【R#376】トレーニングの後半がスタート〜Phase 1を振り返って〜AT-2(1)

はじめに

東京・渋谷でロルフィング・セッションを提供している大塚英文です。

今年、10年ぶりに開催されている、東京・市ヶ谷で日本ロルフィング協会主催のアドバンスト(上級)・トレーニング(AT)に参加することを決断(参加の動機については「参加を決意〜アドバンスト・ロルフィング研修・2025年4月〜7月」にまとめた)。

前半(Phase 1)は、2025年4月8日から25日までの火曜日〜金曜日までの12日間。後半(Phase 2)は、2025年6月24日から7月11日までの火曜日〜金曜日までの12日間。合計24日間行われる予定だ。

アドバンスト・トレーニングとは何か?

ATに参加するためには、認定ロルファー(Rolfer)を受けた上で、3年〜7年セッションの提供を行うこと、そして、ロルフィングのインストラクターから継続研修(Continuous Education)を18単位(1単位は1日の研修)を修めることが必要となる。上記の24日間と合わせて42日間のトレーニングを受けて認定を受ける形になる。

ATで、お世話になる講師は、アメリカ人のRay McCallと田畑 浩良さんの2名。

昨日、Phase 2の初日を終えた。この段階でPhase 2臨むにあたって、Phase 1で学んだ内容を振り返ってみたい。

Phase 1で学んだこと

Phase 1は、密度の濃い12日間の学びだった。まずは、何を学んだのか?実技以外に
1)Jeff Maitlandの3つの問いがけ
2)ニュートラルの意識
3)意図と志向性の違い
4)ニュートラルの意識の仕方
5)フレームワーク思考
6)統合とは何か?
の6つを取り上げたい。

Jeff Maitlandの3つの問いがけ

Phase 1が始まったときに一番最初に取り上げたのは、

1)Where do you start?(どのようなアプローチ(考え方)で(セッションを)開始するか)
2)What do you do next?(次に何をするのか?)
3)When are you done?(いつ終わりを判断するか?)

の3つの質問だった。ロルフィングのインストラクターのJeff Maitlandの問いがけで、ロルフィング・セッションを組み立てる際に、
・どのような方法でセッションを開始するのか?
・その結果として次のアプローチするが、どのような判断で行うのか?
・セッションを終わったと実感するのはどうしたらいいのか?
といったもので、Phase 1で外部クライアントや生徒同士で練習する際にも、意識するようにトレーニングが進んでいった(詳細は「Jeff Maitlandの3つの問いかけ、在り方、知覚、自己調整」参照)

ニュートラルの意識〜相手の身体は自己調整することができる

3つの質問はある意味で、セッションに臨む際の在り方(考え方や知覚とも表現)の重要性にもつながっていく。Rayは、その「在り方」の中でも、トレーニング期間中にたびたび強調してい他のが「ニュートラル(Neutral)」の意識だった。

その方法論を最初の3日間、強調していたのだが、
興味深かったのは、
「相手の身体は自己調整すること(Body is self-organizing)ができると信じること」
の意識で臨むことで、成果が変わっていくことだ。

「相手(クライアント)の自己調整する能力がある」と信じる「在り方」が、安心・安全な関係性を築く鍵となりこと。クライアントとの非言語のコミュニケーションや相手の身体で何が起きているのか?聴き取ることへとつながること。

といった準備が必要となる。

その準備をした上で、なぜニュートラルになることが重要なのか?INTENTION(意図)とINTENTIONALITY(志向性)についても説明があった。

意図と志向性の違い

意図とは?

意図(もしくは意念)を使った物事の捉え方とは、自分の中でクリアな状態で「身体で何が起きているのか?」わかっており、「クライアントよりもプラクティショナーの方が賢い」だから「全ては因果関係で説明できる」「変化を説明できる」という立場に立つ。

志向性とは?

一方で「志向性」は、現代哲学者の一人、エトムント・フッサール(Edmund Husserl)が創始した現象学(Phenomenology)の用語として知られている。

現象学によると、私たちの意識は常に何か対象に向けられていることから、「意識」と「対象」には、切り離せない「関係性」(「志向性」と表現)があると考える。

志向性の用語を理解すると、現象学は理解が深まる。というのも、
1)意識(プラクティショナー)は必ず何か(対象、クライアント)についての意識である
2)私たち(プラクティショナー)が物事(クライアント)を知覚する際、その対象(クライアント)に意味を与えている
3)対象(クライアント)は主観的な体験(身体の経験、治療効果)を通じて現れる

ロルフィングとの関係でいうと、クライアントの身体への「志向性」を意識すると、単なる技術的手順を超えた治療効果をもたらす可能性があるのだ。

現象学を理解した上で、志向性を使った物事の捉え方で見ると、「クライアントの身体は自己調整できる」「クライアントの方がプラクティショナーよりも賢い」だから「因果関係で説明することはできない」が「その人に必要な変化」が期待できるという立場に立つ。

詳しくは「意図と志向性の違い〜セッションに臨む2つの「在り方」〜ニュートラルを理解するには?」を参照いただきたい。

ニュートラルをどう意識するか?

ニュートラルと「在り方」〜創発的な変化を促す

では、プラクティショナーが「ニュートラル」を意識できると、何が起きるのか?実は、身体軸が整い、筋肉が適切な張力(tonus)が生まれていく。その上で、田畑さんのワークで学ぶことができたのだが、プラクティショナーとクライアントとの間に適切な距離を取ることで、クライアントの身体が安心感を持つようにつながっていく。

クライアントがプラクティショナーの「在り方」と共鳴(Coherence)できる場が作られ、クライアントが「自己調整」を行うことができることで、プラクティショナーが意識しなくても、クライアントが勝手に変化するのだ。

ニュートラルをどう意識するか〜基礎トレーニングからの学び

身体の変化を追いつつ、どのようにして「ニュートラル」を保っていったらいいのか?Act Locally, Perceive Globally(アプローチは局所的に、知覚は全身で!)ということを意識しつつ、

1)プラクティショナーの背中を意識すること
2)プラクティショナーの中で、「起こす変化」と「自ずと起きる変化」のバランスをとること
3)プラクティショナーの身体軸(LINE)を意識すること
4)丹田に意識を向け、張力を緩める意識をすること

等をトレーニングで練習することができた(「ニュートラルとHARA(肚)〜セッション中にどう中立を保つのか?」参照)

フレームワーク思考でセッションを組み立てる

Phase 1で深まったこととしては、

「一人一人に合わせたセッションを提供するには、どのようにフレームワーク(枠組み)を考えるか?」

ということだった。

具体的には、

  • 観察力(Seeing)を鍛える
  • クライアントのニーズを聴き取り
  • ロルフィングの5原則とTaxonomyの選択

を組み合わせながらセッションをデザインしていくことを学ぶことだった。

ロルフィングには、以下の5つの原理(Principles)がある。

  • WHOLISM(全体性):身体を統一的なシステムとして見る。
  • SUPPORT(支持):安定性と自己支持を促す。
  • ADAPTABILITY(適応性):環境への柔軟な対応力を高める。
  • PALANTONICITY(二方向性):相反する力のバランスを調整する。
  • CLOSURE(完了):プロセスに適切な「終わり」を与える。

クライアントを観察し、今、どの原理が不足しているか?を見極めていき、セッションを設計する。

そしてTaxonomyは分類という意味。どのアプローチが適切なのか?

  • 構造的・セグメント的(骨格・筋膜構造への介入)
  • バイオメカニカル(運動・機能改善)
  • 機能的(動き・パターンを重視)
  • 心理生物学的(感情や神経系との関係性)
  • エネルギー的(情報場やフィールドへの働きかけ)

の中から見つけていく。詳細は「フレームワーク思考で個別セッションをデザインする」を参照ください!

統合とは何か?

ロルフィングは、統合という考え方を大切にする。Phase 1では、統合を促すうえで、以下の3つポイントがあると学んだ。

1. 自己調整力の促進

クライアントの中にある自己調整力を信じ、それをサポートすること。変化を「起こす」存在ではなく、変化が「起こる場」を整えること。

2. 重力との調和

Ida Rolfは、統合とは重力との調和と考える。身体が重力のサポートを受けることで、最小限の努力で立ち、動くことができる状態が生まれていく。

3. 全体性の回復

統合とは、筋骨格系だけでなく、感覚、感情、意識レベルを含めた全体的なつながりを取り戻すプロセスとしてみることができる。特定の部分ではなく、人間存在の全体としての統合を目指す。

まとめ

今回は、Phase 1で学んだことを中心に6つの視点を紹介した。Phase 2の初日を終えた段階で感じたのは、上記の内容を深めていくためにどうしたらいいのか?自分の強みをどう伸ばしてったらいいのか?セッションへのアプローチをどう深めていけるか?等、さまざまなことを学ぶ12日間になりそう。

ぜひ、贅沢な12日間を楽しみつつ、得るものを得て、クライアントさんへ還元していきたい。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka