Gael Rosewood WS(4)〜重力に関わるTonic Muscleが、どのように身体のバランスを保つのか?

ミュンヘンでロルフィングの基礎トレーニングに参加した際に、最も理解が難しかったのが、ロルフィングとTonic Functionの関係についてだった。

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大学で教鞭をとっているロルファーのHubert Godardから直接教わったGiovanni FelicioniからTonic Functionの仮説についての説明を受けたのだが、思いの外、理解するのが難しく、

セッションにどのように使っていったらいいのか?

結局、当時のトレーニングでは知識として知るのみに留まった。

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Gael RosewoodはHubertを認定したロルファーなので、TonicとPhasic Muscleについて

「どのようにしてワークに応用していったらいいのか?」

実例をもって最終日(4日目、2017年3月27日)に紹介した。今回、Gaelのワークショップを通じて、ある程度理解が進んだ。

ロルフィングは重力との関係について扱う。

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詳しくは、「疲れる筋肉と、疲れない筋肉〜姿勢を支えるTonic Function」に書いたが、Hubert Godardは、重力に対して持続的に働く筋肉の機能に注目して、持続的に働く筋肉をTonic Muscle、一過性に働く筋肉をPhasic Muscleと呼んだ。

Gaelは、前者をIntrinsic Muscle(内因性の筋肉)、後者をExtrinsic Muscle(外因性の筋肉)と説明していたが、Phasic Muscleはすぐに働く筋肉なのに対して、Tonic Muscleは持続的に働き、意識していないと感覚がつかめない筋肉である。

Gaelによると、Tonic Muscleが働くのに5秒ほどかかり、弛緩するのにも5秒ほどかかるという。Tonic Muscleは、一度スイッチが入ると、働き続け疲れることを知らない。しかしながら、なんらかの事故や障害、トラウマの影響によりスイッチがオフになる。

又、Tonic Muscleは、動きの前に働く筋肉(ロルフィング用語ではPre-movementという言葉で学ぶ)でもあるということで、実例を挙げて説明した。

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例えば、

  • 1)腕全体をあげる場合には、そのままだとバランスが崩れ身体が前傾してしまうので、動く前にヒラメ筋(Soleus Muscle)が働くこと。
  • 2)ものを掴むため、手(この場合の手は手のひらと手指)を使う前から、前鋸筋が働くこと。
  • 3)首や顔の安定性を保つために、舌が口蓋(歯の上の部分)に静置することで、バランスを保つ。

もう少し具体的に触れたい。

スマートフォンを使う場合には、指先(手指)で使う頻度が高い人はいるが、てのひらの部分まで意識して使う人は少ないという。その結果として、前鋸筋が働かなくなり、結果として上半身のバランスを失い、肩や首に緊張が走るようになる。実際に2人1組で、前腕を触れた時に、手指のみと手指と手のひらの二つで触れた時に、前鋸筋が後者の場合に働くことが実感できた。

舌が重力の関係で歯の下の部分に静置した方が、下に対する力が抜けると思いがちだが、実はGaelの経験から、舌が口蓋の部分に静置した方が、バランスが保てるという。実際に、舌を上にした時と舌を下にした時の違いは歴然で、舌を下にした場合には、全くといっていいほど、目線が安定しないということをデモで見ることができた。

goal のコピー

人間の身体は視覚にとらわれてしまいがち。そのため、目線の位置が頭の真ん中であると捉えてしまう。実は、そうではなく、「ka」という音を立てるときに舌が届く位置がちょうど、頭の真ん中の位置になるという。

さすがに長年にわたってロルフィングの経験を積んだGaelならではの実例はわかりやすく、Tonic Functionについて、知識として自分の中に入ってきた。

Tonic Functionは実際に、セッションで感覚として掴むことができる。

これも、パートナーとのワークで、呼吸でゆっくりと吐きながら(吐くことで力を抜くことを促す、ハミングの音を出してもOK)、

  • 1)恥骨と尾骨を寄せる
  • 2)坐骨結節同士を寄せる
  • 3)左右の上前腸骨棘(ASIS)を寄せる
  • 4)背中の腸骨同士を寄せる
  • 5)尾骨を上げる

を行なっていった。

全てに取り組んで見ると、呼吸が全身に入っていくことを実感した。微細な感覚なのだが、セッション4〜7に取り入れると、よりセッションが充実することを実感できた。

他にも椅子に座りながら、どのように足と背骨をつなげつつ、力が最も入らない場所を探すのか?背骨をタタタ、と叩きながら意識を促すワークも行い、4日間で、ほぼ全身をカバーすることができた。

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これで、最終日も終わり、参加者全員とGaelと写真を。

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予想以上に素晴らしいワークショップで、学ぶことも多かった。今年は、Rolf Movementの認定トレーニングも2017年7月からミュンヘンで始まる。手による手技だけではなく、動きも取り入れることで、よりセッションの幅を増やしていければと思っている。

2026年8月の注記

この記事は、理解できなかったという告白から始まっている。基礎トレーニングで最も難しかったのがロルフィングとTonic Functionの関係で、結局は知識として知るのみに留まった。そう書いてある。

Godardの理論には、結果として四つの経路で触れることになった。

最初は2014年、Phase IIのGiovanni Felicioni先生である。GiovanniはHubert Godardから直接教わった人で、仮説の説明も受けた。それでも、セッションにどう使えばいいのかが分からないまま終わっている。

二度目は2016年9月、パリでのメンタリングでGodard本人から。三度目が2017年3月、この記事のGaelである。そして四度目が、2018年1月、Rolf MovementのPart IIでアシスタントを務めていたAline Newton先生だった。Alineは、ERAのメンバー向けにGodardが行ったスタディグループで学んだ人である。後に本人から直接そう聞いた。

四つのうち、理解が動いたのは三度目と四度目だった。しかも、その二つは正反対のやり方をしている。

Gaelは理論をほとんど出さなかった。出したのは実例だけである。腕を上げる前にヒラメ筋が働く。物を掴む前に前鋸筋が働く。舌が口蓋にあると首と顔が安定する。スマートフォンを指先だけで使うと前鋸筋が働かなくなり、肩と首に緊張が走る。Tonic Muscleは働くのに5秒かかり、緩むのにも5秒かかる。一度入れば疲れを知らないが、事故や怪我やトラウマでスイッチが切れる。どれも自分の身体で確かめられる形で渡されている。

Alineは逆に、整理して出した。Phasic と Tonic に影響を与える因子を、組織、知覚・認知、思考と言語、意味とシンボル、協調の五つに分けて説明した。この五つの視点で身体を観察すれば、どこに働きかけるかが明確になる、という道具の形をしていた。

そしてGaelとAlineは、Godardとの関係が対照的である。GaelはGodardを認定した側、つまり上流にいる。AlineはGodardから学んだ側、下流にいる。上流の人が実例だけを渡し、下流の人が体系にして渡した。中間にいた最初の教師のときに受け取れなかったものが、その両端で入ってきたことになる。

Alineの五因子について、もう一点書いておきたい。

2015年2月のPhase IIIでは、Godardの4つの側面として、Structure、Coordination、Perception、Meaning を学んだ。Jörg先生はStructureをPhysicalと呼んでいた。Alineが示したのは五つで、増えたのは組織(Tissue)である。ロルフィングの筋膜へのアプローチが構造とTonusに影響する、という項目だ。

元の四つには、施術そのものが入っていない。Godardは理学療法士でありダンスの背景を持つ人で、手技を出発点にしていない。五つ目として組織が加わったことで、ロルファーが自分の手でしていることが理論の中に位置を得た。同時に、思考と言語が独立した項目になっている。「背筋を伸ばす」という一語をとっても、背骨を伸ばすのか、力を入れるのか、勝手に伸びるのか、人によって身体に記憶されている内容が違う。この視点は、前回の回で書いたGaelの言葉のガイドと、そのまま重なる。

理論は、伝わる過程で形を変える。四つが五つになったのは、受け取る側が自分の仕事に接続できる形に組み直したからである。

最後に、二つのことを書き残しておく。

一つは「ka」の音のことだ。目線の位置が頭の中心にあると思いがちだが、実際には「ka」と発音したときに舌が届く位置が頭の中心にあたる、とGaelは説明した。解剖学の説明ではなく、自分で試せる手順として渡されている。2025年のアドバンスト・トレーニングで教わったNeutralも、概念ではなく身体の使い方として渡された。伝え方の形が同じである。

もう一つは骨盤の五つのワークである。恥骨と尾骨を寄せる、坐骨結節同士を寄せる、左右のASISを寄せる、背中の腸骨同士を寄せる、尾骨を上げる。これをセッション4から7に取り入れると充実する、とこの記事は書いている。11年後にセッション7の回へ追記すべき項目として、いま手元のリストに載っているのが、まさにこれである。当時の記録が、そのまま作業指示になっている。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka