Phase II(23)〜統合セッション

ロルフィングは10回の施術を通じて、身体を調えていく。これまで7回までの基礎とその方法、実際に感じたことを書いてきた。

helping hand

セッション1〜3では、身体には上半身と下半身があり、それぞれ連動して動けること(セッション1、2)、身体には左・右があるということ(セッション2)、身体には前と後があるということ(セッション3)といった意識を、身体の表層の部分(筋膜)から調えていく。

セッション4〜6は、より深い層へ移る。骨盤の上(大腰筋、仙骨、背骨)と下(骨盤底、内転筋)を通じて、中心軸を調えていく。4は内転筋から骨盤底付近、5は大腰筋や横隔膜、6は背骨と仙骨である。セッション7は顔・頭を、セッション6まで調えてきた身体の上に意識を持っていく。ここで中心軸が完成する。

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アイダ・ロルフは当初、クライアント一人ひとりのニーズに合わせて施術を行っていた。後に指導していく上で、一つのフレームワークを作った。まず、セッション2〜7の6回が組み立てられ、セッション2の足を調える前に呼吸を調えるセッションを入れる必要性を感じ、セッション1を加えている。そこで、7回シリーズが完成した。後に、セッション8〜10の統合セッションを加えていった。

Holding The Sky

当初は7回でセッションが一区切りだったこともあり、トレーニングでも7回を終えた時点でシャンパンの乾杯が行われた。

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7回の施術によって養った意識を応用し、身体として統合していくのが8回〜10回となる。統合セッションは、一つの目標に向かって進む。それはクロージング(Closing)である。

ボディワークの一つといえるマッサージや整体とは違い、ロルフィングは10回で終了する。それは、10回のセッションを通じて学んだことを自分の生活に取り入れていくということでもあり、クライアントの自立性を促すことでもある。私自身がロルフィングを好むのは、10回と決めて、その間に集中して施術を行う点である。

セッション8〜10の主要な課題は、次の3つとなる。

  • クロージングに向けて何をすべきか。
  • これまで学んだことは何か。
  • 今後どういった方向へ進むのか。

となる。

背骨を捻(ねじ)るスパイラルの動きを意識するというのも、統合セッションで取り上げるテーマの一つである。ロルフィングでは、背骨が伸びて捻れると、重力に対して必要最小限の力で歩行が可能になると考えるからだ。ただし、これは身体の基礎(前後、左右、上下、そして中心軸の意識)ができていないと成り立たない。だから、セッション1〜7が大切になる。

downward_spiral

統合セッションには、ヨガに役立つ内容も多い。肩帯(Shoulder girdle。肩甲骨、鎖骨、胸骨付近を指す)と骨盤帯(Pelvic girdle)をどのように連動させ、スムーズな動きにもっていくのか。ヨガのポーズでは、このことを考えないと、肩や腰に極端な負担をかける形になってしまうからだ。

例えば、下向きの犬のポーズ(Downward Dog)や逆立ちのポーズ(Headstand)では、Girdle間のバランスをどうとるかが大切になる。ヨガの指導者でもあるGiovanni Felicioniが、トレーニング中に実例をもって示してくれた。

セッション8から10については、クライアントのニーズに合わせるというのが原則であるが、セッション7まで抱えてきた課題をもとに設計していく。

教科書的には、セッション8は肩帯と骨盤帯の2つのGirdleをどのように連動させるか。セッション9は、セッション8での連動性をもとに、足のつま先や腕、手まで動きをどうスムーズに伝えていくか。そして、最後に統合のセッション10となる。

session 8 - 10 fig.

セッション1〜7に比べると自由度も高い。実際に各セッションで体感したことを書いていきたいと思う。

2026年8月の注記

この記事は、統合セッションの目標を「クロージング(Closing)」という一語で書いている。当時は、10回シリーズをどう終えるかの話だった。

終わりが原則になる

2025年のアドバンスト・トレーニングで、ロルフィングの5原則の一つとして挙げられたのが CLOSURE(完了)だった。プロセスに適切な終わりを与えること。Jeff MaitlandとJan Sultanを中心に確立された原則の一つである。

そこで示された理由は、この記事の理解とは向きが違っていた。

「クロージングが重要な理由のひとつは、それが『次に起こること』を可能にするからだ」

終わりは区切りではなく、次のための条件である。クロージングとは、セッションの経験を身体的に収め、感覚的に消化し、統合的に意味づけるプロセスだと説明された(「Advanced Rolferの認定までの歩みについて【総括】〜認定までの道のり」参照)。

対象の範囲も移っている。この記事のクロージングは、8〜10回で10回シリーズを終えることを指していた。2025年には、1回1回のセッションの終わり方の原則になっている。統合セッション固有の主題だったものが、すべてのセッションに適用される原則へ広がった。

自立性という言葉

この記事には、もう一つ後年につながる語がある。

「10回のセッションを通じて学んだことを自分の生活に取り入れていくということでもあり、クライアントの自立性を促すことである」

2025年の統合の定義では、これが自己調整力として位置づけられている。クライアントの中にある自己調整力を信じ、それを支えること。施術者は変化を起こす存在ではなく、変化が起こる場を整える存在である。Ray McCallは、相手の身体は自己調整できると信じることを、セッションに臨む前提として挙げていた。

10回で終わるから自立性が育つ、と当時は書いた。11年後には、終わりがあるから次の変化が起こる、という言い方になっている。同じ構造を、違う側から見ている。

必要最小限の力

この記事はスパイラルの動きについて、背骨が伸びて捻れると、重力に対して必要最小限の力で歩行が可能になる、と書いている。

2025年のアドバンストで、Dr Rolfの統合の定義として示されたのは、身体が重力のサポートを受けることで、最小限の努力で立ち、動くことができる状態が生まれる、というものだった。

11年を隔てて、ほぼ同じ言い方になっている。当時はスパイラルという一つの動きの説明として書いたものが、統合そのものの定義だった。

手順があることの意味

この記事は「セッション1〜7に比べると自由度も高い」と書いて終わっている。受講生としての観察である。

その自由度が正式な課題になったのは、2018年1月、Rolf Movementの認定トレーニングPart 2でのことだった。10日のうち6日、ロルファーとしてセッションを提供する。3回シリーズをどう設計するか、具体的には教えられない。関係性の築き方、臨むときの身体の状態、身体観察の方法についてのガイドはあるが、手順はない。

そのとき書いたのが、次の一節である。

「基礎トレーニングではロルフィングの10回セッションのそれぞれの手順(レシピ)が与えられ、それに沿って行うことができたので、迷った場合には原点に戻れる何かがあった」

この記事を書いた時点では、手順は前提だった。3年半後、それが失われて初めて、手順が何を与えていたのかが見えたことになる。迷ったときに戻れる場所である。

Part 2で求められたのは、リスクを冒して違う方法を取り入れることだった。テーブルでのワークを減らし、立位でセッションを行う。講師の側は場をホールドすることに力点を置き、「こうしなければならない」が一切ない。間違ったときにのみ軌道修正が入る。5日目の終わりに、何人かの生徒が「いい意味で混乱している」と話していた(「Rolf Movement – Part 2(3)〜いい意味での混乱+Tonic Functionについて」参照)。

そこで書いた結びが、この記事と対になっている。

「最終的にセッションとして成り立っていくことができるので、身体の変化のプロセスをより信じることが求められる」

2025年のアドバンストでは、これが Non-Formulaic という形式として、また変化を起こすのではなく起こることを信頼する態度として説明された。基礎トレーニングは一人一人を平均的な人間として手順を教え、アドバンストは一人一人の独自性を尊重してセッションを組み立てる、という区別である。

2014年に自由度が高いと書き、2018年にその自由の中で混乱し、2025年にその原理を学んだ。順序としては、体験が先に来ている。

個人から手順へ、手順から個人へ

この記事は、10シリーズの成立史を書いている。Ida Rolfは当初、クライアント一人ひとりのニーズに合わせて施術していた。指導する上でフレームワークを作り、セッション2〜7が組み立てられ、呼吸のセッション1が加わり、後に統合セッション8〜10が加わった。

2025年に学んだのは、その先の歴史だった。1971年にボルダーで協会が設立され、10回シリーズもアドバンスト5回シリーズも手順が決まった形で教えられた。1989年に協会が分裂し、手順を忠実に守る系統と、手順にとらわれない形式へ向かう系統に分かれる。後者から、原理・原則に基づいて個々に応じたセッションを組み立てるスタイルが生まれた。

出発点は、個人のニーズだった。それが手順になり、半世紀を経て手順が外され、再び個人へ戻る。この記事が記録しているのは、その円環の前半部分である。

セッション8〜10はクライアントのニーズに合わせるのが原則だと、この記事は書いた。10シリーズの中に、最初から個人へ戻る場所が残されていたことになる。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka