ロルファー認定後の継続トレーニング〜アドバンスト・ロルファーへ向けた18単位の枠組みと講師の地図

はじめに

ロルファーの認定を受けたあと、学びは続く。アドバンスト・トレーニングへ進むには、継続トレーニング(Continuing Education)を18単位積む必要がある。1日が1単位である。

ここで、それまでとは性格の違う問いが出てくる。何を受けるか、自分で決めることになるからだ。

基礎トレーニングでは、教師が日程で決まっていた。誰が担当するかは事前に公表されるので、日程を選ぶことが教師を選ぶことになる。アドバンストも、開催と講師が決まっている。自分で選べるのは、メンタリング・セッションと、この継続トレーニングだけである。

世界中でワークショップが開かれている。筋膜、頭蓋、内臓、神経系、ムーブメント、トラウマ。何をどう選べばいいのか。

この記事では、選ぶための基準を3つの角度から整理した。何を扱うか、誰から受けるか、どこで受けるか。私自身が2016年から2017年にかけて受けた6つのワークショップを、例として置いている。

ロルファーになるまでの道筋については、別にまとめた(「ロルファーになるには何が必要か──資格・認定団体・トレーニングの全体像をロルファーが解説」)。この記事は、その続きにあたる。

まず、制度の枠を知る

18単位は、どう積んでもよいわけではない。枠が決まっている。

ヨーロッパ・ロルフィング協会(ERA)の現在の内訳は、Intermediate(手技)が10単位、Movement が5単位、Elective(選択)が3単位である。

枠を分けているのは、扱う内容だけではない。誰から受けるかが条件に入っている。Intermediate はロルフィングの教員(Rolfing Faculty)から、Movement は Rolf Movement の教員から、Elective は承認された指導者であればよい。

つまり、同じ手技のワークショップでも、講師の立場によって入る枠が変わる。ここが、選ぶときに効いてくる。

一方で、どこの団体が開いたものかは問われない。私が受けた6つは、日本ロルフィング協会が主催したものが4つ、ERAが1つ、個人での開催と思われるものが1つだった。講師が要件を満たしていれば、開催地も主催団体も自由である。

何を扱うか──5つの分類

ロルフィングには、身体をどの側面から扱うかという分類がある。Taxonomies(分類群)と呼ばれる。Jeffrey Maitland、Jan Sultan、Michael Salveson の3人が中心になって整理したもので、クライアントの状態に応じて、いまどの観点から働きかけるかを選ぶための道具である。

分類は5つ。

  • 構造的・セグメント的(geometric)。骨格や筋膜という構造そのものに働きかける。原語は幾何学を意味する語で、身体を形と配置の側から見ることを指している。
  • バイオメカニカル(biomechanical)。動きと機能の改善を扱う。
  • 機能的(functional)。動きのパターンを重視する。Rolf Movement がここにあたる。
  • 心理生物学的(psychobiological)。感情や神経系との関係から入る。Somatic Experiencing がここに接する。
  • エネルギー的(energetic)。情報の場やフィールドの側から働きかける。ソースポイントセラピー、YIELD、クラニオセイクラルがここに入る。

このうち、構造的・セグメント的と機能的の2つは、Ida Rolf からの古典的な系譜にあたる。10回シリーズの手順に沿った実践である。残る3つは、後から加わったり、外から取り込まれたりした領域になる。

大事なのは、5つが別々の目的を持っているわけではない、という点である。どの分類も、構造に働きかける力を持つ。どれもが、重力のなかで身体が適応し、組織されていく過程を助ける。向かう先は一つで、入口が5つある。

だから、どれが正しいという話ではない。いま目の前の人に何が必要か、そして自分にはどの入口が開いているか。その2つで決まる。

継続トレーニングを選ぶとき、この5つ(geometric、biomechanical、functional、psychobiological、energetic)は地図として使える。自分の実践にいま足りないのはどこか。手技の精度なのか、動きの側から入る力なのか、神経系への理解なのか。そこから逆算して選ぶことができる。

Taxonomy そのものについては、アドバンスト・トレーニングの記事で詳しく書いた(「Advanced Rolferの認定までの歩みについて【総括】〜認定までの道のり」)。

誰から受けるか──講師にはそれぞれの得意がある

分類が地図になるのは、講師の側にも偏りがあるからだ。誰もが5つすべてに秀でているわけではない。

上級の課程は2つある。手技のアドバンスト・トレーニングと、Rolf Movement のトレーニングである。教える人も分かれるので、分けて挙げる。

アドバンスト・トレーニングの側。

  • 構造には、Jan Sultan、Tessy Brungardt、Peter Schwind。Jan Sultan と Tessy Brungardt は2025年に二人で課程を提供している。私はまだ受けていないが、どこかで受けたいと思っている。
  • 心理生物学には、Pedro Prado、Lael Keen。いずれもブラジルの人である。
  • エネルギーには、Ray McCall、田畑浩良さん。

Rolf Movement のトレーニングの側。

機能の系統になる。Hubert Godard の系譜に連なる人たちである。現在のERAの課程は、Rita Geirola、France Hatt-Arnold、Pierpaola Volpones の3人が3つのモジュールを担当している。

誰から受けるかを選ぶことは、どの分類に触れるかを選ぶことでもある。

なお、Rolf Movement のトレーニングは、基礎トレーニングを終えた人が受ける上級の課程である。単位が付くという以前に、進路の一つと考えたほうがいい。ERAの集中課程は30日間で、手技のアドバンスト・トレーニング(24日間)より長い。

ただし、一人が一つの分類に収まるわけではない。私が受けた Jonathan Martine 先生は、アドバンスト・ロルファーであり Rolf Movement の実践者でもあり、ムーブメントセラピストとピラティスの指導者でもある。神経を包む筋膜の可動性を扱う課程は、筋膜という点では構造、神経系という点では心理生物学、可動性という点ではバイオメカニカルに接する。どこにも収まるし、どこにも収まりきらない。

分類は地図として役に立つが、実際の講師も講座もその線をまたいでいる。

実際に教わった人を並べてみる

私自身が誰から教わったのかを並べておく。分類のラベルは付けない。どの課程を誰が教えていたか、という事実である。

基礎トレーニング(2014〜2016)。Phase I は Rita Geirola(Movement)、Konrad Obermeier(Anatomy)、Giovanni Felicioni(Touch)の3名、アシスタントに Fuensanta Muñoz de la Cruz、Caroline May、Patricia von Weichs。Phase II は Giovanni Felicioni、アシスタントに Patricia von Weichs。Phase III は Jörg Ahrend-Löns、アシスタントに Andrea Clusen。Supervision Workshop は Pierpaola Volpones、アシスタントに Fuensanta Muñoz de la Cruz。

メンタリング(2014〜2016)。Keith Graham、Alan Richardson、Hubert Godard、Kathrin Grobelnik の4名。

Rolf Movement(2017〜2019)。30日間で7名から教わった。Part I が Pierpaola Volpones、Rita Geirola、Giovanni Felicioni、Hervé Baunard。Part II が France Hatt-Arnold、Rita Geirola、Aline Newton、Nicola Carofiglio。Part III が France Hatt-Arnold、Rita Geirola、Hervé Baunard。

継続教育(2016〜2017)。Jonathan Martine、Sharon Wheeler、Lael Keen、Gael Rosewood、Peter Schwind の5名。

アドバンスト・トレーニング(2025)。Ray McCall、田畑浩良さんの2名。

重複を除くと20名を超える。そして、複数の課程にまたがっている人がいる。

Rita Geirola 先生は、Phase I の Movement を担当し、Rolf Movement の3つの Part すべてに入っていた。入口と出口の両方にいたことになる。

Giovanni Felicioni 先生は、Phase I の Touch と Phase II を教え、Rolf Movement の Part I にも入っている。手技とムーブメントの両方を教える人である。

Pierpaola Volpones 先生は、Supervision Workshop と Rolf Movement の Part I。Andrea Clusen 先生は Phase III のアシスタントで、現在はERAの主任講師として Touch を教えている。

教える側の顔ぶれは、思ったより重なっている。

どこで受けるか──地域ごとの傾向

地域によって、強い系統がある。

ヨーロッパは機能的な系統である。Hubert Godard の Tonic Function がERAの背骨にあり、Rolf Movement もこの流れにある。加えて Peter Schwind の構造、Konrad Obermeier の内臓と発生学がある。

ブラジルは心理生物学的な系統が強い。Pedro Prado 先生は、構造統合における心理生物学的な視点で国際的に知られる人である。Lael Keen 先生も、身体とトラウマの関係を扱う。

米国は複数の系統が並立している。Jan Sultan の構造、Sharon Wheeler の骨へのアプローチ、Ray McCall のエネルギー。そして Jeffrey Maitland の原理原則という枠組みがある。10回シリーズの手順に沿うことがロルフィングである、という理解から、原理に基づいて個別に組み立てる実践へ。この転換を担ったのが Maitland、Sultan、Salveson の3人だった。

日本については、地域の系統というより、個人の系統として見るほうが正確だと思う。日本人でロルフィングの講師はムート延子さんのみで、しかもボルダー在住である。日本国内で教えている日本人は、Rolf Movement の田畑浩良さんに事実上限られる。人が少ないぶん、誰から学ぶかがそのまま何を学ぶかになる。

ブラジルの設計

ブラジルには、他と違う仕組みがある。

Rolf Movement の認定を、ロルフィングの認定と並行して取れる。対象は認定ロルファー、IASI認定の構造統合実践者、そして Phase II を修了したロルフィングの学生である。認定を受ける前から入れる。ERAでは Level 3 のあと、つまり認定後の課程なので、そこが違う。

課程は225時間、3つのモジュール。各モジュールが12日間で、5日間の教育単位を2つ、あいだに休みが2日。モジュールのあいだにはオンラインの統合ミーティングが入る。

この設計を作ったのは、Monica Caspari 先生(1953年〜2019年)である。ABRの同僚とともに、構造とムーブメントを一つの体系の2つの側面として扱う課程を組み立てた。ムーブメントの仕事は、実践のうえで構造の仕事と切り離せない。早くからそう見ていた人だった。

Godard の知覚の理論を深く学び、その膨大で複雑な研究を、世界中の Rolf Movement の学生に理解できる形にした人でもある。ブラジル、ドイツ、日本、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチン、そして米国各地で教えている。

文化の違いについても書き残している。人は誰もが空間と重力との関係のなかで組織されているが、その経験の仕方は個々に固有であり、文化の影響も受ける。だから文化の違いを尊重することが本質的である、と。世界を回るなかで、身体をめぐるロルフィングの通念が、どこでも誰にでも通じるわけではないと気づいたという。

系譜は一人のなかで重なっている

ただし、地域と系統は一対一で対応しない。

ブラジルの講師陣の経歴を見ると、ほぼ全員が Hubert Godard に学んでいる。カリキュラムにも tonic function、haptic perception、phoric orientation が並ぶ。心理生物学の系統でありながら、土台にはヨーロッパの機能的な系統がある。

ABRの Paula Mattoli 先生は、Liz Gaggini から内臓マニピュレーション、Milne Institute でクラニオセイクラル、Peter Levine から Somatic Experiencing を学び、さらに Jan Sultan、Jeff Maitland、Lael Keen、Monica Caspari にも師事している。一人のなかに、米国の構造と理論、ブラジルの心理生物学、エネルギーの系統が入っている。

だから、どの地域のどの系統を選ぶか、という発想はあまり役に立たない。傾向として知っておく価値はあるが、実際に教室で渡されるのは、その人自身が持っているものである。

私が選んだもの

2016年9月から2017年7月にかけて、6つのワークショップを受けた。合計26日間、26単位である。

  • Intermediate 15単位。Neural Fascial Mobilization Part 1/Part 2(Jonathan Martine、12日間、東京)、Conceptual and Technical Aspects of Classical Rolfing(Peter Schwind、3日間、ミュンヘン)。
  • Elective 7単位。Bone Work(Sharon Wheeler、3日間、東京)、Structural Integration for the Cranium(Sharon Wheeler、3日間、シアトル)、Trauma Workshop(Lael Keen、1日間、東京)。
  • Movement 4単位。Dimensions of Integration(Gael Rosewood、4日間、東京)。

Sharon Wheeler 先生の2つと Lael Keen 先生の1つが Elective に入っているのは、内容ではなく講師の立場による。3人ともERA/DIRIの教員()ではないため、手技の課程でもトラウマの課程でも、選択の単位として数えられる。内容ではなく、誰が教えるかで枠が決まる。

ただし、この26単位がそのまま要件を満たしたわけではない。私は2017年から Rolf Movement のトレーニングに入っており、Movement と Elective の枠はそちらで満たされている(後述)。つまり要件として効いていたのは Intermediate の15単位だけである。残りの7単位と4単位は、枠を埋めるために受けたのではなく、内容が必要で受けたものだった。

順序が逆だったことになる。制度の枠に合わせて選んだのではなく、選んだものが結果として枠に収まっていた。

分類で見ると、構造的・セグメント的(Peter Schwind、Sharon Wheeler)、機能(Gael Rosewood)、心理生物学(Lael Keen)、そして複数にまたがるもの(Jonathan Martine)。エネルギー的な系統には、この時期に触れていない。

そのことに気づいたのは、ずっと後になってからである。2025年に受けたアドバンスト・トレーニングは、エネルギーワークを中心に扱うものだった。継続トレーニングで触れなかった領域を、上級の課程で正面から受け取ることになった。

選択には偏りが出る。そして、その偏りが後の道筋を決めることがある。

各ワークショップで何を受けたのか、そして講座を選ぶときに何を見ているのかは、別にまとめた(「継続トレーニングをどう選ぶか〜講座を選ぶときに見ている4つの基準」)。

制度は変わる

継続トレーニングの要件は、この10年で組み替えられた。選ぶ前に、いま何が求められているのかを確認したほうがよい。

内訳が変わった

2018年時点の内訳は、Manipulation(手技)9単位、Movement 3単位、Internal Motion 3単位、Elective 3単位だった。合計18単位。

現在は、Intermediate Required(手技)10単位、Movement 5単位、Elective 3単位である。合計は同じ18単位だが、中身が違う。

最も大きいのは、Internal Motion という枠が消えたことである。

Internal Motion は、内部の動きを扱う3単位だった。ここには、内臓マニピュレーションやクラニオセイクラル・セラピーが含まれていた。骨格や筋膜のように外から形を捉えられるものではなく、内臓や頭蓋の微細な動きに触れる領域である。それが独立した必修として置かれていた。

現在の内訳に、この枠はない。Taxonomies でいえば、エネルギー的(energetic)な系統が必修から外れたことになる。

なお、Taxonomies を整理した Maitland 自身は、晩年にこのエネルギー的な分類を探究していた。講師が集まってこの主題を扱う会も持たれている。必修から外れた領域が、同じ時期に、体系を作った側の関心の中心にあった。

Movement は3単位から5単位へ増えた。手技は9単位から10単位へ、名称も Manipulation から Intermediate Required へ変わっている。承認された指導者から、という条件だったものが、特定の課程を指すようになった。

総数は変わらないまま、何を中核と見るかが動いた。古典的な系譜にあたる構造と機能の比重が保たれ、その外側にあった領域が必修から外れた形になる。

2017年に線が引かれた

2017年以降に認定を受けたロルファーには、新しい内訳が適用される。2017年より前に認定を受けたロルファーは、Intermediate Required の要件を満たす必要がなく、従来の Manipulation 9単位と Internal Motion 3単位で代替してもよい。

自分がどちらに当たるかは、認定の時期で決まる。

単位に有効期限がある

計画しているトレーニングの7年以上前に取得した単位は、有効な単位として数えられない。現在はそう定められている。

これは選ぶときに効く条件である。認定から時間をかけてアドバンストへ進む場合、早い時期に取った単位が失効する可能性がある。

Rolf Movement を受けるという選択

Rolf Movement のトレーニングを受けると、各Partで10単位の Movement credits が付く。Movement と Elective の単位はこれですべて満たされる、とERAは説明している。

3つのPartを受ければ30単位になり、要件の18を大きく超える。あとは手技の単位を積めばよい。

これは、選択の幅にそのまま効く。Movement と Elective の枠が外れれば、残るのは Intermediate だけになる。手技の単位さえ足りていれば、あとは何を受けても、受けなくてもいい。私の場合がそうだった。

もう一つ、期間の条件も動く。アドバンスト・トレーニングは認定後3年から7年で受けるが、Rolf Movement の認定を取る場合、この期間が9年まで延びる。

時間をかけて進みたい場合、Rolf Movement は二重に効く選択になる。私自身は2017年から2019年にかけて受けた(「ヨーロッパのRolf Movement Practitionerまでの歩みについて〜認定までの道のり」参照)。

選ぶということ

継続トレーニングは、自分で選べる唯一の段階である。

何を扱うか、誰から受けるか、どこで受けるか。3つの軸のどれを重く見るかで、選ぶものが変わる。足りない領域を埋めるのか、特定の講師に学びたいのか、地域ごとの系統に触れたいのか。

そして、選んだものの総和が、その人のロルファーとしての形になっていく。基礎トレーニングでは教師を選べず、そのぶん複数の人に教わった。認定後は違う。誰に何を教わるかを、自分で決めていくことになる。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka