ロルフィングは全10回にわたって行われる。アイダ・ロルフ(Ida Rolf)によるロルフィングの開発経緯については「Training Phase I〜一週目を終えて」にて取り上げた。

アイダ・ロルフの著書、Rolfing and Physical Reality によると、施術者と教師の養成を開始する50年代に全ての身体に適用できるような方法がないか、ということで一つフォーマットを考案。それが表層筋から深層筋へアプローチする10回シリーズとなったという。
10回シリーズは、1、2、3回目の表層筋セッション(英語でsleeveセッション)、4、5、6、7回目の深層筋セッション(同coreセッション)、8、9、10回目の全体への統合(同integrationセッション)へと続く。表層筋から開始するのは、タマネギの皮を一枚ずつはがすように身体をアプローチするためである。別の表現をすれば、身体の表層の部分で動きを邪魔しているピンを一つ一つ取っていく(take the pins out)といってもいい。
1回目〜3回目は表層筋セッションでは、以下のセッションが行われる。
1)1回目は上半身のボディワークを中心に呼吸を自由に(free the breath)する(上下のバランスを調える)。
2)2回目は下半身のボディワークを通じて土台となる足を自由(free the foot)に動かせるようにする(左右のバランス調える)。
3)3回目は身体の側面からアプローチし、前後のバランスを調えることで、1回目と2回目の統合を行う。
各回のセッションが行うには、Body reading(身体の観察)、Goal(身体の観察から導きだされた各回の目的)、Strategy(目的に応じた施術法)が必要となり、具体的にそれぞれのどこに着眼していったらいいのか?について、TeacherとAssociate Teacherの2回のデモセッション、手技の練習と生徒同士で施術を行うことで学んでいく。
Body readingについてだが毎回、歩行と呼吸という、誰もが行う反復運動を観察することから始まる。それは、万人に適用できるのが大きな理由でもある。そして、毎回、上半身、下半身が連動して動くように施術が行われるところが特徴だ。

では、次に各回に具体的にどのように身体へアプローチしていくのか?について触れていきたい。
2026年8月の注記
この記事では、10回シリーズを「アイダ・ロルフが50年代に考案した、すべての身体に適用できるフォーマット」として紹介している。表層から深層へ、タマネギの皮を一枚ずつはがすように進む手順である。
2025年のアドバンスト・トレーニングで学んだのは、この手順が後に脱構築されていったという歴史だった。
10回シリーズも、10回を終えた人を対象とするアドバンスト5回シリーズも、当初は手順(Formulaic Series)が決まっていた。後者を開発したのはアイダ・ロルフではなく、後継者のPeter MelchiorとEmmett Hutchinsである。1989年、ロルフィング協会はGuild for Structural IntegrationとRISI(現Dr. Ida Rolf Institute)に分裂する。
ハワイで設立されたGuildは、MelchiorとHutchinsを中心にアイダ・ロルフの教えを忠実に、手順を守る道を選んだ。一方、Jeff MaitlandとJan Sultanを中心とするRISIは、手順にとらわれない形式(Non-Formulaic)へと変えていった(「Advanced Rolferの認定までの歩みについて【総括】」参照)。
Ray McCallの言葉によれば、手順に固執するとクライアントに負担をかけすぎる可能性がある。そこでMaitlandらは、原理・原則に基づいて個々に応じたセッションを組み立てるスタイルを確立した。この記事に出てくるBody reading、Goal、Strategyという枠組みは、その原型にあたる。
基礎トレーニングと上級トレーニングの違いも、ここにある。基礎は一人一人を平均的な人間として扱い、手順を教える。上級は一人一人の独自性を尊重し、クライアントに合わせてセッションを組み立てる。
もっとも、手順そのものが否定されたわけではない。10回シリーズはロルフィングを届ける一つの方法であり、ロルフィングという概念の全体ではない、という整理である。この記事に書いた手順は、いまも基礎トレーニングで教えられている。


