Rolf Movement – Part 2(3)〜いい意味での混乱+Tonic Functionについて

Rolf Movementのトレーニングも5日目が修了した。ちょうど半分まで到達し、ワークショップでは今まで学んだことの振り返りを行なった。

今回のPart 2は、Part 1と比べ、ロルファーとして10日間のうち6日間セッションを提供する形をとるので、より実践的な内容になっている(詳細は「自分の身体の状態がセッションに反映される」参照)。

基礎トレーニングでは、ロルフィングの10回セッションそれぞれの手順(レシピ)が与えられ、それに沿って行うことができた。迷った場合には原点に戻れる何かがあった。

一方でRolf Movementの場合には、クライアントとどのような関係性を築くのか、ロルファーとしてどのような身体の状態で臨むのか、どのような身体観察の方法をとるのか、といったガイドは与えられる。しかし、具体的にどのように3回セッションを組み立てるのかを教えてくれるわけではない(詳細は「直感と身体観察を通じて見えてくるもの」参照)。

そのため、自ずとトレーニングの方法も異なってくる。

つまり、リスクを冒して違う方法を取り入れることが求められる。テーブルで行うワークを少なくして、立位でセッションを行う、といったことである。

そのためInstructorは、環境を整備することに力点を置く。場をホールドするという意味である。こうしなければならない、といったことが一切ない。そして、もし間違ったことをしていた場合にのみ軌道修正が行われる。

5日目の最後に、一人一人のコメントがRitaから求められた。そのとき何人かが、いい意味で混乱している、と言っていた。

Rolf Movementには自由度がある分、どのようにセッションが終わっていくのかが見えず、不安になっていくことがある。ただ、最終的にはセッションとして成り立っていくので、身体の変化のプロセスをより信じることが求められる。

さて、ヨーロッパのRolf Movementの特徴を一言でいうと何か。たびたび本コラムでも書いたように、フランスのHubert Godard先生(以下Godard)の考え、つまりTonic Functionの影響を大きく受けている点だろう。

1990年代には、単に身体の意識と動きとの関係で行われていたMovementのトレーニングも、2000年に入りTonic Functionが取り入れられることによって理論的支柱が入り、内容も深まっていったと思う。

今回、AssistantのAline Newton先生が2日目にTonic Functionについて時間をかけて説明してくれた。

身体の構造(Structure)は、姿勢を安定化(stability)するためにTonus、つまり筋肉の力を必要とする。ただしTonusの安定性は、さまざまな因子によって影響を受ける。

どこに重さを預けるのか。その結果として、自由に身体を動かすことができるようになる。この2方向性(Palintonicity)が、ロルフィングの基本的な考えにある(「5原則」参照)。

そしてTonicとは持続的という意味である。Godardは、重力に対して持続的に働く筋肉の機能に注目した。そこで、筋肉を一時的に働くPhasicと、持続的に働くTonicに分けた(「疲れる筋肉と、疲れない筋肉〜姿勢を支えるTonic Function」参照)。

いかにしてTonicの部分を引き出すのか。2方向性を発揮していく上で重要になる。

sky hook

PhasicとTonicに影響を与えるものは、5つの視点から見ると分かりやすい。

  • 一つ目は組織(Tissue)。ロルフィングで行う筋膜へのアプローチを通じて、構造やTonusに影響を及ぼす。
  • 二つ目は知覚・認知(Perceptual)。人間が成長していく上で身につけるもので、身体に習慣という形で取り込まれる。主に環境の脅威から自分を守るために取り入れられる。
  • 三つ目は、思考(Thinking)と言語(Words)。どのような母語を選択しているのか、ボディ・ランゲージ(Gesture)も含まれる。一つの経験が言語化され、概念として身体内に定着していく。例えば「背筋を伸ばす」という一つの言葉を取っても、背骨を伸ばすのか、背骨に力を入れるのか、背骨が勝手に伸びるのか。人によって異なる経験が、言葉という形で記憶される。
  • 四つ目は、意味(Meaning)、意義(Significance)、シンボル(Symbolic)。顔を少し後ろに向けたり、胸を閉じる仕草をしたりするのは、その人にとって安全に感じられ、意味を感じさせるから行う。
  • 五つ目は、協調(Coordination)。Nikolai Bernsteinが研究成果の一つとしてMotor Coordinationという仮説を提唱した。適した筋肉が効率よく働くことで構造が維持されることが、科学的に見つかった。

この5つの視点で身体を観察することによって、どこにアプローチしていったらいいのかが明確になっていく。ワークも5つの視点を使って練習することが多く、この切り口の奥深さを感じることができる。

次にクラスの雰囲気とクライアントとの関係作りについて、学んだことを紹介したい。

2026年8月の注記

この回で Aline Newton先生が説明した5因子は、Godardの理論を受け取った4つの経路のうち、最後のものにあたる。

最初は2014年、Phase IIのGiovanni Felicioni先生である。Godardから直接教わった人で、仮説の説明も受けた。それでもセッションにどう使えばいいのかが分からないまま終わっている。

二度目は2016年9月、パリでGodard本人から。三度目は2017年3月、Gael Rosewood先生から。そして四度目が、この回のAline先生である。ERAのメンバー向けにGodardが行ったスタディグループで学んだ人だと、後に本人から聞いた。

Gael先生は理論をほとんど出さず、実例だけを渡した。腕を上げる前にヒラメ筋が働く。物を掴む前に前鋸筋が働く。舌が口蓋にあると首と顔が安定する。どれも自分の身体で確かめられる形をしていた。

Aline先生は逆に、整理して出した。組織、知覚・認知、思考と言語、意味とシンボル、協調。この5つで身体を観察すれば、どこに働きかけるかが明確になる、という道具の形である。

上流の人が実例を渡し、下流の人が体系にして渡した。Gael先生はGodardを認定した側、Aline先生はGodardから学んだ側である。中間にいた最初の教師のときに受け取れなかったものが、両端で入ってきた。

そして、この5因子には、Phase IIIで学んだ4つの側面との違いがある。

2015年2月、Jörg先生から教わったGodardの4つの側面は、Structure、Coordination、Perception、Meaning だった。JörgはStructureをPhysicalと呼んでいた。

Aline先生が示したのは5つで、増えたのは組織(Tissue)である。ロルフィングの筋膜へのアプローチが構造とTonusに影響する、という項目だ。

元の4つには、施術そのものが入っていない。Godardは理学療法士でありダンスの背景を持つ人で、手技を出発点にしていない。5つ目として組織が加わったことで、ロルファーが自分の手でしていることが理論の中に位置を得た。

同時に、思考と言語が独立した項目になっている。背筋を伸ばすという一語をとっても、背骨を伸ばすのか、力を入れるのか、勝手に伸びるのか、人によって身体に記憶されている内容が違う。

この視点は、Gael Rosewood先生の言葉のガイドと、そのまま重なる。Push、Reach、Meetを使い分けると、同じ動作でも身体の力の入り方が変わる。

理論は、伝わる過程で形を変える。4つが5つになったのは、受け取る側が自分の仕事に接続できる形に組み直したからである。

もう一つ、この回には別のことが書かれている。

手順がないので、どのようにセッションが終わっていくのかが見えず、不安になる。5日目の振り返りで、何人かが「いい意味で混乱している」と言った。

混乱を放置していない。Instructorは環境を整備することに力点を置き、こうしなければならないということが一切ない。間違ったことをしていた場合にのみ軌道修正が行われる。

これが場をホールドするということだった。

11年後の視点で見ると、この設計は Rolf Movement 特有のものではない。2019年のPart 3で、生徒が話しやすい安全な場をどう整えるかを学ぶことになる。2025年のアドバンストでは、癒しが自然に起こる場を保持することが施術者の役割だと教わる。

場を整えて、待つ。教える側でも、施術する側でも、同じことをしている。

混乱していいのは、場が保たれているからである。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka