前回に続きモダリティについて。今回はロルフィングとの関連で取り上げたいと思う(「モダリティ(1)〜モダリティの意味とロルフィングでどのように生かすか?」参照)。
Phase IIIのトレーニングでJörg先生、Andrea先生のクライアント・セッションを見る機会があるが、モダリティを変える場面をしばしば見ることができる。例えば、歩いているときに歩行速度に緩急をつけること、あるいは身体の後側に意識を向けることで目の力を抜くこと等。
モダリティとは、知覚する際にどのような身体の使い方をするのかであり、この点については前回、NLPとの関連で触れた。その時に、問題のある状態(人に怒られた体験)とうまくいっている状態(人から褒められた体験)で、違ったVAKの(サブ・)モダリティの形で保存されることについても触れた。そして、人は出来事に反応するのではなく、出来事の記憶に反応すると述べた。
身体観察についてもモダリティを利用することができる。例えば、ヨガのポーズをとる場合。ヨガのポーズをとる際には、吸うときに空間を広げる意識、吐くときに身体を伸ばす意識というように、ヨガのインストラクターから学ぶ。それを逆手にとって、逆を行うとどうなるのか。これもモダリティの変化を見る一つの機会だ。実際に、ヨガのインストラクター出身の生徒の身体観察の際、興味深いことが起きた。
通常、立位のポーズ(タダーサナ)から両手を上に挙げる場合には、吸気(息を吸う)を行う。その時、身体の後側の筋肉(僧帽筋、菱形筋)を使って両側の手を押し上げるというところを見ることができた。次に、呼気(息を吐く)を行いながら同じような動きをするとどうなるのかを試した。
驚くべきことに、手をあげる動作で戸惑っている仕草を示しながら手を挙げたのだが、その際に後側の筋肉を使うことなく、身体全体に力を入れることなくスムーズに持ち上がったということだった。
呼吸を変えただけだが、ヨガのインストラクターのレベルであっても気が付かない身体の使い方というのがあり、一つの身体の使い方を変えるだけでも身体にこのような大きな影響を及ぼすというのは、ただただ驚いた。モダリティが身体に大きな影響を及ぼしているということがよく分かる。
クライアント・セッションで、呼吸(体感覚といってもいい)を使うのみならず、イメージ(例、砂地に足を踏み込むイメージ)、嗅覚(例、オレンジのアロマ)や視覚(例、視野を広げる)のようなモダリティの変化を取り入れる場面を観察する機会が多くあった。今後、自立して自分でロルフィングのセッションを提供する際には、五感やモダリティを含めたアプローチも大事にしていきたいと思う。
2026年8月の注記
この記事で驚いているのは、実験の結果そのものではない。ヨガのインストラクターとして教える側にいた人が、自分がどう腕を挙げているかを知らなかった、というほうである。吸気で挙げるときには後側の筋肉を使い、呼気に変えるとそれを使わずに上がる。本人にとっては、どちらも同じ「腕を挙げる」でしかなかった。
習熟すると、その使い方は当たり前になる。当たり前になったものは、感じ取る対象から外れる。長く続けているほど、そこが見えなくなる。
Phase III と並行して、1か月遅れで Phase II が同じ建物で進んでいた。その講師の Harvey Burns は、プロの打楽器奏者だった人である。最初のロルフィング・セッションを受けたのは45年ほど前、ドラムセットを演奏している最中のことで、そこで分かったのが、力み過ぎていた、ということだった。
緊張のパターンが本人にとっての normal になっていた。流れと協調は緩んでいるときにしか現れないが、緩むことは潰れることではなく、healthy tonus のほうも要る。演奏の技術ではなく、演奏している身体のほうが見えていなかった。
同じことが、この記事を書いた側にも当てはまる。アシュタンガ・ヨガを長く練習していながら、膝の痛みも肩や首のこりも消えなかった。柔軟性と安定性を増すためにポーズを取っているのに、なぜ力みが出るのか。西洋で発達したボディワークへ向かったのは、その疑問からだった。教室でインストラクター出身の生徒に起きたことは、数年前に自分の身に起きたことと同じである。
その意味で、「モダリティ(1)〜モダリティの意味とロルフィングでどのように生かすか?」に書いた「教わらなかったから外を探した」には、もう一段前がある。外を探す必要があったのは、内側が見えなかったからだった。
呼吸を入れ替えるというこの操作にも、後に名前が付く。Break the Breathing Pattern。習慣として固まった呼吸と動作の組み合わせを一度外すことで、それまでの筋の動員が変わる。2015年の教室では、モダリティを変えるという一般的な言い方で渡され、なぜそうなるのかの説明はなかった。うまくいく、という事実だけが先にあった。



