はじめに
渋谷を拠点にロルフィング®のセッションを行っている大塚英文です。
日々、さまざまな身体に触れながら、「考えること」「感じること」「身体感覚(肚・丹田)」が自然にひとつの判断としてまとまっていく状態を、セッションを通して支えています。

セッションをしていると、よく聞かれる質問がある。
「どういう運動をしたらいいのでしょうか?」
この問いに答えるとき、私はまず「戦略」と「戦術」を分けて考えることをお勧めしている。
3つの戦略的柱:持久力、筋力、安定/姿勢

戦略とは何か?
戦略とは、目指す方向だ。ここでの戦略は明確だ。
健康寿命を伸ばすこと。
年齢を重ねても、自分の足で立ち、歩き、呼吸し、考え、決断できる身体を保つこと。
この戦略を身体機能の観点から整理すると、三つの柱に集約される。
持久力
筋力
安定性・姿勢
この三つが、健康という大きな目標を支える構造となる。
しかし、ここで終わりではない。
身体は単なる機械ではないし、健康とは、数値だけの問題でもない。
そこには常に、
脳(思考)
心(感情)
身体感覚(肚・丹田)
の関係性が存在する。
持久力 ― 回復力という土台
持久力とは、単に長く走れる能力ではない。
それは、生命のエネルギー供給能力を高めることだ。
最大酸素摂取量(VO₂MAX)は、健康寿命と強く関連する。心肺機能が高い人ほど、慢性疾患のリスクが低く、回復も早いからだ。
しかし持久力の本質は、もっと深いところにある。持久力を鍛えるということは、ストレスから回復する力を育てることでもある。
脳の視点で見ると、有酸素運動は前頭前野の働きを高め、ストレス耐性を強化する。
心の視点では、持久力がある身体は、不安や焦燥に振り回されにくい。
身体感覚の視点では、呼吸が深まり、内側に余白が生まれる。
持久力とは、しなやかな生命力として捉えることできる。長く戦う力ではなく、戻る力、レジリエンスと言えるものだ。
筋力 ― 存在の安定感
筋力とは、単に重いものを持てる能力ではない。
それは、重力の中で自分を支える力と言えるものだ。
筋肉量や握力は、転倒予防やフレイル予防と直結します。筋肉は代謝や血糖コントロールにも関わります。
しかし、筋力の意味はそれだけではありません。
しっかりと立てる身体。踏ん張れる脚。握れる手。
これらは無意識のうちに、「自分は支えられている」という感覚をつくる。
脳の視点では、筋力トレーニングは自己効力感を高める。
心の視点では、達成感と安定感を生む。
身体感覚の視点では、肚が据わる感覚を育てる。
筋力は、存在の安定そのものだ。
安定性・姿勢 ― 力を統合する構造
持久力と筋力があっても、構造が崩れていれば力は分散する。
安定性とは、重力の中でどう身体を支えているかという問題だ。
姿勢が整うと、呼吸が変わり、力の伝達効率が上がる。
脳の視点では、姿勢は注意力や集中力に影響する。
心の視点では、姿勢は感情状態と密接に関係する。
身体感覚の視点では、中心軸が通ることで、全身の統合感が生まる。
安定性は、三つの柱をつなぐハブのような存在だ。
3つの戦術的柱:ジム運動、ピラティス、ヨガ
戦術とは何か?
ここまでが戦略だ。
では、戦術とは何か。
戦術とは、戦略を実現するための具体的な手段だ。
ジム、ピラティス、ヨガ。これらはすべて戦術・手段だ。
ジム運動
ジムは、持久力と筋力を効率よく高めるための戦術。
数値を管理し、負荷を設定し、身体機能を強化する。
脳(思考)は設計し、
心(感情)は達成感を得て、
身体は機能的に強くなる。
ジムは、明確で合理的な戦術だ。
ピラティス
ピラティスは、神経系の再教育を通じて安定性を高める戦術です。
動きの精度を上げ、中心軸を整える。
脳は精密に制御し、
心は集中し、
身体は支持の感覚を取り戻す。
ヨガ
ヨガは、本来は瞑想の準備のための運動の一つ。
呼吸とともに動き、思考を鎮め、内側に感受性を向けるようにアーサナ(ポーズ)が組み立てられている。
脳は静まり、
心は受容し、
身体は重力と調和する。
安定性と内的統合を育てる戦術です。
ロルフィング®の位置づけ
ロルフィングは、特定の戦術ではない。。
それは、戦略全体の土台を整えるアプローチの一つだ。
重力の中で身体構造を統合することで、
持久力は発揮しやすくなり、
筋力は効率よく伝わり、
安定性は自然に高まる。
そして何より、
脳(思考)・心(感情)・身体感覚(肚)が分離しなくなる。
健康とは、単なる機能の集合ではない。
それは、脳、心、身体感覚が分離しない状態だ。
まとめ
戦略を明確にする。
三つの柱を理解する。
そこから戦術を選ぶ。
そして、脳・心・身体がひとつにまとまる状態を目指す。
未来の身体は、今日の設計で決まる。
あなたは、戦略から考えていますか。それとも戦術から始めていますか。
そこに、健康の分かれ道があると言える。
