Phase III(26)〜Hold the spaceを知る大切さ

Phase IIIのクライアント・セッションも10回目に到達した。クライアント・セッションで一番学んだのは、間違いなくHold the spaceを心がけることの大切さだ。このことはタロットカードをリーディングする際に学んだことでもあるが、まさかボディワークの一つロルフィングでも重要であるとは思いもよらなかった。今回は、このHold the spaceについて取り上げる。

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Hold the spaceについてどのように説明したらいいのか。ロルフィングでよく出てくる言葉にもかかわらず、Oxford Advanced Learner’s Dictionaryにも出てこないため、インターネットで調べてみた。そこで引っかかってきたのが、MindBodyGreenの ‘Holding Space: What Does It Mean & How Do We Do It?‘ である。

そこでは、Hold the spaceについて以下のように説明している。

It means when someone is going through something, you hold down the ground for them to have their own time and space to work out whatever they’re going through.
You provide stable, solid ground for them to be completely where they’re at without judgement, criticism, or blame. A neutral territory for the other to just… be. You have faith in their intelligence to figure out of their own.

人が何かを経験する際、その人が安心できるような環境を整えるために、時間やスペース(間)を与えること。大切なのは安心できる、安定した環境を与えることで、判断しない、批判しない、非難しないこと。いわば、その人があるがままになれる中立状態。そして、彼らの知性を信じ、自分で答えを導き出すことができるようにすること。

Hold the spaceにおいて重要なことは、相手に気づきを与える安心できるような環境を与えること。安心感というのは、何を話そうとも安心して話せるという環境であり、自分が相手から判断・批判・非難されないということでもある。そのことから、本コラムで度々触れてきているように、ロルファー自身がニュートラルの状態になることが大切なのだと思う。

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今回、その上で、Phase IIIでは、Less is More(どの部分を施術しないのかを意識すること)を心がける重要性について学ぶこともできた(「スペースと心の部屋」参照)。

そのことで、相手に身体内で何が起きているのかについて気づきを与えるための時間を与える。それは英語で言うところの Teach without teaching(教えることなく、教えること)を伝えることでもある。

例をあげたい。

Phase IIのGiovanni先生のクライアント・デモ・セッションを見ていた時に感じたことは、クライアントの気づきを大事にし、それに合わせて施術をしていたということだった。

一方で、Phase IIIのJörg先生のクライアント・デモ・セッションは、同じ自由でも、どちらかというと先生が主導して(英語で言うDecisive)身体の気づきを発見できるような環境を与える。その後はクライアントに合わせるのだが、力点が若干違う。

それは、Giovanni先生のセッションの時は、生徒が飲食していようが、PC(Mac, iPad, iPhone)を操作していようが全く構わず、接近し、真正面で見学しても全く動じなかったというところに現れていると思う。しかも、身体を動かしてもいい(例、セッション中にヨガのポーズをとること等)というおまけ付き。

Jörg先生のセッション時には、なんらかのPCの音が聞こえた瞬間、厳しい態度でNOを言う。また身体を動かすことに対しても注意があった。もちろん、接近してみる場合もあるが、なにか学んでいる生徒とJörg先生との間に距離があるような印象が強い。

そうはいうものの、両先生において共通しているのは、クライアントと境界線を引きHold the spaceを心がけ、クライアントが身体と正面に向き合うための環境作りに専念していたことだった。

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Hold the spaceは、今後とも取り上げていきたいテーマなので、また触れたいと思う。

2026年8月の注記

この記事は、辞書に載っていない語を調べるところから始まっている。ロルフィングの教室では頻繁に使われるのに、Oxford には出てこない。それで、ウェルネス系のサイトで見つけた説明を引いてきた。課程が定義を渡さないので、外から借りたことになる。

借りた説明は、いま読んでも大きくは外れていない。相手が自分の時間と場所を持てるように地面を支えること。判断も批判も非難もしない、中立の場所。相手が自分で答えを出す力を信じること。十一年のあいだ、この理解を大きく改める必要は生じなかった。

改まらなかったのは、理解の中身のほうではなく、書く動機のほうだった。この語については、11年で4回書いている。この記事の少し前に一度、2018年に一度、2025年に一度。同じ語について、そのつど別のことを書いている。空間の感じ方の話として書いたこともあれば、施術者の側の状態の話として書いたこともある。

名前だけが先に渡され、意味のほうが後から満ちてくる、という形がここにもある。ただしこの記事の場合、満ち方が一度で終わらなかった。定義は最初から手元にあったのに、その定義で何を指しているのかが、経験を重ねるたびに変わっていった。語の側は動いていない。動いたのは、その語で何を見るかのほうである。

この記事が書いている二人の教師の対比も、そこに関わる。Giovanni 先生のデモ・セッションでは、生徒が飲食していようが、PC を触っていようが、真正面から見学しようが構わない。Jörg 先生のセッションでは、PC の音がした瞬間に厳しく NO が出る。外から見れば正反対である。それでも、この記事は両者に共通するものとして、クライアントとのあいだに境界線を引き、クライアントが自分の身体と向き合うための場を作ることに専念していた、と書いている。

同じことをするために、二人はまったく違う手を使っていた。素材が違えば扱いを変えるという構えは、この課程の教える側に共通している。Andrea 先生の前歴が、仕立屋からCADによるパターンメイキング、大工、劇場の舞台管理と続いてきたことも、後になって知った。素材に応じて扱いを変えることが第二の天性になっている人だった。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka