【R#385】ロルフィングとは何か?──ポジショナルストラテジーから考える身体の統合〜AT-2(10)

はじめに

こんにちは。渋谷でロルフィング・セッションを提供している大塚英文です。

現在、アドバンスト・ロルフィングのトレーニング(以下AT)の残り2日間を迎えた。あっという間に感じている。生徒同士、クライアントのセッションのない、2025年7月8日(月)には、ロルフィングの本質とポジショナルストラテジーの意味について、非常に示唆深い内容を取り上げた。

今回は、その学びをふまえて、改めて「ロルフィングとは何か?」という問いに立ち返りながら、「ポジショナルストラテジー」の役割と、その背景にある意図についてまとめてみたいと思う。

ロルフィングとは、システム全体を“整える”アプローチ

ロルフィングは、「筋膜へアプローチ」するボディワーク(手技を使ったワーク)の一つとして知られることが多いが、その本質はもっと深いところにある。

田畑浩良先生とRay McCall先生が語ったの言葉を紹介したい。

“The real purpose of Rolfing is to support the client’s body or system so that it helps them to be on their path — a process that facilitates them being who they truly are.”

ロルフィングの本当の目的は、その人が“進むべき道”に乗れるように、身体やシステムをサポートすること。その人が“自分らしくある”ことを促すプロセスなのです。」

ロルフィングは単なる“症状の改善”を目指すのではなく、身体というシステム全体が重力との関係の中で調和し、その人本来の表現が可能になることを意図している。

この考え方は「クライアント・オリエンテッド」とは異なる「システム・オリエンテッド」な発想の一つ。エゴや論理的理解に合わせて満足感を与えることよりも、身体全体の知性(ボディ・インテリジェンス)を信じて、調和を図ることを重視するアプローチと言える。

ポジショナルストラテジーとは何か?

テーブル(施術ベッド)ワークを行う際、ロルフィングでは「ポジショナルストラテジー」、すなわちどのような「姿勢」や「形」でクライアントさんがテーブルに乗るのか?が重要になる。

要は、

“The importance of positional strategy is: don’t just put someone on the table and hope for the best. Know what you are trying to accomplish, and make sure the position supports that.”

「ポジショナルストラテジーの重要性は、ただクライアントをテーブルに寝かせて“うまくいく”ことを願うのではなく、“何を達成したいのか”を明確にし、その目的をサポートするポジションになっているかを確認することです。」

の言葉が象徴するように、何を達成したいのか?目的を考えることだ。

説明の中では、「Modified Zポジション」や「かかとのドロップ」など、セッションごとの具体的な配置が紹介されたが、どれも重要なのは、

  • なぜこのポジションが必要なのか?
  • このポジションは、目的を本当にサポートしているのか?

という目的意識(Intention)と選択の一貫性だ。

なぜアドバンス・シリーズで「ポジション」が重要なのか?

ロルフィングの10シリーズに比べて、アドバンス・シリーズではより個別性統合性が求められる。

そのためには、「今このクライアントの身体で、どのような流れをつくるのか?」「どこを自由にし、どこをサポートするのか?」といった明確な目的設定が不可欠となる。

まずは、ロルフィングの10回シリーズを3〜5年間、徹底的に身体に落とし込むまで実践していくことが重要となるが、その上でATの学びを深めていくことで、自分が提供していくセッションの「意図」が明確になる。その延長上に、ポジショナルストラテジーは極めて実践的なツールになっていく。

例えば:

  • セッション2:かかとを“後方にドロップ”させるポジションを用い、ドクター・ロルフが強調した「長いカルキアス(踵骨)」を取り戻す
  • セッション3:自然な関節角度=30度を意識することで、身体が最小限の負担で深層筋へアクセスできるよう調整する
  • Modified Zポジション:内転筋コンパートメントとSOAS(大腰筋)付着部との連結を意識し、ポスト10シリーズの統合を支援する

すべてのポジションには「身体の意図」を引き出す意味があり、それは単なるテクニックではなく、身体との対話であり、関係性の構築と言っていい。

まとめ〜ポジションは「意識」の延長線上にある

私自身、ロルフィングを始めたばかりの頃は、どうしても「何をするか?」「どこを触るか?」に意識が向いていました。しかしアドバンスト・トレーニングを通して今感じているのは、

「どんな状態で、そこに“いる”のか?」

こそが、セッションの質を決めるということだ。

セッションにおけるポジションとは、「今ここに在る」というセラピストの意識の表れでもあります。それがクライアントの身体の“感じ方”や“呼吸の質”にそのまま影響する。

だからこそ、「このポジションは、いまの意図に沿っているか?」という問いを持ち続けることが、何より大切だと感じている。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka