Phase III(3)〜Body Readingと情報の寡多

ロルフィングのPhase IIIトレーニングの最初の1週間が終わった。最初の2日間は今まで習ったことの復習、後半の2日間は私の担当する2人のクライアントがオフィスを訪れ、セッション1の施術を行った。金曜日は休みなので4日間。久々のロルフィングの授業と施術であったが、本当に楽しく時間が過ぎていったように感じた。

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本コラムで述べたように、Phase IIIの目的は、Phase IとIIで得られた知識をどう実践にいかすのか(各生徒は2人のクライアントを担当する)?そして、知識を使う際にどういったフレームワークを使えばクライアントに対して役立つのか?にある(Phase IIIについては「イントロと知識の整理」でも触れた)。

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ロルフィングのセッションは10回シリーズにより構成されていることは以前触れた(「表層筋のセッション」参照)。Phase IIの時は、10回シリーズを各回順番に理論と実践で学ぶ。今回は一連の流れを経験した上でのPhase III。10回シリーズ全体から見て、各回どのように臨んだらいいのか?に力点が置かれることになる。そして、各セッションで基本となるのが身体観察(body reading)だ。

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body readingについては、Phase IIでは各回、基本的な観察法を学んできた(例えば、セッション1についてPhase IIで学んだ内容については「セッション1:呼吸を調える」参照)。Phase IIIでは、body readingに対し、

  • その人の良さ・長所(英語ではResourceという言葉を使った)の見方
  • 得られる大切な情報とそうでない情報をどう峻別し、絞り込むのか?

について学ぶ。

考えてみれば、病院や整骨院、オステオパシーやホメオパシーに通ってきた人たちは、身体のここが悪い(腰痛、後弯症(Kyphosis)、左右のバランスの差異等)ということを専門家から言われてきて、悪いところを言われることに慣れている人たちが主となる。その人たちに悪いところを指摘しても、新しい発見もないし、解決策にもつながりにくい。

良さについて例を挙げると、足は地面にしっかりとついて身体を支えている、胸呼吸(または腹式呼吸)はしっかりと行えている、等である。つまり、実際にできているところに注目し、どのように改善していったら全体としていい方向へ向かうのか?を考えていく。私を含め、欠点を指摘する言葉遣いから直される体験をした。

Holding The Sky

短所に目を奪われると、その人に対してレッテルを貼ることにつながっていく。ある側面しか物事が見られなくなるため、必要とする情報を見落とす可能性がある。実際は、クライアントは問題を抱えているとはいうものの、健康体で動けている人が大多数。その点を忘れてはならないと思う。

また、相反することを述べている可能性もあるが、目に頼り身体を観察すればするほど情報量が増えてしまい、大切なものを見失ってしまうこともある。そこで、強みだけではなく、今まで各回で学んだ手順のうち、優先順位をどうつけるのか?つまり、どの部分を施術し、どの部分を施術しないのか?Jörg先生は、body readingで使うことができるフレームワークを紹介してくれた(本コラムでも別途取り上げる)。

情報の絞り込みを行うと、身体の施術も最小限になる。最小限だからといって効果がないというわけではない。クライアントは初めてロルフィングという施術を体験することになるわけで、身体にあまりにも多くの情報を与え過ぎると、情報に圧倒されてしまい、自分の身体内でどのような変化が起きているのか?がわからなくなってしまう可能性があるからだ。Jörg先生は、それをLess is Moreという言葉を使って説明していた。

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Jörg先生がクライアントに対して行った1回目のセッションでは、最小限の施術しか行っていないにもかかわらず身体の顕著な変化があった。それを身をもって観察することで、Less is Moreの大切さを学ぶことができた。

私自身にとって、Less is Moreという観点は、Phase IIIのトレーニングに臨むにあたって学ぶべき一つの大きな主題になりそうだ。

2026年8月の注記

Phase IIIの最初の週に受け取ったのは、2つの言葉だった。ResourceとLess is More。どちらも、その後の実践を決めていくことになる。

Resourceという語が出てきたとき、既に知っている言葉だった。2009年4月から12月にかけて、応用コースまで学んだCTI(Co-Active Training Institute)のコーチングに、4つの柱の一つとしてこう置かれている——People are naturally creative, resourceful, and whole. 人はもともと創意工夫に富み、リソースに満ち、完全である。欠けているものを補うのではなく、既にあるものから始める。

ロルフィングのトレーニングで、それと同じ考え方が身体観察の方法として出てきた。悪いところを指摘しない。足が地面についていること、呼吸ができていること——できているところに注目する。病院や整骨院に通ってきた人は、専門家から悪いところを言われることに慣れている。同じことを繰り返しても新しい発見にはならない。

この記事に「私を含め、欠点を指摘する言葉遣いから直される体験をした」と書いている。言葉遣いを直されるとは、見方を直されることである。5年前にコーチングの教室で聞いた原則が、ミュンヘンの施術台の前で、実際に人を見る手順として現れた。

2025年のアドバンスト・トレーニングでは、これが「相手の身体は自己調整できると信じること(Body is self-organizing)」という形で、Neutralの次の段階として置かれていた。信じることが技術の前提になる。CTIの原則も、Jörgのbody readingも、同じことを別の場所で言っている。

もう一つのLess is More。情報の絞り込みを行うと施術も最小限になるが、最小限だから効果がないわけではない。初めてロルフィングを受ける人に情報を与えすぎると、圧倒されて、自分の身体で何が起きているかがわからなくなる——Jörgはそう説明した。

この考え方は、その後も繰り返し現れる。2017年6月にミュンヘンでPeter Schwindのワークショップを受けたとき、彼はセッションを45分程度に収める理由を、時間をかけすぎるとかえって脳に大量の情報を教え込んでしまうから、と説明していた。JörgもPeterもドイツ系である。一方、2016年から2017年にかけて学んだSharon Wheelerは、3時間半かけて一人に施術していた。同じロルフィングの中に、逆の方向を向いた2つの答えがある。

11年経った現在も、この問題は決着していない。ただ、実務の側では答えが出ている。クライアントセッションでは、Less is Moreを意識している。何をするかより、何をしないかを決めるほうに時間をかける。それがこの週に始まったことだった。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka