【R#391】「力を抜く」ということ②──空間を感じるということ──「力が抜ける身体」の次のステップ

はじめに

こんにちは。渋谷でロルフィング・セッションを提供している大塚英文です。

前回のブログでは、「力を抜く」というテーマを通して、
身体が“支えに委ねる”ことで自然にゆるんでいく仕組みについてお話ししました。

今回はその続きをテーマに、
「空間(スペース)を感じること」がどのように身体の変化をもたらすのかを考えてみたいと思います。
力が抜けるとは、単にゆるむことではなく、身体の中に空間が生まれること

ロルフィングの大切な原理のひとつです。

力が抜けると、空間が生まれる

「力を抜く」と聞くと、筋肉をゆるめることに意識が向きがちです。けれども実際には、力が抜けたとき、身体の中ではもう一つの現象が起きています。

それが、「空間(スペース)が広がる」という変化です。

筋肉が過剰に緊張していると、関節の周囲や内臓のまわりには“詰まり”が生まれます。その詰まりが、呼吸や動きの制限となり、身体の自由を奪っていきます。

反対に、余分な緊張がほどけると、関節や骨のあいだに“間”ができる。その“間”こそが、身体に流れを生み出す空間です。

「関節は空間である」──アーティキュレーションの考え方

ロルフィングでは、関節(joint)という言葉の代わりに「アーティキュレーション(articulation)」という言葉を使うことがあります。

この言葉には、「つなぐ」だけでなく、「間」「スペース」「滑らかな動き」という意味が含まれています。

私たちはつい、“関節=骨と骨をつなぐ場所”と理解しがちですが、実際には“関節=骨と骨のあいだの空間”なのです。

その空間にゆとりがあれば、骨は自由に動き、筋肉は無理なく連動します。逆にその空間が失われると、動きは硬くなり、力を抜こうとしても抜けなくなってしまう。

つまり、力を抜くとは、身体の中に「間」を取り戻すことでもあるのです。

空間が呼吸を変える

ロルフィングのセッションを受けた方がよく口にする言葉があります。「呼吸が広がった」「胸の奥に空気が入るようになった」──。

これは、筋膜や関節に“空間”が生まれた結果です。胸郭や横隔膜、骨盤底といった呼吸を支える構造が、ゆるみながらも安定した「支え」を取り戻すと、呼吸は努力ではなく自然のリズムとして戻ってくるのです。

呼吸とは、空気の出入り以上に、“空間の出入り”でもあります。吸うときは広がり、吐くときは集まる。この「拡がり」と「収束」のリズムが、生命の根本的な動きといえます。

空間は動きを導く

空間が感じられると、動きの質も変わります。

たとえば腕を上げるとき、肩に力を入れて動かすのではなく、鎖骨や肋骨の周囲に“空間”を感じてみる。すると、筋肉が必要以上に頑張らず、動きが軽くなるのを感じるでしょう。

身体はもともと、空間の中でバランスをとるように設計されているのです。関節のゆとり、筋膜の滑り、骨格の立体的な配置──それらが調和すると、動きは滑らかに、呼吸は深くなります。

ロルフィングの初期セッション(第1〜3回)は、まさにこの“空間を取り戻す”ために設計されています。身体の表層に働きかけ、呼吸・脚・骨盤などの動きを解放していくのです。

空間と心の関係

興味深いことに、「空間がある」という感覚は、心の状態にも深く関係しています。

私たちは緊張しているとき、身体だけでなく“心の中のスペース”も狭くなっています。思考が詰まり、呼吸が浅くなり、余裕を失っていく。

逆に、身体にスペースが生まれると、心にも“余白”が戻ります。物理的な空間と心理的な空間は、実は同じリズムでつながっているのです。

身体が広がると、視野も広がり、思考も柔らかくなる。ロルフィングでは、身体のスペースを通して心のスペースを整えることも大切にしています。

まとめ──力が抜けるとは、空間が生まれること

「力が抜ける」という現象をもう一度整理してみましょう。

  • 筋肉の余分な緊張がゆるむと、関節や筋膜に“間”が生まれる
  • その“間”が、呼吸と動きの自由を取り戻す
  • 空間が広がると、身体の安定と心の余裕が生まれる

ロルフィングは、単に筋肉をほぐす手技ではありません。身体の中に「空間」という秩序を再構築し、重力と調和して生きる“構造的な自由”を取り戻すプロセスです。

次回予告

次回は、さらに一歩進んで、
「重力との関係」に焦点を当てます。
空間を感じることが、どのように重力と結びつき、
「抜いても崩れない身体」を支えていくのか──
ロルフィングの核心に迫っていきます。


ご希望があれば、
この第2回をもとにFacebook紹介文(200字程度)やInstagramスライド構成(空間=間=余白)も作成できます。
どちらを次に仕上げましょうか?

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka