【R#307】「ナチュラル・リーダーシップの教科書」を読んで〜理論より感覚を大事に

はじめに

東京・渋谷でロルフィング・セッションと脳科学から栄養・睡眠・マインドの脳活(脳科学活用)講座を提供している大塚英文です。

知人の小日向素子さんが「ナチュラル・リーダーシップの教科書」をフェイスブックでシェア。2024年2月6日に発売したのを機に、手に取ってみた。ビジネス書として久々に面白かったので、素子さんとの出会いから、本の感想を含めご紹介させていただきたい。

小日向素子さんとの出会い〜14年前・ブックラウンジにて

私が素子さんと初めて出会ったのは、ツイッターを通じてだった。個人的には、ツイッターを始めたばっかりの時期の2010年頃で、ココロウタ・ブックラウンジを主宰していた。素子さんの取り組みに興味を持ち、アバンギャルド茶会主宰の茶人・近藤俊太郎さんと一緒にラウンジに訪問したのがきっかけだった。

その後、世界一周をした横畠文美さんの講演会や、中沢新一さんの「対称性人類学」の読書会(全8回、2012年9月〜2013年4月、広尾)等でご一緒する機会に恵まれた。しかも、学芸大学駅から徒歩圏内に住んでいた頃、素子さんの実家がすぐそばということもあり、親しくさせていただいた。

幸運なことに、開業当初に、ロルフィングも受けていただいたが、2016年に株式会社COASを設立。欧米各国の馬から学ぶ研修を受講。2017年に札幌の牧場を持ち、移住。馬から学ぶリーダーシップ・プログラムを開催するようになる。

以前より、リーダーシッププログラムには興味を持っていたが、今回の新刊では、エグゼクティブ、リーダー、起業家を含め約2,000名を超える受講者の成果がまとまっており、是非とも手に取らなきゃ!という気持ちで、アマゾンで注文(発売日は、2024年2月7日)し、拝読した。

「理論」よりも「感覚」を大事にすること

私は、2015年6月より、ボディワークの一つ、ロルフィングのセッションを提供している。人間の内側にある身体軸を整えることで、心が変化。骨盤が立つと、決断しやすくなる。背骨が整ってくると、心の声が聞こえやすくなること、等。身体と心は、密接に結びついていることがわかってきた。

素子さんの本には、10年前から札幌の牧場で、日常生活では得られない多くの「気づき」が自然の中に潜んでいることを発見。急激に変化する未来で、求められるスキルの一つとして「感覚」に注目している。なぜならば、現代の社会で求められるのは「どのように感じるか」より「どうすべきか?」の方。思考が優先されているのだ。

ナチュラル・リーダーシップとは?

「感覚」は、人間の内側に注目するということ。個人的には、「行為(action)」よりも、個人の判断軸である「在り方(being)」に働きかけるということだ。

自分の世界に対する見方、在り方が変化すると、行為・行動も変化すると言ってもいい。周囲に対する見方、ビジネスに対する見方、プライベートに対する見方にも影響を及ぼし、自然を感じる中で自分の人生のイニシアティブを取れるようになるのだ。素子さんはそれを「ナチュラル・リーダーシップ」と読んだのだと感じた。

この本のユニークなところは、それを鍛えるための手順が示されていることだ。

その手順として、
ステップ1)個人の内部が変容(lead self)
ステップ2)二者間の関係性が変容(lead relationship)
ステップ3)組織での関係性が変容(lead relationship with others)
があり、それぞれどのような行動を取ればいいのか、まとまっているのが面白い。

本来、動物を含め人間は感覚が先に来て、感情→思考を経て行動へとつながるが、幼い頃から社会に順応する過程で、思考から感覚→感情で、感覚が軽視しがちなのだ。つまり、さっきの理屈で言えば、行動が先で、在り方が後になってしまっているのだ。

感覚をどのように鍛えたらいいのか?

人間の感覚を取り戻す必要性があるのだが、各感覚の存在に改めて目を向けて、敏感に感じ取る。このことで、視覚、聴覚や、内受容感覚などの感覚を取り戻せるとのことだ。この本には、感覚を研ぎ澄ませるためのワークが入っており、興味深かった。いくつか例をあげたい。

視覚を鍛えること

視覚は、目の前の情報しか追わないことが多く(スマホ、PC画面、中心視野)、周辺の視覚情報(周辺視野)をキャッチできていない。周辺視野と中心視野を分けてワークをし、見え方や身体の感覚の違いを感じることで、思考や行動が変化するとのことだ。

内受容感覚を鍛えること

内受容感覚は、五感から情報を受け取る器官があるように、体内にもセンサーがあり、脳にたえず情報を送っている感覚の一つ。この感覚が高まると、身体感覚から得られる情報が増え、行動も劇的に変化する。

以前、「身体感覚を養う理由〜感情、直感、自分を整える意味」に書いたことだが、人体のすごいところは、親しい人と接している時、無意識に、心拍数、呼吸などのリズムが同期することだ。

要は、自分の内受容感覚の感覚を理解していれば(例えば、心拍数、呼吸への意識)、逆境に立った時、相性の悪い人と出会った時、挑戦しているときに、自分の内受容感覚を整える時間を作ると、状況を打破し、乗り越えられる可能性が高まるのだ。

アタマとオナカのそれぞれどのような身体感覚を感じられるのか?のワークや全身をスキャンするボディスキャンが有用とのこと。個人的には、ヨガでヨガ・ニードラというボディスキャンを実践することがあるが、内受容感覚を鍛えるのに有用であるという実感がある。

その他の感覚について

最後に、視覚、聴覚、内受容感覚を鍛えるために、二人1組になって行うワークがある。「馬役」「人役」と分けて、10メートル離れる。馬に成り切る人はそのままで、馬が止まっている時に、人役は徐々に近づく。馬役が思わず一歩下がってしまう距離に近づいたら、終了する。

このワークは、人と人との境界・距離感を知るワークとして紹介されているが、ロルフィングでは、左右、正面で二人1組になって、どの角度が一番身体に緊張が出るのか?苦手な空間はどこにあるのか?という目線で見る。

いずれにせよ、これらの感覚を磨くことで、ビジネスのパフォーマンスに大きな影響を及ぼすとは驚き。素子さんのワークをリスペクトするのと同時に、私自身ももう少し「感覚」や「知覚」について色々と探究しようと改めて感じた。

まとめ

今回は、素子さんが「ナチュラル・リーダーシップの教科書」を中心に、その内容、興味深い箇所についてまとめさせていただいた。

少しでもこの投稿が役立つことを願っています。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka