Rolf Movement – Part 1(5)〜動きではどこに注目するか:Phoric FunctionとFixed Point

2017年9月1日。Rolf Movementのトレーニングも5日目を迎えた。

昨日と同じように(「身体の気づきを促すために:ゆっくり、丁寧、言語化」参照)、セッション5の復習を兼ねて、体感セッション(Embodiment)から開始した。

事前に、各セッション(今回の場合は4から7)のGeneral Goals(一般的な目的)、Regional Goals(身体の部位の目的)、Structural Goals(身体構造的な目的)、Functional Goals(身体機能的な目的)がプリントで配布された。Pierpaola Volpones先生(以下Paola)の各セッションの考えが、A4用紙1枚に分かりやすくまとまっている。

セッション5と6は、基礎トレーニングにおいて一番分かりにくかった。Phase IIで生徒同士の交換セッションを行う際、先生に助けていただきながら行なったという記憶が残っている。

開業してから2年が過ぎて、経験を積んだ上でのセッション5の復習は、非常に有用だったと思う。セッション4が足裏から骨盤底までの内転側へのアプローチをしていくのに対して、セッション5は胸郭と骨盤との関係を中心に、骨盤帯と肩甲骨帯、腹腔と胸腔内の内臓付近、そして腸腰筋へのアプローチと多岐にわたる。

そのためEmbodimentも複雑になっていく。Rita Geirola先生(以下Rita)のガイドに従ってEmbodimentを約30分間行ったが、座位、歩行、四つん這いなど、ペースはゆっくりだったにもかかわらず、動きは目まぐるしく感じた。

セッション4で行ったRolf Movementの動きの練習は4つだったのに対して、セッション5では2つ。毎回、練習は生徒同士の交換で行うのだが、今回は片方で持ち時間が1時間近くと、フルセッション並みの時間のかけ方で進んでいった。セッション4以降は深層セッションと呼ばれるだけあって、非常に奥深いところまでアプローチしていくので、時間がかかる。

Phoricとは to carry the weight、つまり重さを抱えるという意味である。Rolf Movementの創成期に大きな影響を与えたHubert Godardが使い始めた言葉だ。

身体は重力を感じる以上、重さを抱える。重さは身体全体で感じることができるが、身体が動くようになると、重さに偏りが生じる。例えば歩いているとき、軽く感じる部位と重く感じる部位が生じるように。

このように重さには偏りが生じるのだが、Tonic Functionで書いたように、身体に2つの方向性を持つことによって、身体内に空間(Articulation)が生まれ、動きやすくなる(「動きを通じて何が見えるのか:言葉と方向性」参照)。

2つの方向性とは、

  • 止まっている部位(Something stays=Fixed Point、重さを感じる部位)
  • 自由に動く部位(Something moves=Orientation、重さから比較的自由な部位)

セッション5の動きの練習では、Orientationに応じてFixed Pointがどこかを中心に見ていった。

例えば、

  • 腕(肩甲骨帯)が動いているとき、Fixed Pointは肩甲骨か、胸椎か、骨盤か。
  • 骨盤帯が動いているとき、Fixed Pointは腰椎か、坐骨か、仙骨か、それとも膝か、足裏か。
  • 胸式呼吸をしているとき、Fixed Pointは胸椎か、頚椎か、肩甲骨か。
  • 腹式呼吸をしているとき、Fixed Pointは足裏か、骨盤か、胸椎か、腰椎か。

これらを動きの中で意識すること、あるいはロルファーによってガイドすることによって、余計に入っていた力が解放され、必要な箇所(深層筋)の力を使えるようになる。練習を終えてから、成果として実感できた。

Rolf Movementは、ロルフィングのセッションに代わるものでは決してない。ただ、動きをセッションに取り入れることによって、身体内の意識をより高める上で役立つツールと言ってもいい。

あと2日間。練習や先生からのフィードバックを通じて、手技の精度やセッションの理解度を高めていければと思っている。

2026年8月の注記

この回で初めて出てくる語がある。Phoric Function である。

Phoric は to carry the weight、重さを抱えるという意味だと説明された。身体は重力の中にある以上、重さを抱えている。止まっているあいだは全体で感じられるが、動き始めると偏りが生じる。歩けば、軽くなる部位と重くなる部位ができる。

前の回で受け取った Fixed Point と Orientation は、この偏りの扱い方だったことになる。重さを引き受ける側と、そこから自由になる側。2つに分かれることで、身体の中に空間が生まれる。

Hubert Godard が使い始めた語である。そして Godard の体系には、もう一つ有名な語がある。Tonic Function だ。

2つは別のものを見ている。

Tonic Function は、姿勢を保つ筋肉の働きを扱う。持続的に働く筋肉と、一過性に働く筋肉。動きが起こる前に何が準備されているか。基礎トレーニングのPhase IIで教わり、当時はほとんど理解できなかった。翌年の3月、Gael Rosewood先生から実例で渡されて、ようやく入ってきた。

Phoric Function は、重さの配分を扱う。どこが支えていて、どこが動けるのか。

前者は筋肉の性質、後者は重量の分布である。同じ人の体系の中で、違う角度から身体を見ている。

そして、この2つを結ぶものが空間だった。重さの偏りが2方向に分かれると、身体の中に空間(Articulation)が生まれる。空間があると、Tonic Muscle が働ける。Gael先生が実例で示したのは、腕を上げる前にヒラメ筋が働き、物を掴む前に前鋸筋が働くという話だったが、それが起きるには、そこに余地が要る。

11年経って思うのは、Godardの語彙がなぜ2つに分かれているのかということである。

一つで済みそうに見える。姿勢を保つ働きと、重さの配分は、同じ現象の別の記述にも読める。

ただ、施術する側から見ると違う。Tonic Function は、クライアントの身体の中で何が起きているかの説明である。Phoric Function は、どこを見ればいいかの指示になっている。腕が動いているとき、固定点は肩甲骨か、胸椎か、骨盤か。この問いの形で身体を見ると、観察が具体的になる。

説明の語と、観察の語。同じ体系の中に両方があった。

9年後のアドバンスト・トレーニングでも、同じ構造に出会っている。5つの原理が説明の語で、Taxonomy が観察の語だった。今どの原理が不足しているかを見立て、どの観点から働きかけるかを選ぶ。理論と、それを使うための道具が対になっている。

体系というのは、そういう形をしているのだと思う。何が起きているかを言う言葉だけでは、手は動かない。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka