骨のランドマークを見つけられるか、触診の確かさ。Touch では、聴くような触れ方から働きかける触れ方まで幅を持てるか、両手の役割を変えられるか、筋膜を三次元の網として扱えるか。
Anatomy の週には筆記のテストもあった。2部構成で、私は前半が51点中25点、後半が64点中42点だった。出願のときに、博士号があるので解剖学と生理学の素地がある、と書いて通してもらっている。教室で問われる解剖学は、それとは別のものだった。
私は3人のうち2人から無条件の同意を、Anatomy の Konrad 先生からは条件付きの同意を受けた。解剖学とハンズオンの経験がもっと必要であること、本人もそれをよく分かっていること、会話のなかで扱った文化的な背景が表現の幅を狭めていること。アトラスの図版を眺めるのではなく解剖学の教科書で学ぶように、と書かれていた。
要件は経験で読み替えてもらえた。ただし、読み替えた部分は実際に見られていた。そういうことだと思う。
三人が同じところを指していた
評価用紙のコメントを並べると、三者三様の言葉で同じ一点を指している。
Rita 先生は、探究の対象に対して私が体験しているのか遂行しているのか見分けにくいことがあった、と書いている。自分が過程のなかにいるための時間を十分に取っていない、とも。もっと前に出てきてほしい、教師から見えるようにしてほしい、必要なときは助けを求めてほしい、すぐに分からないことがあれば感じて探る時間を取ってほしい。
Giovanni 先生は、自分自身の体験を信頼し、自分に留まり続けること、と書いた。とくに、ワークを受けたあとや、相手とのワークを終えるときに。
Konrad 先生の文化的な背景という指摘も、方向としては同じところを向いている。
このとき言われたことは、その後も繰り返し出てくる。Phase III の中間面談で指摘されたのも、技術ではなく、施術者が自分をどう扱っているかだった。11年前の最初の3週間に、すでに同じことが言われていたことになる。
配布された資料のなかに、後から効いてきたものがある。身体図式と身体像を扱った論文と、姿勢の制御をめぐる研究の年表だった。当時は読まなかったが、この年表に書かれていたことが、その後の課程で繰り返し出てくることになる。
2014年8月22日に最終面談を終え、無事に合格。Phase II が始まる10月6日まで時間があったので、アジアとトルコを中心に旅をした。


Phase II では何を学ぶのか
Phase II は8週間、33日間。Embodiment という名前がついている。2014年10月6日から11月26日まで(「トレーニングの再スタート」)。教師はイギリス在住のイタリア人、Giovanni Felicioni 先生。アシスタントは Patricia von Weichs 先生で、Phase I の Touch から引き続きだった。
Giovanni 先生については、フランクフルト在住のロルファー、鎌田孝美さんのコラムが詳しい(「ヨーロッパロルフィング Giovanni Felicioniという人」)。
ここで10回シリーズを学ぶ。ロルフィングは10回で1つのまとまりになっていて、各回に扱う場所と目的が決まっている。その全体がどう組まれているのか、各回がどう進むのかを、生徒同士で施術し合いながら身につけていく。

自分が受け、自分が行う。8週間で10回シリーズを一巡させるので、全員が10回受け、10回行うことになる。相手の身体で起きたことも、自分の身体で起きたことも、両方が材料になる。Embodiment という名前は、そこから来ている(「身体感覚〜Embodimentとは何か?」)。
参加者は8人、全員男性。教師1名にアシスタント1名という体制で進む。
そして、教科書がない。手順書も配られない。教師が説明し、実演し、生徒がやってみて、そこに教師が入る。徒弟制に近い形で進む(「授業の進み方(1)」「授業の進め方(2)」)。滞在環境や日々の過ごし方については別に書いた(「トレーニング風景」)。
米国のボルダーとドイツのミュンヘンで、トレーニングにどんな違いがあるのかも扱っている(「土台と感覚」)。
10回シリーズの構成
10回は3つのまとまりに分かれる。
最初の1回から3回が表層(Sleeve)。身体の外側を扱う(「表層筋のセッション」)。1回目は呼吸(「セッション1:呼吸を調える」)、2回目は足(「セッション2:足を調える」)、3回目は体側面(「セッション3:体側面を調える」)。
4回から7回が深層(Core)。身体の内側へ入っていく(「深層(コア)セッション」)。4回目は骨盤底(「セッション4:骨盤底を調える」)、5回目は大腰筋(「セッション5:大腰筋を調える」)、6回目は仙骨(「セッション6:仙骨を調える」)、7回目は頭と顔(「セッション7:頭・顔」)。
8回から10回が統合(Integration)。それまでに扱ったものをつなげる(「統合セッション」)。8回目と9回目で上半身と下半身をつなぎ(「セッション8:肩帯・骨盤帯」「セッション9:連動性」)、10回目でまとめる(「セッション10:統合」)。
奇数回が上半身、偶数回が下半身で交互に進む。この並びには理由があって、身体に二つの方向を持たせるという原理から来ている。
一巡すると、身体には古いパターンと新しいパターンが同居する。それをどう扱うかも主題になった(「古いパターンと新しいパターン」)。
施術のための身体の見方
10回シリーズを進めるには、身体をどう見るかを身につける必要がある。ここが Phase II の中心になる。
身体観察(Body Reading)は、目の前の人の身体に何が起きているかを読むこと。ただし、見えるようになるまでに時間がかかる。何を見ればいいのかが分からないうちは、情報が多すぎて圧倒される(「目で見ること、身体で感じること」)。
2方向性(Palintonicity)は、ロルフィングの中心にある考え方である。身体は、下へ向かう方向と上へ向かう方向の両方を持つことで調う。片方だけでは足りない(「基本的な考え方〜2方向性(palintonicity)」)。
Tonic Function は、姿勢を保っているのは力を入れて頑張る筋肉ではなく、持続的に働く別の筋肉である、という考え方。どちらが働いているかで身体の使い方が変わる。Hubert Godard という、ヨーロッパで長く教えてきた人物が体系化したもので、ERA の独自性を最もよく感じさせる考え方だと思う(「疲れる筋肉と、疲れない筋肉〜姿勢を支えるTonic Function」「2方向性が身体を調える〜Tonic Functionと歩行・座位」)。
姿勢を支える情報は、視覚、内耳感覚、筋感覚の3つから来る(「姿勢の3要素〜視覚、内耳感覚、筋感覚」)。
Articulation は、身体の内側に空間があることに意識を向けると余計な力が抜ける、という考え方(「Articulationという言葉〜身体に空間を作るということ」)。
土台があって初めて感覚が働く、という順序についても触れている(「土台と感覚」)。
身体と心
身体の状態は、心の状態と切り離せない。この方面についても Phase II で扱った。
トラウマと身体(「トラウマは出来事ではなく身体に残る〜深層のセッションで何が起きるのか」)。Peter Levine の Somatic Experiencing が背景にある。
ポリヴェーガル理論(「顔の表情が安心を作る〜ポリヴェーガル理論と2つの迷走神経」「凍りつきと、恐れのない静止〜Neuroceptionと社会的な絆」)。Stephen Porges による自律神経の理論で、安心しているかどうかが身体の緊張を左右する。
身体地図(「身体地図と幻肢」)。人は自分の身体の地図を持っていて、意識して思い描く地図(Body Image)と、無意識のうちに使っている地図(Body Schema)がある。
絵画の歴史から身体を見る
Giovanni 先生ならではの授業があった。ルネサンスから印象派までの画家たちが、人間の身体をどう見ていたのか。Hubert Godard の考え方に触れながら説明していく(「絵画史と身体(1)〜西洋絵画史からみる身体の見方」「絵画史と身体(2)〜絵画史から顔と頭をどのようにみるのか?」)。
アートに詳しい Giovanni 先生ならではの内容で、大きな気づきになった。身体の見方には歴史がある、ということが分かる授業だった。
言葉と多様性
参加者の国籍がばらばらなので、同じ言葉が人によって違う意味を持つ。そのことを扱った回もある(「言葉の広がりと人間の多様性」)。
初心者の心についても触れた(「初心者の心〜鈴木俊隆の言葉より」)。
面談と、外から見た自分
Phase II には中間面談と最終面談がある。何を伸ばすべきか、どこが強みなのかを、教師から直接聞く(「中間面談〜どのようにフィードバックされたのか?」「最終面談」)。
生徒の進み具合と、どこを伸ばしていけばよいかを知るうえで役立った。自分では分からなかったことを外から言われる。これが面談の値打ちだと思う。
日々のフィードバックも同じで、その場で返ってくる(「フィードバック:トレーニングではどのようにして評価を受けるのか」)。
最終週
最終週に、ロルファー1人に対して2人のクライアントを呼んでセッションを行う。生徒同士ではない、初めての相手になる(「クライアント・セッション」)。
この経験が、Phase III でクライアントを担当する際の土台になった。
Phase II を終えると、修了式がある(「クロージングと修了式」)。
Phase III へ進むまでの宿題
Phase II と Phase III のあいだに、2つの課題がある。
1つは Mid term paper。Phase II で自分が受け、自分が行った10回シリーズについてのエッセイで、Phase II の教師が評価する。
2015年2月2日に Phase III が始まるまで時間があったので、南米と北米を旅した。課題はその途中で書いている。標高の高い場所で高山病になり、体調を崩しながら宿題を仕上げることになった(「Mid term paperと高山病〜南米の旅の途中で宿題を終える」)。受理の連絡はその後に届いた(「開始前とMidterm paperの受理」)。
このとき南米でひいた風邪が、なかなか治らなかった。1か月半かかって、ようやく Phase III の2週目に快方へ向かっている。体調が万全でないままトレーニングに入ったことになるが、結果としてはそれが良かった。完璧にやろうとすることを手放せたからである。
もう1つの課題は、上級ロルファーからメンタリング・セッションを2回受けること。これについては後でまとめて書く。
Phase III では何を学ぶのか
Phase III は8週間、30日間。Clinical Application of Rolfing Theory という名前がついている。2015年2月2日から3月25日まで(「イントロと知識の整理」)。教師は理学療法士の Jörg Ahrend-Löns 先生、アシスタントは Andrea Clusen 先生。いずれもドイツ人である。

参加者は10人。Phase II からの8人に、シンガポールとメキシコから2人が加わった。
ここでは、実際のクライアントにセッションを提供する。手技は Phase II で身につけた前提になっている。
各生徒が2人のクライアントを担当し、それぞれに10回シリーズを行う。教師2人も1人ずつ担当する。だから1回のセッション日には、教師の2セッション、自分の担当する2セッション、他の生徒の2セッションの見学、合わせて6セッションが並ぶ。10回分で、のべ60セッションを見ることになる。自分の手が動くのは20回で、残る40回は観察である。
この観察の量が Phase III の性格を決めている。人の身体は一人ひとり違う。同じ回のセッションでも、相手が変われば進み方が変わる。それを何度も見る。
正直なところ、Phase III には Phase II ほど新しいことを学ぶという印象がなかった。学ぶ場所が変わったのだと思う。知識を増やす段階から、うまくいかないときにどうするかを身につける段階へ移っている。
何をどう絞り込むか
Phase II で学んだ技術を、実際のクライアントに向けるとき、最初に困るのが情報の多さである。何を見て、何を選ぶのか。
各回で学んだ知識に、どう優先順位をつけるか。そのフレームワークが示された(「Body Readingと情報の寡多」)。
そして Less is More。どこを施術しないかを意識すること。直感の重要性についても、Jörg 先生から学んでいる(「手技を超えて」)。
手を加えれば加えるほど良くなるわけではない。相手の身体が自分で気づくための時間を残す。
同じところに、Hold the space がある。相手が自分の身体と向き合える環境を作り、判断も批判もせずにそこにいること(「スペースと心の部屋」「Hold the spaceを知る大切さ」)。
うまくいかないときにどうするか
各回のセッションのあとに、教師から指摘を受ける。うまくいったかどうかではなく、何が起きていたか、次に何を見るか。
そして、次の3つが繰り返し扱われた。
不安になったときにどうするか。何をしていいか分からなくなり、クライアントとのつながりが切れたときにどうするか(「見失うこと」)。不測の事態に陥ったときにどう対処するか(「身体地図と幻肢」)。
不安と安心そのものについても扱っている(「不安と安心」)。自律神経系への影響という角度からも触れた(「自律神経系への影響」)。
見ることと、知覚すること
Phase III の期間中に配布された論文で、見ることと知覚することの違いを扱ったものがあった。Ida Rolf の教えを Jeff Maitland が理論化した Saturation Method である。すごく参考になった。
概念を持っていないと、目の前にあっても見えない。逆に、概念を持つと見えるようになる(「Seeingと知覚すること(1)」)。そして、部分をいくら足しても全体にはならない(「Seeingと知覚すること(2)」)。
手順を信じて進むことについても学んだ(「手順を信頼すること」)。
5原則
ロルフィングには5つの原則がある。クライアントに何が必要かを、この枠組みから考える(「5原則」)。
サポートが要るのか、適応性が要るのか。そうした判断の道具になる。
身体の意識をどう扱うかについても触れた(「身体の意識について」)。代替療法における多様性についても(「代替療法と多様性」)。
ムーブメントとモダリティ
セッションの後半になると、施術する側が動かすのではなく、クライアント自身に動いてもらう場面が増える(「ムーブメントとセッション」)。
身体の使い方を変えると、それだけで力が抜けることがある。呼吸のタイミングを変える、リズムを変える、イメージを使う(「モダリティ(1)〜モダリティの意味とロルフィングでどのように生かすか?」「モダリティ(2)〜リズムを変えると」)。
症例プレゼンテーション
セッション3が終わった段階と、セッション7が終わった段階で、一人5分の症例プレゼンテーションをクラスの前で行う(「Case Presentation(1)〜セッション3を終えて」「Case Presentation(2)〜セッション7を終えて」)。
他の生徒がどう施術しているのか、何を考えているのかを聞く。自分のやり方の幅が広がった。
言葉の選び方
Phase III に入ると、クライアントにどう言葉をかけるかについてフィードバックを受ける機会が増える。
相手がどのレベルで話しているかを見て、そこに向けて言葉を選ぶ。身体のイメージに触れるとき、相手が否定されたと感じることがあるからだ(「ボディイメージと言葉の語りかけについて」)。
教え方の違い
Phase II と Phase III では、教師の教え方も伝え方も違った(「個性と教育」)。授業の進め方そのものについても書いている(「授業の進め方」)。
違う先生をカリキュラムに入れることで、多様な考え方を身につけることができた。これは本当に良かったと思う。
施術者自身のこと
Phase III で最も繰り返されたのは、施術者が自分の身体をどう扱っているかが相手に伝わる、ということだった(「今までどのように自分自身の身体と向き合ってきたのかがセッションに出る」)。
技術を磨くより先に、自分がニュートラルな状態になれるかどうか。中間面談でもそこを指摘された(「中間面談」)。
認定まで
Phase III のターニング・ポイントは2週目にあったと思う。南米でひいた風邪がようやく治り始めた頃で、体調が完全でなかったぶん、無理をせず、今自分が感じることを大事にする方向へ切り替えられた。身体観察は短時間で切り上げ、自分の手の感覚を信じて進むようになった。
最終セッションを終え(「クライアント・セッションを終えて」)、最終面談を経て、無事に認定ロルファーとなった(「最終面談とロルファーとしての認定」)。2015年3月25日のことである。
質疑応答では、子供に施術する際の注意点や、音楽家やスポーツをする人への応用についても聞いた(「ロルフィングのセッションは子供にしても大丈夫?」)。
ヨガとの関係についても、この時期に書いている(「ヨガとの関係〜ロルフィングはヨガのどこ部分を取り入れているのか?」)。アレクサンダー・テクニックとの共通点についても(「ロルフィングとアレクサンダー・テクニックとの関係(1)──「力を抜く」ことを身体で学ぶ二つの方法」「アレクサンダー・テクニックとの関係(2)──異なるアプローチだからこそ、補い合える二つの方法を採用」)。
メンタリング・セッションとは何か
トレーニングには、教室の外で受ける課題がある。上級ロルファー(Advanced Rolfer)のオフィスを訪ね、個人的に教わるメンタリング・セッションである。
Phase II と Phase III のあいだに2回、Phase III と Supervision Workshop のあいだに3回。認定までに合計5回になる。
内容は決まっていない。セッションを受けることもあれば、質問に答えてもらうこともある。相手が長年やってきたことを、その人の場所で直接見る。それが目的である。
Phase II と Phase III のあいだは、世界一周の旅の途中だった。ロンドンで Keith Graham 先生と Alan Richardson 先生の2人に受けた(「英国での体験(1)」「英国での体験(2)」)。
Phase III のあとの3回は、東京でロルファーとして活動しながら受けた。2016年8月末から9月にかけて、ロンドンで再び Keith Graham 先生を(「ロンドンでの体験(3)Keith Graham(2)」)、パリで Hubert Godard 先生を訪ねた(「パリでの体験:基礎を大事にすること」)。そして12月、ライプツィヒで Kathrin Grobelnik 先生に受けている(「ドイツでの体験」)。
Tonic Function を教室で教わったあと、それを体系化した本人から直接セッションを受けたことになる。制度がそういう機会を作っていた。
一人ひとり、やり方がまったく違う。同じロルフィングでも、これほど違うのかというのが率直な感想だった。それを短期間に続けて受けられるのが、この制度の効いているところだと思う。

Supervision Workshop とは何か
認定を受けたあと、そのまま終わらないのがヨーロッパのトレーニングの特徴だった。1年ほど実践してから、6日間の Supervision Workshop を受ける。当時は必須である(「今後のERA Mentoring SessionとSupervision WS」)。
私は2016年12月13日から18日まで、ミュンヘンで受けた。教師はイタリア人の Pierpaola Volpones 先生、アシスタントはスペイン人の Fuensanta Muñoz de la Cruz 先生。Fuensanta 先生とは、2年前の Phase I の Movement 以来の再会だった。参加者は13人で、男性3人、女性10人。
Paola 先生については、鎌田孝美さんのコラムに紹介がある(「ヨーロッパ・ロルフィング協会」)。個性の強いロルファーのなかでもバランスの取れた人で、ロルフィングの定義に照らしながら、先達がまとめた技術を分かりやすく整理してくれる、と。基礎を見直したい自分には、ちょうどよい先生だった。
何をする場か
一言でいえば、基礎の点検である。
認定を受けて1年、自分なりにセッションを重ねている。そこで身についた癖もある。それを基礎から見直す(「初日と復習」)。
10回シリーズがどう組み立てられているか。各セッションがどうつながっているか。1回目と2回目の身体観察をどうするか。そういったことを、もう一度やり直す。
Phase IV では、1名のクライアントを2回施術することが求められた(「3日目まで:Paolaの話」)。
同時に扱われるのが、施術者の身体の使い方だった。親指や手全体で触れることが多いが、どのタイミングで肘、腕、手の甲、手のひらを使うのか。どうすれば疲れず、自分の身体を痛めないか(「最終日」)。
実践してみて初めて出てくる問いに、答えが返ってくる場でもある。10回シリーズをしても手応えがなかったクライアントにどう対応するか。そうした質問から、その日のワークが始まった。
教えることについて
Paola 先生が説明したことのなかに、Teach と Educate の違いがあった。Teach は手順を一つずつ伝えて覚えさせること。Educate は、生徒の良さを引き出す(Edu は引き出すという意味)ために、どうしたらいいかを生徒自身に考えさせること。Paola 先生の教え方は、どちらかというと後者だった。
このワークショップにも教科書はなかった。Paola 先生が説明しているあいだに Fuensanta 先生が大きな画用紙に書き取り、教室の壁に一枚ずつ貼り出していく。そういう形で6日間が進んだ。
ここで基礎トレーニングが終わる。
どういう環境で学ぶのか
ミュンヘンで受けて良かったと思うことの一つに、言葉のことがある。
参加者の国籍を見ると、母語が英語だったのは2か国(アメリカ、シンガポール)だけで、残る9か国はそうではない。ベルギー、フランス、スイス、ドイツ、ウクライナ、メキシコ、日本、スウェーデン、デンマーク。教師も、母語が英語なのは1人(英国から来た、イタリア出身の先生)で、あとはイタリア、スペイン、ドイツである。
つまり、教室にいるほとんどの人にとって、英語は第二言語である。
そのぶん、話す速度がゆっくりで丁寧になる。加えて、文化の違う人が話せるように、クラスのなかに意識してスペースが設けられる。Phase III の Jörg 先生は、日本人の生徒を教えるのは経験が少ないので何かあれば必ず言ってほしい、と最初に伝えてくれた。
印象に残っているのは、Phase I をコロラドで受け、Phase II からミュンヘンに移ってきたスイス人の同僚の言葉である。コロラドでは英語を話す速度が非常に速く、質問する間も与えられなかったという。スイスの人はほとんど英語を不自由なく使う。その人がそう言うのだから、これは言語の問題ではないのだと思う。
英語がゆっくりだといっても、内容を100パーセント理解するのは相当大変だった。学ぶ密度が濃く、1日が終わると生徒のほとんどがぐったりしていた。もし話す速度が速く、聞きたいことが聞けなかったら、理解は半分になっていたと思う(「英語が母語でない仲間と一緒に学ぶことで気づくこと」)。
本場のコロラドで学ぶという選択も大事だが、あまり知られていないミュンヘンという選択もある。
どういう先生に教わるのか
誰に教わるかは大きい。ただし、基礎トレーニングの教師は日程で決まっている。誰が担当するかは事前に公表されるので、日程を選ぶことが教師を選ぶことになる。自分で相手を選べるのは、メンタリング・セッションと継続教育のほうである。
ERA の背骨にあるもの
ERA で教える人の多くが、Hubert Godard の影響を受けている。
Godard はフランス人で、化学の学位を持ちながらダンスに向かい、踊り手として自分の動きを変える経験から、人間の運動性そのものへ関心を移した人である。パリ大学のダンス・動作分析学科を率いている。ロルフィングを受けたことが転機になり、重力への組織化という視点が、それまで学んだ知識と技術を一つにまとめてくれたと述べている。
そこから体系化されたのが Tonic Function である。姿勢を保つ筋肉の働き、動きが起こる前の準備段階、知覚が協調の習慣をどう変えるか。これがヨーロッパのロルフィングの背骨になっている(Tonic Function Model: The Human Gravity Response System)。
フェルデンクライスメソッドの影響
ここが大事なところだと思う。
Rolf Movement という考え方そのものが、Ida Rolf と Moshe Feldenkrais の交流から生まれている。Godard の Tonic Function も、当時の動きの研究者たちとのやり取りの上にある。そして Phase I で Movement を教える Rita Geirola 先生は、1992年にフェルデンクライスの資格を取り、その視点が自分の教え方に深く影響していると述べている。
三代にわたって同じ線が通っている。ボディワークの三大巨匠と呼ばれる Ida Rolf、Frederick Matthias Alexander, Moshe Feldenkrais のうち、少なくとも一人分が、ロルフィングの内側に織り込まれている。
動きの側から来た先生
ロルフィングとは別に Rolf Movement という資格があり、これを先に取った人、あるいは並行して取った人が教える側に少なくない。
Rita Geirola 先生は、体育学とメジエール法が前歴で、フェルデンクライスとピラティスの指導者でもある。複数の言語を持って、目の前の人に合うものを選ぶやり方の人である。私が2019年に Rolf Movement の認定を受けたときの教師でもあり、入口と出口の両方にいたことになる。
Supervision Workshop の Pierpaola Volpones 先生は、体育教師と水泳のインストラクターから来ている。認定も Rolf Movement が先で、ロルファーが後。
ヨガやダンス、スポーツの経験がある人には、この系譜が入りやすい。
医療と解剖学の側から来た先生
Phase III の Jörg Ahrend-Löns 先生は理学療法士。Phase I で Movement を補助していた Fuensanta Muñoz de la Cruz 先生は医師である。
Phase I で Anatomy を教える Konrad Obermeier 先生は、ERA の主任講師で、私が教わってから12年、同じ科目を担当し続けている。この方の解剖学は教科書的なものではない。内臓マニピュレーションを創始者の Jean-Pierre Barral から直接学び、Erich Blechschmidt の胎生学を教えている。身体を、成人の構造としてではなく、どう作られてきたかという発生の側から見る。Blechschmidt の未出版の著作を世に出す働きもしている。
前歴も変わっていて、大学ではコミュニケーションと民俗学を学び、10年かけてヨガを学んでインドのケララで指導者の修業をしている。
解剖学を補強したい人に合うが、Konrad 先生の場合は補強というより、身体の見方そのものを組み替える種類のものだった。
神経系とトラウマに強い先生
Fuensanta 先生は Somatic Experiencing の実践者で、スペインでの公式トレーニングを組織してきた。Peter Levine の講座に初めて出たのは1992年である。Rita Geirola 先生も Levine に学んでいる。
Phase II で扱われるポリヴェーガル理論やトラウマの話は、こうした背景から来ている。
手技の別系統を持つ先生
Phase III のアシスタントだった Andrea Clusen 先生は、ソースポイントセラピーとエネルギーワークに詳しい。ロルフィングが構造に働きかけるのに対して、こちらは身体を取り巻く場のほうから入る。傷跡へのアプローチにも通じている。
知覚と芸術の側から入る先生
Phase II の Giovanni Felicioni 先生は、舞台俳優だった人である。身体の見方には歴史があるという角度から教える。絵画史の授業はこの方ならではのものだった。
教え方の違い
Giovanni 先生は教室の雰囲気を自由にする。デモ・セッション中に生徒が飲食していても、真正面から覗き込んでも構わない。Jörg 先生は逆で、PC の音がした瞬間に厳しく止め、教師が主導して環境を作る。
Rita Geirola 先生は、生徒の背景や関心、その場の力学を見て流れを作ると述べている。狙いは自信をつけさせること、好奇心を引き出すこと。Pierpaola Volpones 先生は Teach と Educate を区別し、自分は後者だと言っていた。手順を覚えさせるのではなく、どうしたらいいかを生徒に考えさせる。
どちらが良いという話ではない。違う先生がカリキュラムに入っていることで、多様な考え方を身につけられた(「個性と教育」「Hold the spaceを知る大切さ」)。
日本から行く人にとって
日本人を教えた経験のある先生が複数いる。Konrad Obermeier 先生は日本で何度も教えている。Giovanni Felicioni 先生は日本への留学経験がある。どちらも日本人がどこで詰まるかを知っている。
Jörg Ahrend-Löns 先生は、日本人を教えるのは経験が少ないので何かあれば必ず言ってほしい、と最初に自分から伝えてくれた。経験がある人だけが頼りになるわけではない。
系譜は、一人のなかで重なっている
ロルフィングにはいくつかの流れがある。Ida Rolf が最初に教えた形を受け継いだ側、理論を組み立てた側、ヨーロッパで発展した機能的な系譜、神経系とトラウマを扱う系統。外から見ると、別々の流派のように見える。
ただ、教える人の経歴を見ると、一人のなかに複数が入っている。米国で学び、ヨーロッパでアドバンストを受け、その後に別系統の技法を身につけている、という経歴が普通にある。
横のつながりもある。この記事に出てきた先生のうち、内臓マニピュレーションを同じ人物から学んでいる人が2人、Peter Levine に学んでいる人が2人いる。
だから、どの系統の先生に習うか、という選び方はあまり役に立たない。学ぶ側からすれば、それは一つの教室でしかない。
教科書がないから、先生が内容になる
どの段階にも教科書がなかったことは、すでに書いたとおりである。渡されるのは、教える人自身のやり方である。だから、誰に教わるかが内容そのものになる。
基礎トレーニングでは教師を選べないが、そのぶん複数の人に教わる。むしろそれが設計なのだと思う。そして認定後、メンタリングと継続教育で、自分に必要な人を選んでいくことになる。
現在の制度はどうなっているか
以上は2014年から2016年の話である。制度は、その後まとまった形で変わった。
Level 制への再編
Phase I、II、III という3段階は、Level 1、2、3 に組み替えられた。
Level 1 は Myofascial Foundation。3日間の講座を9つ受ける構成で、Movement、Anatomy、Touch という3つの柱は当時と同じである。修了すると Myofascial Foundation の証書が出て、Level 2 へ進める。
Level 2 は10回シリーズを学ぶ段階。生徒同士で実践し、課程の終わりに初めて外部のクライアントにセッションを行う。
Level 3 で認定に至る。10か月から12か月かけて、教員の監督のもとで外部のクライアントに10回シリーズ全体を行う。
入口が開いた
最も大きな変化はここだと思う。
2014年の Phase I には、書類審査があった。10回シリーズの受講、ムーブメント・セッション5回、大学の学位、手技の資格か経験、そして課題論文。通った人だけが教室に入れた。
現在の Level 1 に、そうした要件はない。年齢が18歳以上であること以外に条件はなく、医学的な背景も不要とされている。最初の3講座(Movement 1、Anatomy 1、Touch 1)だけを試しに受けることもできる。さらに手前に、2日間の入門講座と無料のオンライン講座が用意されている。
つまり、関門が前から後ろへ移った。かつては入る前に審査があり、いまは Level 1 を修了したことが次へ進む資格になる。
年齢制限も動いた。当時は25歳以上だったが、現在は18歳以上である。
Supervision Workshop は必須ではなくなった
私が受けた6日間の Supervision Workshop は、いま継続教育の講座の一つになっている。Deepening the 10 Sessions という名前で、括弧のなかに former Supervision と添えられている。日数も4日に減った。
ただし、なくなったわけではない。監督のもとで実践する段階が、認定の後から前へ移った。現在の Level 3 に、教員の監督下で外部クライアントに10回シリーズを行う課程が含まれている。
私が Supervision Workshop で受けた基礎の点検は、認定を受けて1年間ひとりでやってみたあとのものだった。いまはその部分を、認定される前に通ることになる。
変わったものと、変わらなかったもの
段階の区切り方が変わり、入口が開き、必須だったものが選択になった。
一方で、Movement、Anatomy、Touch という3つの柱は変わっていない。10回シリーズの構成も変わっていない。教科書がないことも変わっていない。
そして、教室に立つ人があまり変わっていない。2026年の Level 1 で解剖学を教えているのは Konrad Obermeier 先生で、私が2014年に教わった人と同じである。12年、同じ科目を教え続けている。Movement には Rita Geirola 先生の名前がいまもある。Touch を教えているのは Andrea Clusen 先生と Pierpaola Volpones 先生で、当時アシスタントだった人と、上の段階を教えていた人が、いまは入口に立っている。
制度の形は組み替えられた。渡している人のほうは、そのまま残っている。
認定のあとの道
認定を受けたあとにも、続きがある。この部分は、当時と大きく変わっていない。
Rolf Movement Practitioner
ERA では Rolf Movement Practitioner の認定も行っている。ロルフィングとは別の、補完的な30日間の課程で、3つの Part に分かれる。
私は2017年から受け始め、2019年12月1日に認定を受けた。ロルフィングが身体の部位に手で働きかけるのに対して、こちらはクライアント自身が動くことを通じて身体に働きかける。Phase III の後半で少しだけ触れたムーブメントを、正面から学び直したことになる。
その道のりは別にまとめた(「ヨーロッパのRolf Movement Practitionerまでの歩みについて〜認定までの道のり」)。
継続教育
認定を維持するには、継続教育のワークショップを受け続ける必要がある。アドバンスト・トレーニングに向けて、3年から7年のあいだに最低18日分が求められる。
ただし、どの講座で埋めるかは決まっていない。制度の枠組みと、誰がどこで何を教えているかについては別にまとめた。目の前に選択肢があるときに何を見るかについても書いた。
アドバンスト・トレーニング
ロルファーは、3年から7年の実践を経てアドバンスト・トレーニングを受ける。ERAでは現在 Level 4 と呼ばれ、24日間168時間。
私が受けたのは、ERAではなく日本ロルフィング協会が主催したものである。2025年7月に修了し、Certified Advanced Rolfer となった。その道のりは別にまとめた(「Advanced Rolferの認定までの歩みについて【総括】〜認定までの道のり」)
2016年の時点では2018年にERAで受ける予定を立てていたが、そうはならなかった。規定に幅があって、Rolf Movement の認定を取る場合は、3年から7年という期間が9年まで延びる。2017年から2019年にかけてムーブメントの課程を受けたので、この条項に当てはまった。動きを扱う課程を先に挟んだぶん、上級の課程が後ろへずれ、結果として日本での受講になった。




