Articulationという言葉〜身体に空間を作るということ

本記事は「力を抜くこと」シリーズ全3回の第2回である。本シリーズは、ロルフィングの基礎トレーニング(Basic Training)Phase IIの期間中に書かれた。

ロルフィングのセッション4以降の説明に移る前に、再び「力を抜くこと」(ここでは、余計な力を抜くという意味)について取り上げたい。私自身、ヨガでは力を抜くことが課題で、様々な西洋のボディワークを探究するきっかけとなった(「力が抜けない身体を、どう解くか〜ヨガに足りなかったもの」参照)。

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本記事では、ロルフィングでの「力を抜くこと」について考えてみたい。

ロルフィングのトレーニングを受けていると、Articulationという言葉がよく出てくる。解剖学の用語で関節を意味する言葉だが、関節には別の言葉でJointがある。では、なぜロルフィングではJointではなくArticulationのほうを頻繁に使うのだろうか。

Jointは、joinという言葉が表すように、二つを一緒にする(繋ぐ)というニュアンスがある。骨と骨を連結する部分を関節とすると、一見、間違いではない。

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一方でarticulationという言葉は、繋ぐよりも「空間」や「間」を意味し、文章に間をもたせる動詞のarticulate(明確にする)の派生語でもある。

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ロルフィングは、身体内にスペース(空間)があることに意識を向ける(英語でevoke)ことで、余計な筋肉の力が抜けていくと考える。

Articulation、すなわち身体内のスペースを広げる意識をもつことは、まさにロルフィングの特徴を表していると思う。

例えば、肩こりや腰痛がある場合には、肩や腰に関わる様々な筋肉が緊張していて、共同で筋肉が働けない状態(偏った使い方)になっている、またはある程度動くためのスペースができていないために起きている。ロルフィングでは、筋膜の緊張を解くことによって、肩や腰を含め身体の全体を調える。結果として、身体内のスペースが広がるような意識を持てるようになり、筋肉の動きが改善されていく。

スペースとセッション1〜3との関係についても見てみよう。セッション1は、上半身のスペースを広げることで呼吸を調える。セッション2は下半身のスペースを、セッション3は身体の前後のスペースを広げる意識をもたせることで、呼吸や歩行の改善が可能となる。

ロルフィングのセッションを提供する施術者も、自分自身の身体内のスペースの意識を広げるために、足を地につけて、上半身の余計な力が抜けた状態で施術を行う。もちろん、自分が緊張していると相手にも緊張感を与え、施術にならないというのもあるが、自分の身体内にスペースの意識を広げることで、相手の情報を受信しやすくするというのが大きい。

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最後に、スペースと身体についてヨガの観点からも触れたい。日本で開催されたLeslie Kaminoffのティーチャー・トレーニング(2013年5月)に参加した時、ヨガ哲学についてduhkhaとsukhaの二つの言葉を対比しながら説明していた。khaはスペースを意味するのだが、duhkhaとsukhaの意味は次のとおりである。

  • duhkha:スペースが窮屈な状態(suffering, bad space)。仏教における「苦」はここからきている。
  • sukha:スペースが開いた状態(good space, freedom)。

身体は十分なスペースがないと適切な呼吸ができないことを考えると、ロルフィングに考えが似ている。なお、Kaminoffは「ヨガとは、sukhaを広げ、duhkhaを狭めることである」と言っていた。身体内にスペースを作り、呼吸をしやすくするという意味である。

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スペース作りのロルフィングは、ヨガの考え方に繋がるところがあって興味深い。これからどのようにトレーニングが進むのか。ワクワクしながら学んでいこうと思っているが、時々「力を抜くこと」については考えていきたいと思う。

2026年8月の注記

この記事は、Articulationという一語をめぐって書かれている。関節を意味する解剖学の用語でありながら、繋ぐことよりも空間を指す言葉。当時は、トレーニングでよく耳にする語の意味を確かめる、という位置づけだった。

この語は、その後も形を変えて現れ続けた。

語から、技法の語彙へ

絵画史と身体を扱った記事で、Giovanni Felicioniが示したのが、4つのArticulationという枠組みである(「絵画史と身体(1)〜西洋絵画史からみる身体の見方」参照)。

2018年2月、Rolf Movementの認定トレーニングPart 2では、France Hatt-Arnoldがセッションを組み立てるためのフレームワークを示した。そこに挙げられた対応の一つが、背骨の前にある内臓に対して、Articular(身体内にスペースを作る)と筋骨格的な動きを取り入れる、というものだった(「Rolf Movement – Part 2(6)〜Territorial BodyとBody of Action」参照)。

この記事が言葉の意味として調べたものが、4年後には、どの動きを選ぶかを決めるための語彙になっている。

そして2017年3月、Gael Rosewoodのワークショップで、これが実際の手続きとして示された。GaelはHubert Godardを認定したロルファーであり、TonicとPhasic Muscleをワークにどう応用するかを、実例をもって紹介した(「Gael Rosewood WS(4)〜重力に関わるTonic Muscleが、どのように身体のバランスを保つのか?」参照)。

パートナーとのワークで行ったのは、ゆっくりと息を吐きながら、恥骨と尾骨を寄せる、坐骨結節同士を寄せる、左右の上前腸骨棘を寄せる、背中の腸骨同士を寄せる、尾骨を上げる、という5つだった。

全てに取り組んでみると、呼吸が全身に入っていくことを実感した。微細な感覚だが、セッション4〜7に取り入れることで、よりセッションが充実することがわかった。

骨と骨を寄せることで、身体内に呼吸の入る場所ができる。この記事が言葉の意味として調べたArticulationが、こういう形で現れることは、当時は想像していなかった。

基礎トレーニングで最も理解が難しかったのが、ロルフィングとTonic Functionの関係だった。Giovanniから説明を受けたものの、セッションにどう使えばいいのかがわからず、知識として知るのみに留まっていた。それが3年後、Gaelの実例によって、身体で掴めるものになった。

施術者の側のスペース

この記事には、まだ施術を受ける側にいた時点で書いた、施術者についての一節がある。

「自分の身体内にスペースの意識を広げることで、相手の情報を受信しやすくする」

2025年のアドバンスト・トレーニングでは、ニュートラルを養うための3つのポイントが示された。Shape the Hand(クライアントの身体に自分の手を形作ってもらう)、Finding Back Space(背後の空間を感じる)、Hara(肚に繋がる)である(「Advanced Rolferの認定までの歩みについて【総括】」参照)。

2つ目が、この記事の記述と重なる。いま、ここに意識が偏りすぎると、身体が縮こまったり、過剰に前のめりになったりする。意図的に背中側のスペース、つまり後ろの空間を感じ取ることで、重心が中央に戻り、安定したニュートラルポジションに立つことができる、という説明だった。

この記事は、自分の身体内のスペースと書いた。11年後には、背後の空間という具体的な方向が指定されている。

もう一つ、この記事は理由を2つ挙げている。緊張していると相手にも緊張を与えること。そして、スペースの意識を広げると相手の情報を受信しやすくなること。後者のほうが大きい、と書いた。

2025年に学んだのは、この受信の側だった。Shape the Handは、自分の手で何かをしようとするのではなく、クライアントの身体に自分の手を形作ってもらうこと。手を通じて身体の情報を受け取り、そこに寄り添う。これがニュートラルなタッチの基本になる。

受信を優先させるという判断は、この時点で既に書かれていたことになる。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka