【R#343】「制限」と「可能性」のバランスで物事を見る〜AT Phase 1の総括③〜AT-1(16)〜

はじめに

東京・渋谷でロルフィング・セッションと脳科学から栄養・睡眠・マインドの脳活(脳科学活用)講座を提供している大塚英文です。

2025年4月8日〜25日の最初の3週間(各週4日間、火曜日〜金曜日、合計12日間)、東京の市ヶ谷で日本ロルフィング協会主催のアドバンスト(上級)・トレーニング(AT)が終わった(講師は、Ray McCallと田畑 浩良さんの2名)。

ATの総括〜ニュートラルについて7回の連載

ATの前半のトレーニングを振り返ってみて、最も学んだことは、セッションの中で「ニュートラル(Neutral)」になるとは何か?だった。

今回、ATを総括する意味で、7回に分けて、以下のタイトルで「ニュートラル」についてまとめたい。

前回は「プレゼンス」、今回はそこからさらに一歩進めて、ロルフィングのセッションを行っていく上で欠かせない視点、
「LIMITATION(制限)」と「POSSIBLITY(可能性)」
についてまとめたい。

制限と可能性は、対立するものではない

私たちの身体や、セッションで出会う現象は、常に「制限」と「可能性」の間に存在しています。

  • LIMITATION(制限)= 現在の身体が持つ境界線や制約
  • POSSIBLITY(可能性)= そこから開かれうる未来の展開

制限は悪いものではない。それは身体が今この瞬間に最善を尽くしている証であり、そこにはまだ発展しうる可能性が秘められている。

制限と可能性は、対立するものではなく、常に一対で存在している
──この理解が、ロルフィングのセッションを深める鍵となる。

制限だけを見れば、可能性を狭める

制限だけに目を向けると「ここがダメだ」「ここを直さなければ」という視点に陥りがち。
これはセッションを「症状」をよくする=「治療する」という視点にしてしまい、
クライアント自身の本来的な自己調整の力を妨げる。

逆に、可能性だけを見れば、現実感を失い、空回りするリスクも生じる。

したがって必要なのは、「制限」と「可能性」を同時に見つめる眼差しになる。

セッションで制限と可能性をどう扱うか?

具体的には、次のように進めていく。

制限を尊重する

クライアントの筋膜や身体の動き、呼吸に表れている制限を、「問題」としてではなく、現時点での最善の選択として尊重します。無理はしない。そこに「在ること」を認める。

可能性にチューニングを合わせる

その上で、制限の「向こう側」にほのかに感じられる、動きたがっている方向、開かれようとしているスペースに耳を傾ける。可能性は、しばしば非常に繊細で静かなサインとして現れる。

最小限の介入で「場」を支える

制限を尊重し、可能性に気づいたら、その可能性が自然に展開するために、ほんの小さなサポートを行います。

  • 手をわずかに開く
  • 圧をわずかに減らす
  • 背後のスペースを感じることで、相手にもスペースを与える

こうした微細な関わりが、制限と可能性のダイナミックなバランスを活かすセッションを生み出すことになる。ソースポイントせラピー、イールドワーク、クラニオ・セイクラルワークは全てこのようなアプローチを取る。

制限と可能性のバランスを動的に扱う

ここで大切なのは、制限と可能性のバランスは「固定されたもの」ではない、ということ。

状況によっては、

  • 制限にじっと寄り添うことが最善なときもあれば、
  • 可能性にそっと背中を押すことが必要なときもある。

プラクティショナーは、この「瞬間瞬間のバランス」を感じ取り「ニュートラル」と「プレゼンス」を持って対応していくことが求められるのでしょう。

制限に押しつぶされず、可能性に飲み込まれず、その間を絶えず航行すること。

それこそが、ロルフィングのセッションにおける深い「芸術性(ART)」になる。

まとめ

制限と可能性は、常に一対で存在する。制限を「問題」と見なすのではなく、尊重することから始める。可能性を繊細に感じ取り、最小限のサポートで場を支える。状況に応じて、動的にバランスを取り続けることが鍵。制限と可能性の間を航行する。

それは、プラクティショナー自身もまた、成長と探求のプロセスに生きることを意味するのではないかと思う。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka