はじめに
東京・渋谷でロルフィング・セッションと脳科学から栄養・睡眠・マインドの脳活(脳科学活用)講座を提供している大塚英文です。
2025年4月8日〜25日の最初の3週間(各週4日間、火曜日〜金曜日、合計12日間)、東京の市ヶ谷で日本ロルフィング協会主催のアドバンスト(上級)・トレーニング(AT)が終わった(講師は、Ray McCallと田畑 浩良さんの2名)。

ATの総括〜ニュートラルについて7回の連載
ATの前半のトレーニングを振り返ってみて、最も学んだことは、セッションの中で「ニュートラル(Neutral)」になるとは何か?だった。
今回、ATを総括する意味で、7回に分けて、以下のタイトルで「ニュートラル」についてまとめたい。
- 1. ニュートラルとは何か
- 2. プレゼンスとは何か
- 3. 制限と可能性の扱い方
- 4. エネルギーワークと身体意識の関係
- 5. Right Action(正しい行い)の実践
- 6. Listening Touch(ニュートラルな触れ方)
- 7. 統合(Integration)とは何か
第1回は、セッション提供の在り方「ニュートラル(neutral)」をどう意識するのか?ロルフィングにおける核心的な概念「ニュートラル」についてまとめたい。
ニュートラルとは何か?
ロルフィングにおける「ニュートラル」とは、単なる「無」や「中立」という意味ではない。あえて、自分の言葉で言語化すると、身体の内側から生まれる安定感と世界への開かれた感受性の、絶妙なバランスにある状態といっていい。
ニュートラルを保つことが、なぜ重要か?それは、ロルフィングのセッションの質を根本から変えていくからだ。
「ニュートラル」にいること、セッションの中で、以下のことを可能にする。
- クライアントの身体が必要とする変化を尊重できる
- 意図(Intention)に囚われすぎず、指向性(Intentionality)を持ちながら導くことができる
- 施術者自身が「触媒(catalyst)」となり、プロセスを支援できる場になる
つまり、ニュートラルは「手放すこと」と「関わること」の適切なバランスの上に成り立つとってもいい。
ニュートラルとは「制限」と「可能性」のバランスである
ここで大切な視点がある。それは、私たちの身体や場には常に、
- limitation(制限)
- possibility(可能性)
が共存しているということ。
ニュートラルとは、制限だけに囚われて身体が萎縮することなく、可能性だけに流されてバラバラになることもなく、制限と可能性の間で最適なバランスを取り続けるダイナミックな状態を指す。
例えば、背後のスペース(back space)に意識を広げながらも、Hara(肚)を中心に据えて、地に足のついた感覚を持つ。この「制限と可能性のバランス感覚」こそが、セッション中、真にニュートラルにいるために不可欠な要素だと言ってもいい。
「ニュートラル」の育て方
「ニュートラル」を育むためのポイントとして、3つ挙げることができる。
1. Shape the Hand(手を成形する)
クライアントに触れる際、自分の「手」で何かを「しよう」とするのではなく、クライアントの身体に「自分の手を形作ってもらう」ことを意識する。手を通じて、身体の情報を受け取り、そこに寄り添う。これが、ニュートラルなタッチの基本となる。
2. Finding Back Space(背後の空間を感じる)
「いま・ここ」に意識が偏りすぎると、身体が縮こまったり、過剰に前のめりになったりする。意図的に背中側のスペース、つまり「後ろの空間」を感じ取ることで、重心が中央に戻り、安定したニュートラルポジションに立つことができる。
3. Hara(肚)に繋がる
身体意識の中心である「肚(Hara)」に意識を向けることもニュートラルを育む鍵。肚は単なる筋肉ではなく、自分自身の「軸」や「存在感」を支える場所。肚にラジオのチューニングを合わせるように意識を向けると、ブレない感覚と相手にも開かれた状態を保てる。
Intention(意図)と Intentionality(志向性)の違いを理解する
ここで重要なのが、「意図(Intention)」と「志向性(Intentionality)」の違い(詳細は「意図と志向性の違い〜セッションに臨む2つの「在り方」〜ニュートラルを理解するには?」参照)。
- 意図(Intention)
→「こうなってほしい」という結果を強く望むこと。
しかし、それは時に施術者自身のエゴや過剰な介入につながる危険性もある。 - 志向性(Intentionality)
→「この方向に向かう可能性もある」と開かれたまま指し示す態度。
結果に執着せず、プロセスに寄り添う姿勢。
ロルフィングでは、明確な意図を持ちつつも、志向性に立脚してセッションを行うことが素mられる。結果、クライアントの自然な自己組織化(Self-organization)が促される。
まとめ
ニュートラルとは、自分にしっかりと軸を持ちながら、世界に開かれている状態
ニュートラルを育むためには、
手を成形する(Shape the hand)、
背後の空間を感じる(Finding back space)、
肚(Hara)に繋がる
ことがニュートラルは、制限(limitation)と可能性(possibility)の絶妙なバランスの上に成り立つ
意図(Intention)に固執せず、志向性(Intentionality)を持つことで、クライアントの自然な変容を支える大切。
ニュートラルであるとは、「何かを起こそう」とする力と、「起きるのを待つ」静けさの、ちょうど良いバランスに身を置くこと。その静けさと力強さが出会うとき、最も深い変化が起こる。
この投稿が皆さんにとって役立つことを願っています。