Phase III(16)〜代替療法と多様性

ロルフィングのトレーニングには、教科書というものがない。このことについては以前触れたが(「授業の進め方」参照)、それは、恐らく代替療法の一つとしてロルフィングの特徴が現れているのではないかと思う。

なぜなんだろうか?と考えていたら、よしもとばなな氏の『Q健康って?』という本をKindleで読んだときに「なるほど!」と思える印象的な言葉に出会った。

この本は、代替療法に携わる4人との対談で興味深い内容になっている(そのうちの1人は、よしもとばなな氏のパートナーでロルファーの田畑浩良氏である)。私個人としては、最後に整体師の片山洋次郎氏のボディワークや健康法についての基準について書かれたあとがきが面白かった。

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Phase IIとPhase IIIでは、10回のセッションをどのように組み立てるのか、がまとまったノートが電子ファイルで配布される。

Phase IIのGiovanni先生、Phase IIIのJörg先生のノートをみると似ているところもあるが違うところもある。また、ロルフィングの熟達者の本も何冊か出版されているが、それも若干違っている箇所がある。

group decision making

Giovanni先生とJörg先生から言われていることは、10回のセッションについて自分の言葉でまとめることの重要性だ。おそらく、片山洋次郎氏の言葉に現れるように、最終的に一人一人がそれぞれにあう形での10回シリーズというのが作られてくるからなのかもしれない。

ロルファーとして3年〜7年の経験を経た後、アドバンスト・トレーニング(これを修了するとアドバンスト・ロルファーになる)を受講することができる。

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このカリキュラムについてRISI(Rolf Institute of Structural Integration)のホームページを覗くと、develop individualized treatment strategies(個々に応じた施術の戦略を立てる)という言葉が出てくる。まさしく、人間が一人一人違う存在であり、それぞれに応じた施術を行うにはカスタマイズを考えることが大切になってくることを裏付けているように思う。

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残りの3週間で、どういったことを学ぶのか?非常に楽しみだが、多様性という観点にも注目しながらトレーニングを見ていきたい。

2026年8月の注記

片山洋次郎氏の言葉で印象に残ったのは、多様化の主語が術者に置かれていた点だった。同じメソッドでも、術者が熟達するほどカスタマイズされる。2015年3月の記事は、この対比をそのまま受け取っている。教科書がないことも、Giovanni先生とJörg先生のノートが違っていることも、代替療法という分野の性質として納得された。

主語は、その後二度移っている。

身体の意識についてで書いた「正しいでも、間違いでもなく」は、カスタマイズの理由をクライアントの側に置いていた。多様なのは術者の熟達度ではなく、目の前の身体のほうである。

2025年4月から7月にかけて受けたアドバンスト・ロルフィング・トレーニングでは、さらに移った。セッションの設計は、期待していることは何か、不足している原理は何か、どの分類(Taxonomy)に当たるのか、という順で組み立てられる。カスタマイズは熟達の結果として自然に生じるものではなく、最初から設計の対象になっていた。術者の熟達 → クライアントの個別性 → 設計の手続き、という順に主語が動いたことになる。

ただし、この三つは置き換わったのではない。RISIのページにあった individualized treatment strategies という語は、2015年の時点で既に、戦略を立てる(develop)という動詞を伴っていた。自ずとそうなるのではなく、組み立てるものとして書かれている。当時はカスタマイズという語のほうに目が向いていて、動詞のほうは読み流していた。

もう一つ、後から気づいたことがある。

Phase I でムーブメントを教えたのは Rita Geirola という教師だった。1987年に認定ロルファーとなり、1992年にフェルデンクライス・プラクティショナーの認定を受け、1998年からピラティスを教えている。Hubert Godard と Peter Levine の両方に学んだ人でもある。

2019年12月、Rolf Movement Practitioner の認定をこの人から受けた。基礎トレーニングの初日にムーブメントを教わった教師が、五年後の課程の最後にいたことになる。その最終盤のクラスで繰り返し言われたのは、誰に向けて教えるのか、そのときにどの言葉を選ぶのか、という点だった。一人一人が自分の文化を背景とした言葉の使い方を持っている。だから教えるプロセスそのものを通して学んでほしい、と。

カスタマイズは、手技だけの話ではなかった。言葉のほうにも同じことが起きる。2015年3月の時点では、Movement の授業を受けているという以上の認識を持っていなかった。

この記事に登場する田畑浩良氏についても、同じことが言える。よしもとばなな氏との対談本に出てくるロルファー、という位置で読んでいた。2025年のアドバンスト・ロルフィング・トレーニングで講師として教わることになるとは、この時は考えていない。本文が受講できると書いた、その課程だった。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka