【R#407】選択肢が多すぎる時代に、何にフォーカスすべきか──進路と意思決定をめぐるひとつの視点

はじめに

渋谷を拠点にロルフィング®のセッションを行っている大塚英文です。

最近、LinkedInで、大学生から「どのような進路を考えればいいのか?」という相談を受けるケースが増えています。

話を聞いていくと、多くの方に共通している感覚があります。 やりたいことが全くないわけではない。むしろ興味のある分野はいくつもある。それにもかかわらず、「何を選べばいいのか分からない」という状態にあるのです。

これは、方向性がないから迷っているのではなく、むしろ選択肢が多すぎることによって生じている迷いであるように思います。

なぜ、いまは「選べない」のか

少し前であれば、進路はある程度限られていました。 しかし現在は、情報も機会も大きく広がり、選択肢そのものが増えています。

さらに、AIの急速な発展によって、「どの仕事が将来残るのか」「何を学ぶことが価値につながるのか」といった前提自体が揺らいでいます。その結果、「正しい選択をしたい」と思えば思うほど、慎重になりすぎてかえって動けなくなる。そうした構造が生まれているように感じます。

知能には二つの側面がある

この状況を考える上で参考になるのが、心理学者の Raymond Cattell が提示した知能の捉え方です。これは Arthur Brooks の著書 From Strength to Strength(邦題「人生後半の戦略書〜限りある時間を後悔なく生きよう」)でも紹介されています。

人の知能には、大きく二つの側面があります。

新しい問題に向き合い、未知の状況の中で答えを見出す瞬発力(流動性知能

これまでの経験や知識を統合し、知恵として意味づけていく力(結晶性知能
です。

受験や学習の場では、どうしても後者の「知識の蓄積」に重きが置かれがちですが、変化の激しい時代の進路選びには、前者の「未知の状況で決める力」が不可欠です。

実際にはこの二つは、相互に作用しながら働いています。

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「分かっているのに動けない」という状態

現場でよく見られるのは、「やるべきことは分かっているのに、行動に移せない」という状態です。不安だけが残り、前に進めない。

しかしこれは、意志の強さの問題というよりも、頭での理解と身体の状態が一致していないことに起因している場合が少なくありません。

考えでは納得しているが、身体は緊張して固まっている。あるいは、感覚として違和感を抱えたまま無理に進もうとしている。緊張で視野が狭くなっているとき、人はクリエイティブな選択ができません。そのような状態では、どれだけ情報を集めても、判断も行動も安定しなくなります。

自身の経験から見えてきたこと

私自身、大学院では明確な答えのない基礎免疫学の研究に携わりました。研究の現場では、問いそのものが定まらないことも多く、常に不確実な状況の中で考え続ける必要がありました。

その後、製薬会社において新薬のローンチや適応拡大に関わり、科学とビジネスの双方の視点から意思決定を行ってきました。さらに現在は、ボディワークの領域で、身体からのアプローチを扱っています。

分野としては一見異なりますが、振り返ってみると共通しているのは、

答えがあらかじめ用意されていない状況の中で、どのように判断し、動くか

という点でした。研究者としての視点と企業での経験の両方を通じて、アカデミアを離れた科学者がどのような選択肢を持ち得るのかについても、具体的にお伝えできることがあります。

これから問われる力

これからの時代において問われるのは、正しい答えをどれだけ知っているかではなく、変化する状況の中で自分自身で判断できるかどうかであるように思います。

そのためには、思考だけでなく、感覚や身体の状態も含めて、全体としてのバランスが保たれていることが重要になります。身体を整えることは、冷静な判断を下すための「OS」をアップデートすることに近いのです。

受験や就職という出来事は、単なる通過点ではありますが、その過程で培われる「どのように考え、どのように決めるか」という力は、その後の人生を支える一生モノの財産になります。

おわりに

進路とは、正しい答えを一度だけ選ぶことではなく、自分で選び続けられる状態をつくることなのかもしれません。

いま問われているのは、「どの組織に属するか」だけではなく、「どのように意思決定できるか」という力そのものです。

現在、受験生や学生に向けたサポートについても少しずつ形にしています。単に合格を目指すだけでなく、身体感覚から「決める力」を養う6ヶ月間のモニタープログラムです。

ご興味のある方は「第一志望、それで本当にいいの?──大学受験を見据えた「身体と進路」のサポートプログラム」をチェックください。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka