ヨーロッパ・ロルフィングのトレーニングは3段階より構成されているが、その後にフォローアップとして、6日間にわたって開催されるSupervision Workshopの受講が必須となっている。
ミュンヘンでは、下記の日程でロルフィングの基礎トレーニングを受講した。
- Phase I:2014年8月4日〜8月22日
- Phase II:2014年10月6日〜11月26日
- Phase III:2015年2月2日〜3月25日
トレーニングについては「なぜミュンヘンで学ぶことにしたのか:資格取得までの手続きと費用」「英語が母語でない仲間と一緒に学ぶことで気づくこと」をそれぞれご参照いただきたい。
2016年12月13日にSupervision Workshopの初日を迎え、初めてイタリア人のPierpaola Volpones先生(以下Paola)と会うことになった。Paolaは強烈に個性的な人の多いロルファーの中でもバランスが取れた人であり、ロルフィングの定義を基本に照らして、天才たちがまとめたテクニックを分かりやすくまとめてくれるということを聞いていた。
基礎を見直したい自分としては、本当に都合のいい先生だと思う(詳細は「今後のERA Mentoring SessionとSupervision WS」参照)。
アシスタントの先生は、スペイン人のFuensanta Munoz de la Cruz先生(以下Fuensanta)。Fuensantaは医師の資格を持つアドバンスト・ロルファーで、Phase IのMovementのアシスタントとして2年前にお世話になった。
今回の参加者は、女性10人、男性3人の合計13人。国籍は、ドイツ、スイス、ブラジル、イタリアと日本から構成されている(日本人参加者は2人)。
さて、初日のワークショップの内容だが、午前中はSupervisionでどのようなことをカバーしたいのかを中心に、話し合いが進む。
ボディリーディング(ロルフィングにおける身体観察)や、10回セッションはどのような構成で成り立っているのか?の復習。各セッションがどのようにして繋がっているのか?等、事前のメールでの質問や現在どういったことを知りたいのか?午前中でPaolaとFuensantaの2人が中心となって話し合いが進んだ。
ボディリーディング(ロルフィングにおける身体観察)や、10回セッションはどのような構成で成り立っているのかの復習。各セッションがどのようにして繋がっているのか。事前のメールでの質問や、現在どういったことを知りたいのかを中心に、午前中はPaolaとFuensantaの2人が中心となって話し合いが進んだ。
私が、
10回セッションをしても、全くピンとこない人が数名いたのだが、その場合にはどのように対応したらいいのか
といった質問をしたところから、話し合いからワークショップへ切り替わっていった。パートナーを組み、それぞれ身体に触れて、
どのように感じるのか、言語化してみよう
ということで、大きな画用紙にペンで言葉を一つ一つ聞き取っていった。熱い、震えている、エネルギーの流れを感じる、など。手で身体に触れた時の感覚は、一人一人違う表現として現れることを体感した。
身体感覚がわからない人に対しては、身体の各部位に手を当てて、身体の感覚(Sensation)と頭で考える言葉による表現(Cognition)の違いを理解させることによって、感覚が蘇るということを学ぶことができた。
次に、それに関連しての話の聞き方。クライアントから話を聞くというのはどういうことなのか。10回セッションを身体を通じて、その一つ一つの動きから感じるワーク(Phase IIで行なったEmbodiment。「身体感覚:Embodimentとは何か?」参照)を行なった後に実施した。
初めて組む人たちで、話を聞くのが意外と難しかった。改めて、目的を持って聞くこと、クライアントが必ずしも会話に参加しなくてもいいが、クライアントが一緒になってコミュニケーションをとることの大切さ、相手の言葉に意味を与えるのではなく、あくまでも相手に感覚の意味を考えさせること、などといった気づきがあった。
午後には、Paolaが作った資料(1回目から10回目の要点を示したノート)が配布され、ロルフィングの1回目と2回目のセッションの復習と身体観察を3人1組で行なった。身体観察は、Paolaの資料が非常にポイントを絞っているのでわかりやすく、いい復習になったと感じた。
最後に、1回目と2回目のセッションで施術ベッドにてどのように身体観察したらいいのかを2人1組で実施。呼吸の観察法は学ぶことが多かった。
明日よりクライアント・セッションが始まる。Phase III以来の外国のクライアントが待っているので、またその印象について次回書きたい。
2026年8月の注記
この6日間の教室に、二人の教師がいた。当時わかっていたのは、Paola がバランスの取れた人で基礎を分かりやすくまとめてくれるということ、Fuensanta が医師の資格を持つ人で2年前のPhase Iでアシスタントをしていたということ、それくらいだった。
Fuensanta Muñoz de la Cruz の経歴を見ると、この教室の性格が変わって見えてくる。1987年にコルドバ大学で医学の学位を取り、1990年に米国の Rolf Institute で認定を受けている。そのときの教師が Emmett Hutchins と Jeffrey Maitland。
2005年のアドバンストは Michael Salveson と Hubert Godard から。Godard については、自分の師であると述べている。加えて Pedro Prado から心理生物学的な側面を、Peter Levine と Lael Keen から Somatic Experiencing を学んでいる。1992年にコルフ島で Levine の講座に出たのが最初だった。
ここに並んでいる名前は、これまで別々の流れとして扱ってきたものである。Ida Rolf が最初に教えた形を受け継いだ側、理論化を進めた側、欧州の機能的な系譜、そして神経系とトラウマを扱う系統。それが一人のなかにある。
Paola のほうも似ている。継続教育で Jeff Maitland、Jan Sultan、Michael Salveson、Peter Schwind のワークショップに出ており、Rolf Movement の背景は Godard の教えに大きく負っていると書いている。内臓マニピュレーションを Barral たちに学んでもいる。
系譜を三つに分けて考えてきたが、教える側の実際からすると、その区分はこちらが後から引いた線でしかなかったことになる。学ぶ側には一つの教室に見えていた。そしてその教室には、分かれているはずのものが最初から集まっていた。
もう一つ、二人には共通するところがある。身体を動かすことから入っている。
Paola は1976年に体育の教員資格を取り、1982年に社会学の学位を得て、公立学校の体育教師と水泳のインストラクターをしていた。ロルフィングに向かった出来事も本人が語っている。水泳を教えていたとき、二歳の自閉症で筋緊張の低い女の子を受け持った。腕に抱え、受動的に動かし、歌いかけ、水と身体で遊んでいた。するとその子が水と遊び始め、こちらを見るようになった。
触れることがその子の世界に新しい生気を呼び起こしたことに驚いた、と。認定の順序も、1986年に Rolf Movement、その二年後に Rolfer である。動きの側が先にある。
この日の午前中に行ったのは、パートナーの身体に触れて、感じたことを一つずつ言葉にして画用紙に書き出す作業だった。触れて何かが起きたことに驚いた人が、触れて感じたことを言葉にする場を作っている。四十年前の水のなかの出来事と、この教室でやっていたことは、そう遠くないところにある。





