【R#294】「立つ」姿勢が明らかにする「視覚」と「重力」のバランス

はじめに

東京・渋谷でロルフィング・セッションと脳科学から栄養・睡眠・マインドの脳活(脳科学活用)講座を提供している大塚英文です。

私は、2015年6月から、ロルフィングのセッションを提供している。「筋膜」へアプローチすることで、身体の姿勢が整えていく。ロルフィングで見る姿勢は「歩く」「立つ」「座る」の3つだ。

「立つ」際に、重要となるのは、足の立ち位置。個人的には、セッション開始時に、踵重心なのか?つま先重心なのか?を中心に調べ、セッション終了時に、どう変化したかを見ている。今回は、なぜ「立つ」姿勢の「つま先重心」か「踵重心」か、身体の姿勢に重要か?についてまとめたい。

脳と身体とのコミュニケーション〜動きの指示と情報収集

心と身体は繋がっているとよく言われている。要は、脳(神経系)と身体は密接にコミュニケーションをとっているのだ。そして、身体から脳へと伝わる情報と、脳から身体へと伝わる情報はそれぞれ、「情報収集」と「動きの指示」という二つの働きがある

筋肉はこれらの2つの働きを担っていながら、同時進行することができない。力みが発生するのは、「動きの指示」による硬直。「情報収集」に専念させると力みが自ずと取れると考えられており、ロルフィングではこの点をチェックしている。

3つの情報収集の仕組み

身体には、視覚(Visual system)、内耳感覚(Vestibular system)、筋感覚(kinesthetic system)という3つの「情報収集係」があり、これらを活性化することにより、「情報収集」が優位となり、力みが取れると考えてもいい。

情報収集の仕組み1〜筋感覚

筋感覚とは、手、足、頭、顔等(総称して外部感覚器官と呼ぶ)の外部情報を身体内部に伝えることができる感覚のこと。ロルフィングでは、主に手や足の筋肉の感覚のことを調べることが多い。

手や足が情報を受け取りやすい状態(手指、足指が動きやすくなる)になればなるほど、身体が整いやすくなると言われているが、老化とともに、筋肉や関節が衰え、動きにくくなる。このため筋感覚が低下していく。簡単に調べる方法として、鉄棒にぶら下がり、何秒姿勢が維持できるか?(男性は120秒、女性は90秒が理想)で見ることもできる。

ヨガには「スークシュマ・ヴィヤヤーマ」というエクササイズがある。スークシュマ(サンスクリット語:細かい)、ヴィヤヤーマ(同語:運動)の意味。手足の関節を「呼吸と合わせて」「ゆっくり」「丁寧に」「身体を感じながら」と動かすエクササイズの一つ、手足が自由に動けるようになるのだ(例えば、グーパー、踵や足指一つ一つ動かす)。

これは、まさに「筋感覚」を整えるエクササイズで、感覚の意識を高める上で重要となる。実は、自分の身体の感覚が全く意識できていない人に対しては、このようなエクササイズは有効だ。ぜひ、ご興味のある方はチェックくださいね!

情報収集の仕組み2〜内耳感覚

内耳感覚とは、平衡感覚のこと。重力を感じるのは耳の奥にある内耳。脳(神経系)と共同に働き、身体の向いている方向、傾きや動きを感知することができる。片足を上げて、目を開いた状態で30秒、目を閉じた状態で15秒維持できるかどうかで、この感覚を簡単に調べることができる。

情報収集の仕組み3〜視覚

視覚は、目から入ってくる情報の収集。こちらの感覚はわかりやすいが、難点が一つある。ロルフ・ムーブメントのインストラクターの一人、Rita Geirola先生によると、
「人間というのは「見る」ということを教育や経験を通じて学ぶ」
というのだ。

このように、人間にとって、内耳感覚、筋感覚は、生まれながらすでに備わっているが、視覚は、経験・教育を通じて学ぶので、感覚の中でもっとも意識しやすい。そのため、一番優位になりやすいのだ。

足の筋感覚の役割〜視覚と内耳感覚

興味深いのは、視覚と内耳感覚の位置だ。人間は、顔の前に目、顔の後ろに耳がついている。このため、視覚を使うと、重心が前側(つま先側)、内耳感覚を使うと、重心が後ろ側(踵側)に行きがち。このように、視覚と内耳感覚のバランスを整える上で、足の筋感覚が重要な役割を果たしているのだ。

3 system in the posture 2

興味深いことに、目の感覚は、意識しやすいので強まる傾向がある。こちらが強くなると逆に内耳感覚の働きや重力が感じにくくなるのだ。視覚(目)は頭の後頭部に繋がっているため、目の酷使は首こりと肩こりへと結びつく。

私の場合には左目の視野が100で球状だとすると、右目は60で若干後方に偏っているように、ワークを通じてわかった。そして、左目を閉じて、右目のみだとすると胸の詰まり感が出た。脳の右半分外側に、当時組んだパートナーに音を出していただき、内耳感覚を活性化させると、右目の視野が広がっていき、胸の詰まり感が取れたのだ。

ロルフィングは、視覚と内耳感覚のバランスに対して、根本的なところに注力するので、首こりや肩こりが改善しやすいのだ。

まとめ

今回は、なぜ「立つ」姿勢の「つま先重心」か「踵重心」か、身体の姿勢に重要か?について、視覚と内耳感覚、金感覚との関係からまとめさせていただいた。

ぜひご興味のある方、ロルフィングのセッションを受けることをお勧めします(体験セッションも行っています)。少しでも、この投稿が役立つことを願っています。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka