セッション4、5、6は、骨盤の上(大腰筋、仙骨や背骨)、下 (骨盤底や内転筋)を通じて(4は内転筋〜骨盤底付近、5は大腰筋や横隔膜、6は、背骨と仙骨)、中央軸を調えていく。
セッション5は、セッション4に引きづつき、中央軸を意識する。セッション4との違いは、主に身体の前側の施術を行い、上半身を調えること。セッション6では、身体の後側の施術を行い、下半身を調える。
セッション5では、上半身の中央軸で鍵となるのが大腰筋。
大腰筋は大腿骨から背骨(胸椎から腰椎)まで繋がっている筋肉。股関節の屈曲、伸展の動作に関わり、太ももを上げる動作や骨盤の前傾にも関わっている。大腰筋が弱っていると、歩きや走りへの影響が大きくなる。太ももを上げる歩行では、大腰筋が使われなくなり、腿の筋肉やふくろはぎの筋肉が酷使され、疲れやすくなる。そして、つまずきやすくなる。そこで、大腰筋を使うことで、これらの筋肉に負担が減り、楽に歩けるようになる。そのため、歩きの動きをみるロルフィングでは非常に重要な筋肉の一つであるといえる。そして、この筋肉は、身体の前後、左右、内外のバランスを司っている。
興味深いのは、アイダ・ロルフは、腹筋(腹直筋(rectus abdominis)、下記の写真参照)と大腰筋のバランスが重要であると指摘している点である。腹筋を鍛えすぎると身体が引っ張られ、猫背になることや、腰痛になること、そして大腰筋が働きにくくなることだ。興味深い発見として、私はヨガの練習で腹筋を意識して力を入れることが多い。その結果として、大腰筋の動きやすさ(自由さ)を失っている可能性があることをロルフィングのセッションを通じて知ることができた。
大腰筋は構造上、足と脊椎を結ぶ筋肉であるため、中央軸に重大な影響を及ぼす。大腰筋は深層筋の一つであるため、その周辺の筋膜の緊張を解きながらアプローチしていく。一つの注目の場所として、Peritonium(例えば腰方形筋(quadratus lumborium)、腹筋(腹直筋や腹横筋等)も扱う。
また、大腰筋は背骨とつながっている。上半身の前面と中央軸を調えることを考えると、大腰筋と首回りや鎖骨近辺へのつながりも意識することが大切。そのため、腹膜(peritoneum)や胸膜(Pleura)の筋膜を緩める必要がある。
腹膜に関わる筋肉として腰方形筋(quadratus lumborium)、腹筋(腹直筋や腹横筋等)が挙げられ、如何にこれらの筋肉に可動性を持たすかがポイントとなる。
最後に、胸膜、特に胸骨・鎖骨の内部、特に横隔膜にはらたきかける。大腰筋と上半身が中央軸でつながり、空間が広がり呼吸を深めることが可能となる。
セッション5の目的(goal)をより明確にすると、以下のようになる。
- 骨盤周りの中心軸を調える:腰方形筋、12番目の肋骨と大腰筋(小腰筋、腸骨筋も含む)を調える。
- 上半身の中心軸を調える(前面):鎖骨・胸骨近辺、横隔膜、(必要に応じて大腿筋等)。
身体の観察(body reading)はセッション4とほぼ同じであるが、身体を前から見たとき(解剖用語では前額面)に左右に偏りがあるかどうか?細長い筒が左右にあるというイメージを使ってその偏りをみていく。また骨盤の前傾、後傾や胴体の腹付近でどうなっているのかも観察する。自分自身への観察の結果は
- 胸が上下(上は首、下は腹直筋)圧迫を受けている(セッション4と同じ)
- 胴体と足の左右差がある(セッション4と同じ)
- 胸椎の後湾症(Kyphosis)が認められる(セッション4と同じ)
- 中央軸を意識すると、上半身と下半身がバラバラになっている(特に肋骨と腹付近が意識が希薄)
- 腹筋に力が入っているため、胸への圧迫を強くする
が挙げられた(下記の写真はセッション4からの課題)。
大切なのは、前回述べたように胸への圧迫。おそらく、それは腹付近の緊張も挙げられると思う。今回のセッションでは腹筋の周りや大腰筋への施術を通じて、主に腹直筋の緊張、そして大腰筋の緊張を抜くというのが目的となる。
そこで、今回の施術は仰向けになり、鎖骨や胸骨近辺、横隔膜などの上半身への働きがけを行いつつ、骨盤、下半身の筋肉(大腿筋、腸脛靭帯やハムストリングス)と腰近辺(腰方形筋)や腹周り(腹直筋や腹横筋等)の緊張を解いていった。最終的に大腰筋へ働きかける施術でしめた。あまりにも気持ちがいい施術であったために眠気に負けて気を失う場面もあった。
セッション4でも取り上げたが、私の歩きの特徴は、大腰筋に力が入ること。そこに繋がる直腹筋が上向きに引っ張られ、かつ胸式呼吸よりも腹式呼吸優位のため、首・鎖骨からの引っ張りで、胸が圧迫された状態となる。そのため胸椎が長く腰椎が短くなるので背中が丸まった状態になる。
今回も、最後に歩いているときに、大腰筋、鎖骨から胸、首付近の動きの余計な緊張を解くことに時間を割いた。セッション6を受けてわかったことだが、仙骨の筋膜や筋肉付近に緊張があるために大腰筋の緊張が抜けないことがわかった。 この詳細についてはセッション6で触れる。