Phase II(10)〜基本的な考え方〜2方向性(palintonicity)

Palintonicityという言葉はロルフィングで頻繁に出てくる。「逆向きに張る」というギリシア語のpalintonosから由来するこの言葉は、英語の辞書にも出てこない用語のため分かりにくいが、動きには二つの方向性をみることの重要性を捉えたロルフィング独自の用語だ。

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これはPalintonicityでいうところの、身体が2つの方向性を持つこと、すなわち下半身は重力を感じる(下向き)、上半身はそれを土台に背筋が伸び、自由に動く(上向き)という原則に則っている。このとき、最も自然な動きができる。

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例えば、椅子に座る際も、足が地に着き、椅子で坐骨を支え(足と坐骨が下向き)、坐骨をベースに上半身を上に伸ばす意識(上半身が上向き)を持つと、もっとも適した動きになる。

また、呼吸を行う際に、上下、左右、前後の3種類の動きがあるが、これもまさしく2方向性を示していて、これらの動きを意識できると呼吸が深まる。

2方向性については、ヨガのポーズをとるときにも大事だ。2013年にヨガのティーチャートレーニング(Under The Light Yoga School)を受けた際に、ヨガのポーズの観察法は、下から上を見ることが重要であると学んだ。これは、ポーズを観察し、生徒がポーズに対して問題を抱え、その人が快適なポーズになるようにヨガの先生がアジャスト(補助)する際に、下からみて徐々に上に行くということである。

下は、土台であり、そこをしっかりと整えてから、上を整えるということを意味する。

三角のポーズ(トリコナーサナ)を取る際に、足の土台(左右前後のバランスがどうか?)を見た上でアジャストし、上半身へ向かう。そうすると快適なポーズが取れるようになる。

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2方向性に注目して動きを追うと、肩こり、腰痛等は、上半身と下半身が二方向性ではなく、双方とも下向きの意識になってしまっている為に起きる場合が多い。座るときに坐骨への意識が低下し、背中が丸まり、上半身の背筋を伸ばす意識がなくなるからだ。

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本ブログでも触れたことのある、アレクサンダー・テクニック。脊柱と頭との関係を通じてこれらを軽減させる方法は、いわば、頭が脊柱を押す意識をやめ、結果的に上半身の背骨が伸び、上向きに方向性を変える一つの方法である。

2方向性から身体を観察するというのは、ロルフィングの基本。身体観察の際には是非ともこの原則を忘れずに行っていきたい。

2026年8月の注記

この記事を書いた2014年時点では、Palintonicityを「ロルフィング独自の用語」として、身体観察の基本原則という理解で受け取っていた。

この語がより明確な位置づけを持っていることを知ったのは、2025年のアドバンスト・トレーニングでのことだ。Jeff MaitlandがJan Sultan、Michael Salvesonらとともに定式化した「ロルフィングの5原則」——WHOLISM(全体性)、SUPPORT(支持)、ADAPTABILITY(適応性)、PALINTONICITY(二方向性)、CLOSURE(完了)——の一つとして扱われている(「ロルフィングにおける原理・原則と観察力 — Jeff Maitlandのアプローチ」参照)。

トレーニングをきっかけに調べてみると、Maitlandは1991年に「The palintonic lines of Rolfing」(Rolf Lines 19巻1号)を、翌1992年にはSultanとの共著で「Definition and principles of Rolfing」(同20巻2号)を発表している。Pedro Pradoによれば、Maitlandは Sultan、Salveson とともに介入の諸原則を定式化しており、原則としての整理はこの時期の仕事にあたるという。

この5原則は、手順に縛られないロルフィング(Non-Formulaic)を可能にした枠組みでもある。決まった手順に従うのではなく、クライアントを観察して、いまどの原則が不足しているかを見極めてセッションを設計する。2014年に「身体観察の基本」として書いたことは、まさにそのための道具だった。

なお、この記事の4ヶ月後、Phase IIIの期間中に書いた呼吸シリーズでは、2方向性が呼吸の観察に適用されている。姿勢が調っていない状態での呼吸をConcentric breathing、2方向性が働いている状態をEccentric breathingと呼ぶ(「姿勢が崩れると呼吸が変わる──伸筋・屈筋と斜角筋」参照)。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka