Phase IIIのトレーニングも5週目が終わった。セッション7まで終えたことになるので、合計で少なくとも各生徒、先生、自分自身のクライアント・セッションを合わせて42のセッションを体感したことになる。
クライアント・セッションを見ていると、自分の身体に対する意識を持っている人とそうでない人がいる。ヨガ・ピラティスの経験の有無によってこの意識に影響を及ぼす傾向があるが、必ずしもそうとは限らない。
ロルフィングは、施術する前に持っていた古いパターン(old pattern)と新しいパターン(new pattern)という言葉を使うことは以前触れた(「古いパターンと新しいパターン」参照)。その際大切なのは、施術した結果が「正しい」、施術前が「間違い」ということではなく、クライアントに対して選択肢を与えているということである。
「身体に対する意識をもつこと」についても同じことが言える。今回はこの意識をPerception(知覚すること)との関係を通じて考えてみたい。Perceptionを取り上げる理由は、単純で、クライアント・セッションでJörg先生からフィードバックを頂く際にもっとも聞かれる言葉だからだ。
PerceptionをOxford Advanced Learner’s Dictionaryで調べると、下記のような意味が出てくる。
- the way you notice things especially with the senses.(感覚(五感)を通じて知覚する方法)
- the ability to understand the true nature of something.(本質を理解する能力)
- an idea, a belief or an image you have as a result of how you see or understand something.(人間が「見ること」や「理解すること」を通じて形成するアイデア、信念やイメージ)
Perceptionとは「知覚すること」であり、個人個人が身につけた信念やイメージと結びついているといえる。Perceptionとロルフィングとの関係を見る前に、ロルフィングの各セッションの目的を見てみよう。
セッション7までの目的を列挙すると、呼吸を調える(セッション1)、足を調える(セッション2)、体側面を調える(セッション3)、骨盤底を調える(セッション4)、大腰筋を調える(セッション5)、仙骨を調える(セッション6)、頭・顔を調える(セッション7)のような順番になっている。
筋膜を通じて余計な力を解放させることによって、それぞれの目的とする身体の部位を調える形をとる。その際、身体の部位をクライアント自身がどのように意識するか?その意識の仕方やどのように知覚するのか?こそが、その人のPerceptionとなる。
そう考えるとPerceptionは、
自分の五感をつかって外の世界を理解し、知覚すること
であると表現できるし、クライアントがもつ身体の使い方の習慣であるといえる。そしてロルフィングを通じて、新たなPerception(新しい選択肢)を知り、それを身につけていく。
Phase IIIで、Jörg先生は、クライアントがもつPerceptionに新たな選択肢を増やすためには、自分の身体から学ぶ・教育を受ける(educate)必要があるという。そして、そのなかで「動きを通じてクライアント自身が身体の使い方を学ぶこと」は一つの効果的な方法といえる。そのため、ロルフィングでは手による施術のみならず、身体の使い方を覚えていただくために動き(movement)のエクササイズを行う。
例えば、呼吸の仕方、骨盤の動かし方、仙骨の動かし方、背骨の動かし方、坐骨の使い方等いろいろとある。
Phase IIでは10回のセッションを覚えるのに精一杯だったが、Phase IIIでは、いかに動きをセッションの中に取り入れ、クライアントに対して動きを通じて身体の使い方を学ぶのか?一つの大きな課題として生徒は課されている。
トレーニングも残り3週間とわずかになってきた。引き続き、手による施術のみならず、動きを通じたエクササイズを通じて、自分のクライアント・セッションでの選択肢の幅を広げていきたいと思う。
2026年8月の注記
正しいでも、間違いでもなく
この記事の中心にあるのは、施術した結果が「正しい」で施術前が「間違い」ではない、という一文である。クライアントに選択肢を与えている。そう書いている。
2015年3月の時点では、これはJörg先生から受け取った態度だった。理由を説明できるわけではなく、そういうものとして書き留めている。
11年後、同じことが理論として渡された。
2025年のアドバンスト・トレーニングで、Ray McCall先生がJeff Maitlandの三つのパラダイムを紹介した。癒し、矯正、全体。このうち矯正のパラダイムは、身体を機械のように捉え、症状を治すこと、ズレを直すことに主眼を置く。Maitlandの指摘は、この立場に立つ施術者は、怪我や介入に対して身体全体がどう応答しているかを見落としがちだ、というものだった。この枠組みについては「ホリスティックの治療とは何か?」に記した。
矯正のパラダイムには前提がある。正しい状態が先にあり、そこからのズレが問題であるという前提である。「正しい」と「間違い」で判断できるということ自体が、この立場に属している。
2015年に書いた一文は、その前提を置かないという宣言だった。当時はそう自覚していない。ただ、選択肢を与えているのだ、と書いただけである。何をしないことなのかが言語化されるまでに、10年かかった。
そして、身体は正しい・間違いで判断できるものではない、というのはIda Rolfの言葉でもある。「不安と安心」に引いたとおりだ。三つのパラダイムという名前がつく前から、同じことが言われていた。
一つの語が、二つの体系に置かれた
Jörg先生から最も多く聞いた言葉がPerceptionだった、と書いている。
この語は、その後、二つの方向へ分かれていく。
一方はGodardの系譜である。「Case Presentation(1)」で書いた4側面——Structure、Coordination、Perception、Meaning——のうちの一つとしてのPerception。これは2018年にAline Newtonから5視点として渡し直されたとき、知覚・認知として独立した位置を得た。Tonic Functionの理論の内側にある語である。
もう一方はアドバンスト・トレーニングの系譜である。2025年のSomatic Sensorium、Maitlandの三つの問いかけ。こちらでのPerceptionは、施術者がどう知覚するかという側に重心がある。
同じ語が、別々の体系で、別々の位置に置かれている。片方では理論の構成要素として、もう片方では施術者の在り方として。
「5原則」の注記で、二つの体系のあいだに人の行き来はあったが理論は渡らなかったと書いた。語の側から見ると、その事情がもう少しよく見える。言葉は両方にある。同じ言葉が両方にあるからといって、同じものを指しているとは限らない。
課題として渡されたものが、課程になった
Phase IIIで課されていたのは、動きをセッションにどう取り入れるかだった。手による施術だけでなく、movementのエクササイズを行う。呼吸の仕方、骨盤の動かし方、仙骨の動かし方、背骨の動かし方、坐骨の使い方。
Rolf Movementの本トレーニングを受けたのは、2017年から2019年にかけてである。30日間を三つの部分に分けて学ぶ課程で、その第一部の主題が、10回シリーズの機能的な側面を深めること、そしてセッションごとにクライアントへより響く動きの探求を差し出せるようになることだった。
2015年3月に一人で抱えていた課題が、二年後には課程の第一部の説明文になっていた。
この課程は今も、ロルフィングの基礎トレーニングとは別の、補完的なプログラムとして置かれている。ただ、教えられる順序は変わった。当時は10回シリーズの機能的な理解、3回シリーズの設計、グループの指導という順で受けたが、現在は第二部がグループの指導、第三部が3回シリーズの設計になっている。グループを導くことが、後ろから前へ移った。
ERAの説明にはこうある。ムーブメント教育が増えているのは、重力への方向づけ、知覚、協調、表現性、神経系の調整といったものが、姿勢と機能の持続的な変化を決めるうえでどれほど重要かが分かってきたからだ、と。
この記事で扱ったPerceptionが、その並びの中にある。





