【R#338】クロージングは統合する上でなぜ大事か?〜AT-1(11)〜

はじめに

東京・渋谷でロルフィング・セッションと脳科学から栄養・睡眠・マインドの脳活(脳科学活用)講座を提供している大塚英文です。

先々週(2025年4月8日〜)から、東京の市ヶ谷で日本ロルフィング協会主催のアドバンスト(上級)・トレーニング(AT)に参加している(講師は、Ray McCallと田畑 浩良さんの2名)。後1日で、前半の内容が終わることになる。

前回は、ロルフィングの特徴の一つである「統合(Integration)」についてまとめた。

ATで、セッションの「クロージング(Closing)」が統合においてどれほど重要かを再認識した。​ATでの学びをもとに、クロージングの役割とその実践について情報を共有したい。​

クロージングとは何か?

Ray McCall氏は、クロージングの重要性について次のように述べている。​

「One of the reasons closures are important is because it allows what is next to happen.」

「クロージングが重要な理由のひとつは、それが「次に起こること」を可能にするからです。」

クロージングとは、セッションの経験を身体的に「収め」、感覚的に「消化」し、統合的に「意味づける」プロセス。​クライアントがセッションの効果を持続的に感じ、次の変化へと自然に移行できるようにするための重要なステップとして捉えることができる。​

クロージングの2形態〜協奏的・有機的

ATでは、クロージングには「協奏的(Orchestrated)」と「有機的(Organic)」の2種類があると説明している。​

  • 協奏的クロージング:​意図的に設計・演出されるクロージングで、オーケストラの演奏が指揮者の合図で終わるようなものです。​
  • 有機的クロージング:​自然に発生する終了プロセスで、桜が咲いて散るような自然の摂理に基づくものです。​

いずれも、クライアントがセッション後に自己調整を続け、身体が変化し続けるための基盤を提供する。​

システムの安定化〜静的安定と動的安定

クロージングは、クライアントのシステムを安定化(stability)させる役割も果たす。​安定には「静的安定(Static Stability)」と「動的安定(Dynamic Stability)」の2種類がある。​

  • 静的安定:​変化の可能性が低い状態。例えるなら、谷底にビー玉が置かれて動けない状態です。​
  • 動的安定:​変化・応答する可能性を持った状態。例えるなら、山の頂点にビー玉が置かれ、左右のどちらの方向へも動く可能性がある状態です。​

理想的なクロージングは、クライアントが動的安定の状態でセッションを終え、自己調整を続けられるようにすることだ。

コアとスリーブの関係性

Rayは、統合の主要な特徴のひとつを以下のように表現している。​

「One of the primary hallmarks of integration is for the inside the core to respond out into the world, not limited by the sleeve, and to receive information from the outside to the sleeve informing the core without disturbing it.」

「統合の主要な特徴のひとつは、コア(core)の内側がスリーブ(sleeve)に制限されることなく、外の世界へと反応できること、そして外部からの情報が、スリーブを通じてコアに伝えられるときに、コアを乱すことなく受け取られることにある。」

これは、クロージングがクライアントの内的な安定性を保ちつつ、外部からの情報に柔軟に対応できる状態を促進することを示しています。​

クロージングを効果的なものにするには?

セッションのクロージングを効果的に行うために、以下のことを意識すると良いのではないかと思う。

  • クライアントの状態を観察:​セッションの終盤でクライアントがどのような状態にあるかを丁寧に観察。必要に応じて協奏的または有機的なクロージングを選択する。​
  • 動的安定を目指す:​クライアントがセッション後も自己調整を続けられるよう、動的安定の状態でセッションを終えることを理想として、クロージングを進めていく。
  • コアとスリーブのバランスを考慮:​クライアントのコアとスリーブの関係性を意識し、外部からの情報に柔軟に対応できる状態を促進すること。

まとめ

クロージングは、セッションの単なる終わりではなく、クライアントが自己調整を続け、次の変化へと自然に移行するための重要なプロセス。​協奏的と有機的なクロージングを適切に使い分け、クライアントの動的安定を促進することで、深い統合を実現できることが期待できる。​

少しでもこの投稿が役立つことを願っています。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka