Phase II(18)〜セッション5:大腰筋を調える

セッション4、5、6は、骨盤の上(大腰筋、仙骨や背骨)、下(骨盤底や内転筋)を通じて(4は内転筋〜骨盤底付近、5は大腰筋や横隔膜、6は背骨と仙骨)、中心軸を調えていく。

jintaizu_中心軸ver2

セッション5は、セッション4に引き続き、中心軸を意識する。セッション4との違いは、主に身体の前側の施術を行い、上半身を調えること。セッション6では、身体の後側の施術を行う。

jintaizu_中心軸_セッション4-6

セッション5では、上半身の中心軸で鍵となるのが大腰筋。

大腰筋

大腰筋は大腿骨から背骨(胸椎から腰椎)まで繋がっている筋肉。股関節の屈曲、伸展の動作に関わり、太ももを上げる動作や骨盤の前傾にも関わっている。大腰筋が弱っていると、歩きや走りへの影響が大きくなる。太ももを上げる歩行では、大腰筋が使われなくなり、腿の筋肉やふくらはぎの筋肉が酷使され、疲れやすくなる。そして、つまずきやすくなる。

そこで、大腰筋を使うことで、これらの筋肉に負担が減り、楽に歩けるようになる。そのため、歩きの動きをみるロルフィングでは非常に重要な筋肉の一つであるといえる。そして、この筋肉は、身体の前後、左右、内外のバランスを司っている。

スクリーンキャプチャ

興味深いのは、アイダ・ロルフは、腹筋(腹直筋(rectus abdominis)、下記の写真参照)と大腰筋のバランスが重要であると指摘している点である。腹筋を鍛えすぎると身体が引っ張られ、猫背になることや、腰痛になること、そして大腰筋が働きにくくなることだ。

興味深い発見として、私はヨガの練習で腹筋を意識して力を入れることが多い。その結果として、大腰筋の動きやすさ(自由さ)を失っている可能性があることをロルフィングのセッションを通じて知ることができた。

腹直筋

大腰筋は構造上、足と脊椎を結ぶ筋肉であるため、中心軸に重大な影響を及ぼす。大腰筋は深層筋の一つであるため、その周辺の筋膜の緊張を解きながらアプローチしていく。

また、大腰筋は背骨とつながっている。上半身の前面と中心軸を調えることを考えると、大腰筋と首回りや鎖骨近辺へのつながりも意識することが大切。そのため、腹膜(peritoneum)や胸膜(pleura)の筋膜を緩める必要がある。

腹膜に関わる筋肉として腰方形筋(quadratus lumborum)、腹筋(腹直筋や腹横筋等)が挙げられ、如何にこれらの筋肉に可動性を持たすかがポイントとなる。

最後に、胸膜、特に胸骨・鎖骨の内部、そして横隔膜に働きかける。大腰筋と上半身が中心軸でつながり、空間が広がり呼吸を深めることが可能となる。

セッション5の目的(goal)をより明確にすると、以下のようになる。

  • 骨盤周りの中心軸を調える:腰方形筋、12番目の肋骨と大腰筋(小腰筋、腸骨筋も含む)を調える。
  • 上半身の中心軸を調える(前面):鎖骨・胸骨近辺、横隔膜、(必要に応じて大腿筋等)。

身体の観察(body reading)はセッション4とほぼ同じであるが、身体を前から見たとき(解剖用語では前額面)に左右に偏りがあるかどうか?細長い筒が左右にあるというイメージを使ってその偏りをみていく。また骨盤の前傾、後傾や胴体の腹付近でどうなっているのかも観察する。自分自身への観察の結果は

  1. 胸が上下(上は首、下は腹直筋)圧迫を受けている(セッション4と同じ)
  2. 胴体と足の左右差がある(セッション4と同じ)
  3. 胸椎の後彎(Kyphosis)が強い(セッション4と同じ)
  4. 中心軸を意識すると、上半身と下半身がバラバラになっている(特に肋骨と腹付近の意識が希薄)
  5. 腹筋に力が入っているため、胸への圧迫を強くする

が挙げられた。

セッション4の結果

大切なのは、前回述べたように胸への圧迫。おそらく、それは腹付近の緊張も挙げられると思う。今回のセッションでは腹筋の周りや大腰筋への施術を通じて、主に腹直筋の緊張、そして大腰筋の緊張を抜くというのが目的となる。

そこで、今回の施術は仰向けになり、鎖骨や胸骨近辺、横隔膜などの上半身への働きかけを行いつつ、骨盤、下半身の筋肉(大腿筋、腸脛靭帯やハムストリングス)と腰近辺(腰方形筋)や腹周り(腹直筋や腹横筋等)の緊張を解いていった。最終的に大腰筋へ働きかける施術でしめた。あまりにも気持ちがいい施術であったために眠気に負けて気を失う場面もあった。

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セッション4でも取り上げたが、私の歩きの特徴は、大腰筋に力が入ること。そこに繋がる腹直筋が上向きに引っ張られ、かつ胸式呼吸よりも腹式呼吸優位のため、首・鎖骨からの引っ張りで、胸が圧迫された状態となる。そのため胸椎が長く腰椎が短くなるので背中が丸まった状態になる。

walking body

今回も、最後に歩いているときに、大腰筋、鎖骨から胸、首付近の動きの余計な緊張を解くことに時間を割いた。セッション6を受けてわかったことだが、仙骨の筋膜や筋肉付近に緊張があるために大腰筋の緊張が抜けないことがわかった。この詳細についてはセッション6で触れる。

歩く

2026年8月の注記

この記事には、ヨガの実践が身体に何を残していたかについての、二つ目の発見が書かれている。

「私はヨガの練習で腹筋を意識して力を入れることが多い。その結果として、大腰筋の動きやすさを失っている可能性がある」

セッション4では、腹式呼吸が優位であることをアシュタンガヨガの長年の練習と結びつけて観察していた(「セッション4〜骨盤底を調える」参照)。セッション5では、腹筋への力の入れ方が大腰筋の自由さを奪っている、という別の側面が見えている。

呼吸のパターンと、筋肉の使い方。同じ実践が、二つの経路で身体に痕跡を残していた。

しかもこの記事は、アイダ・ロルフ自身が腹筋と大腰筋のバランスを指摘していたことに触れている。腹筋を鍛えすぎると身体が引っ張られ、猫背になり、腰痛が起き、大腰筋が働きにくくなる。ヨガの実践者にとって、これは無視できない指摘である。

ヨガが身体に良いか悪いか、という話ではない。どの筋肉を意識し、どこに力を入れる習慣を持つかが、姿勢のパターンとして定着していくということだ。実践を続けるほど、その痕跡は深くなる。

前面だけでは解けなかったこと

この記事の末尾に、次の一文がある。

「セッション6を受けてわかったことだが、仙骨の筋膜や筋肉付近に緊張があるために大腰筋の緊張が抜けないことがわかった」

セッション5は身体の前面を扱う回である。腹直筋、腹横筋、腰方形筋、横隔膜、鎖骨・胸骨近辺。前面をひととおり扱っても、大腰筋の緊張は残った。それが解けたのは、後面——仙骨と背骨——を扱ったセッション6だった。

実際、セッション6で椅子に座って仙骨の可動性を増すワークを行ったところ、大腰筋の力が抜け、それほど努力しなくても胸で呼吸ができるようになっている(「セッション6:仙骨を調える」参照)。

これは、この時期に書いた2方向性(Palintonicity)の考え方の実例にあたる(「基本的な考え方〜2方向性(Palintonicity)」参照)。身体は前後で対をなしており、片側だけを緩めても、もう一方の緊張が残っていれば元に戻る。

10回シリーズが、前面(セッション5)と後面(セッション6)を分けて配置している理由も、ここにある。順序に意味があり、片方だけでは完結しない。

セッションを受ける側として、そのことを身体で確認した記録になっている。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka