Phase III(18)〜個性と教育

Phase IIIトレーニングも6週間目の半ばとなった。ロルフィングに必要な施術や手順がだんだんと見えてきたのと同時に、各生徒と先生がどのように施術を行うのか?どのように身体観察を行うのか?といった個性みたいなものを感じるようになってきた。

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Jörg先生は、理学療法士出身のため機械的に単純な目で見るところが学べる。一方で、核心をつくため、各セッションの手順から外れることもある。そういうのをお構いなしに進めていくところが興味深い。長年の経験がものをいっていると思う。

Andrea先生は、もともと職人出身。そのため、各セッションで効果が出ているかどうかを明確にするため、施術前後で身体の動きのチェックを必ず入れる。施術の効果を見るのにAndrea先生のデモは非常に参考になる。

Giovanni先生は、施術の途中途中で間を入れる達人。相手を尊重しつつ、その場その場の状況に応じて自由自在にセッションを組み立てていく。

Phase IIのもう一人のPatricia Von Weich先生は、身体の情報をキャッチするのに時間をかけて身体を調えていく。デモでは分かりにくかったのはその理由。ただ、すべてわかりにくいわけではなく、特に印象的だったのが音の振動を使う調え方。これはEmilie ConradのContinuum Movementからきているそうだが、クライアントが発する音によって身体の変化(特に背骨を調整する際)が観察できたのは面白かった。

このようにロルファーの先生は十人十色。

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なぜ、このような多様性があるのだろうか?以前多様性については本コラムで触れたが(「代替療法と多様性」参照)、フランクフルト在住のロルファー、鎌田孝美さんの最新ブログ「セッションのカスタマイズ」がよりわかりやすくそのことについて書いている。

そこには、ロルフィングのセッションについて以下のように述べている。

ロルフィングセッションの面白いところは、セッションをいま目の前にいるあなたにむけてカスタマイズするところ、だと感じています。マニュアルには従わなくていい、今のあなたに起こっているまさにそれだけが教えてくれる、というダイナミックな世界。

Phase IIIのトレーニングで生徒のクライアント・セッションを観察するようになって面白いと思うのは、生徒の中にもセッションに対する個性が徐々に出てきているところ。もちろん、人によっては試行錯誤を通じて個性が前面に現れるケースもある。

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身体を解剖学に照らし合わせながら考えていく人、身体情報をキャッチするのが上手い人、セッション中にうまく間を取り入れるのが上手い人等。そして、バックグラウンドも多様(大学で解剖学を専攻した人、デザイナー出身の人、IT企業出身の人等)、様々な国出身だということもあり、それぞれが自分の適した手法を模索し始めているように見える。

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私が、ERAの教育において素晴らしいと思うのは一人一人の人間を尊重し、強みを伸ばすことを考えていること。考えてみれば、それぞれのやり方に正解があるわけでもないし、それぞれに合った施術方法の確立が大切なのは間違いないわけだから。

どれくらい時間がかかるかわからないが、将来、自分も自分の強み・個性にあったロルフィングスタイルが確立できればと思っている。そのためにもトレーニング期間中は集中して学べることは学びたい。

2026年8月の注記

この記事は、五人の教師の違いを並べている。Jörg先生は手順から外れる。Andrea先生は施術の前後で必ず動きを確かめる。Giovanni先生は間を置く。Patricia von Weichs先生は情報を受け取るのに時間をかける。そして、多様性の理由を職業的な背景の違いに求めている。大学で解剖学を学んだ人、デザイナー、IT企業出身の人が同じ教室にいた、と。

背景の違いという説明は間違っていない。ただし、見ていた層が浅かった。

Andrea Clusen の経歴を後から辿ると、職人出身という一語では収まらない。子供のころ、小遣いを菓子ではなく籠や樹上小屋の材料に使っていた。仕立屋として修業し、アパレル向けのCADによる型紙製作を学び、大工の訓練を受け、ミュンヘンの劇場で長く舞台の管理を務めた。与えられた素材が何であれ、それに応じて扱い方を変え、目的を果たすように手入れをする。ERAの公式のプロフィールは、絶えず変化する系のその時々の要請に応えることが彼女の第二の天性になった、と書いている。

彼女がロルフィングに出会ったのも、手仕事による身体の負担がきっかけだった。理学療法士のもとを訪ね、そこでロルフィングを受けた。素材への尽きない関心が、そのまま身体という素材へ向いた。

施術の前後で動きを確かめる、という記事の観察は当たっていた。ただし当時は、それが素材に対する一貫した態度の一部だとまでは見えていない。

もう一つ、当時は知りようのなかったことがある。

Andrea先生は2010年にアドバンスト・ロルファーの認定を受けている。ERAの公式のプロフィールによれば、その課程は、エネルギー的なタクソノミーを主導的な概念に据えた、これまでで唯一のアドバンスト・トレーニングだった。同じ時期、彼女は2009年から SourcePoint Therapy を実務で使い、2011年に Module 3 を修了している。2016年からは SPT のインストラクター、2017年からは ScarWork のインストラクターになった。ScarWork は Sharon Wheeler の技法である。

Sharon の Bone Work を東京で受けるのは2016年11月、SPT に出会うのは2015年5月の大阪でのことになる。この記事を書いた時点では、どちらも知らない。その両方を持つ人が、同じ教室でアシスタントを務めていた。

2025年に受けたアドバンスト・ロルフィング・トレーニングの Taxonomy も、エネルギーを扱う分類を含んでいる。2010年の課程がそれを主導的な概念に据えた唯一の例だったとすれば、十五年後の課程は、その主題を分類の一部として組み込んだことになる。一度きりの試みではなく、先行する例だった。

つまり、この教室の多様性は、職業的な背景だけによるものではなかった。ロルフィングの中で分かれた複数の系譜が、一人の教師のなかで重なっていた。

同じことは、Patricia von Weichs先生についても言える。記事は音の振動を使う調え方に触れ、それが Emilie Conrad の Continuum Movement から来ていると書いている。Continuum Movement には、二年後にもう一度、別の入口から出会う。Gael Rosewood のワークショップである。Gael は1980年に Emilie Conrad と出会っており、Ida Rolf と出会った1969年から数えれば、Rolf Movement の成り立ちの側にいた人である。ミュンヘンの教室と、二年後の新宿のワークショップに、同じ源が別々の経路で届いていた。

2015年3月の時点で見えていたのは、人によってやり方が違うということまでだった。なぜ違うのかを、経歴と気質の違いで説明した。実際には、教える側の一人一人が、それぞれ別の系譜を抱えて同じ部屋にいた。

ERAの教育について、一人一人を尊重し強みを伸ばすことを素晴らしいと書いている。その評価は変わらない。ただし、伸ばされていたのは生徒の強みだけではなかった。教師の側もまた、それぞれの経路で受け取ったものを持ち込んでいて、それが制度によって均されていなかった。教科書がないということの意味は、ここにも及んでいる。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka