Phase IIIのトレーニングも開始してから2週間が過ぎた。クライアントとのセッションも3回目が終わり、順調にいけば来週末までには4回目が終わりそうだ。
本ブログで触れてきたが、Phase IIで学んだ様々な手技の中で最も本質的に大切なのは何か?どのように情報を絞り込みクライアントと向き合ったらいいのか?問題意識を持つ重要性を学んでいると思う(「イントロと知識の整理」「スペースと心の部屋」参照)。
例えば、クライアントと向き合う際に、身体が施術内容について理解するのに時間を与える(スペースを与える)こと(「スペースと心の部屋」参照)や施術をしすぎてクライアントに情報量を与えすぎないといったこと(「イントロと知識の整理」参照)はPhase IIIに入ってから気づいたことだ。
ロルフィングは10回セッションから構成されているが、各セッション、2人の先生のセッションと自分が実際体験する2つのセッション以外に、他の生徒のセッションも見ることができる。他の人を観察することは本当に勉強になる。
実際は二人一組で一人がセッションを行っている間、他の人はその人のサポートをする形でクライアントとのセッションは行われるのだが、ロルフィングの施術を行っているロルファーが集中しているときや、集中が途切れているときなどが身体感覚でわかるときがある。その点に関して、Jörg先生が、私が行ったセッションではなく、他人の観察したセッションを終えた時に以下のようなアドバイスを聞くことができた。
ロルフィングのセッションの開始時、body readingを行う際いろいろなことが見えることがある。その情報量は多くなり混乱することがある。結局、自分を見失いセッションが上手くいかなくなる(その時は集中が途切れている)。また、急にクライアントが「寒い」「腰痛がする」と言い出すことでいろいろとやることが増えて、自分がパニックになったりする。
そこから抜け出すには、深呼吸をし自分を落ち着かせた上で、身体を地につける(「スペースと心の部屋」で書いたが、身体をニュートラルにすること)。そして、各セッションの目的を思い出し、頭で考えるのではなく、自分の身体の内側で感じたことを大事にする。すなわち、「クライアントと同じく自分は同じ人間なのだから、自分で体感してみるとわかることがある」ということ。そうすると自ずと情報が絞られて自分のアプローチすべき場所がわかってくるというのだ。
Phase IIIに入ってテクニック面よりも、精神面や心がけを学んでいるところがPhase IIと違う。そして、これらが不思議とクライアントセッションで役立つのだ。
また、知識や自分が学んだことから一歩離れ、自分の頭を空にすることが役立つことにも気づきつつある。その点に関して、将棋棋士の羽生善治氏と元サッカー日本代表監督の岡田武史氏との対談本『勝負哲学』で
「努力の積み重ねが直感力を発達させる」
と述べている。知識を磨き、ロジックによって身体を理解することは大事だが、時には直感を通じて学ぶこともあるらしい。
すでに2週間が経過し、残りは6週間となった。これから先もどのような気づきがあるのか、楽しみだ。
2026年8月の注記
Phase IIIに入って二週間、この記事はJörg先生から受けたアドバイスを記録している。手技の話ではない。混乱したときにどうするか、という話である。
セッションの開始時、body readingでいろいろなものが見えてくる。情報が多くなり、混乱し、自分を見失う。クライアントが急に寒いと言い、腰痛を訴え、やることが増えてパニックになる。そこから抜け出すには、深呼吸をして自分を落ち着かせ、身体を地につけ、頭で考えるのではなく身体の内側で感じたことを大事にする。
この三つが、10年後に名前を得る。
2025年のアドバンスト・トレーニングで教わったNeutralは、施術者の身体の使い方として三つの要件で定義された。Shape the Hand、Finding Back Space、Haraである。手の形、背中側の空間、そして肚。呼吸を整え、身体を地につけ、内側の感覚を指針にすることと、指しているものが変わらない。2015年の記述には、身体をニュートラルにすること、という言い方がすでに出てくる。ただしそれは、当時受けていたコーチングの訓練から借りた語だった。同じ語が、10年後に別の系統から、身体の使い方として定義し直されて戻ってくる。
この記事に書かれた答えが内側を向いていることは、後になって対比が立つ。
2017年3月、Gael Rosewoodのワークショップで、手技をほとんど使わずに上肢と下肢の連動が改善した。そこでGaelが示したのは外側だった。クライアントにどんな言葉を渡すか。Jörgが示したのは、施術者が自分の状態をどう保つか。手技を超える、という同じ問いに、二人が反対の方向から答えている。どちらも正しい。ただし当時は、内側の答えしか手元になかった。
この記事の締めに、羽生善治氏の言葉を引いている。努力の積み重ねが直感力を発達させる。
11年経って読み直すと、この引用は半分しか説明していない。積み重ねが必要なことは確かだが、Jörgが示したのはその先の条件である。積み重ねたものを、使う瞬間に一度前面から外すこと。情報が絞られて自分のアプローチすべき場所が見えてくるのは、知識を足したときではなく、いったん引いたときだった。
同じ形の教えが、この年に三度現れている。
一度目がこの記事、2015年2月のJörgである。二度目が同年11月のプラーナーヤーマの連続講座で、実践の際には知識を一度手放す、と教わった。回数は正しいか、やり方は合っているか、という思考優位に陥ることを避けるためである。そして三度目が2017年3月のGaelで、Break the Breathing Patternという言い方だった。呼吸のいつものリズムを一度成立させなくする。
蓄積を否定する話ではない。使う瞬間に、蓄積を後ろへ下げる話である。三つとも別の文脈で、別の人から、別の言葉で受け取っている。当時は三つを結びつけていない。
最後に、この記事の中の一文について書いておきたい。
クライアントと同じく自分は同じ人間なのだから、自分で体感してみるとわかることがある。
いまコーチングの場で使っている観察の方法は、ここから出ている。相手の状態を外から推測するのではなく、自分の身体で確かめる。視線がどこにあるか、呼吸がどう変わったか、その場の空気で自分の心拍がどう動いたか。そうした身体的な手がかりを、相手を読む道具ではなく、自分の側の変化として扱う。
Jörgはこれを、セッション中に混乱から抜け出す方法として言った。11年後には、混乱していないときにも常時使う方法になっている。




