SE初級・前半(1)〜興味を持った理由・ロルフィングのトレーニング、トラウマ体験やアレルギー症状について

はじめに

今年(2021年)より、新しい取り組みとして、ソマティック・エクスピリエンス(SE)の学び(3年間)が始まった。2021年2月26日(金)にSEのトレーニング初日を迎えたので、今回はSEについて紹介したい。

その前に、SEになぜ興味を持ったのか、6年前の出来事からお話ししたい。

ロルフィングのトレーニングで出会った本

製薬会社でやり尽くした感があったので、1年仕事を休んで世界一周へ(2014年7月〜2015年6月)。その間、ロルフィング基礎トレーニングをドイツ・ミュンヘンで受けた(2014年8月〜2015年3月)。詳しくは「ヨーロッパのロルファーとしての認定までの歩みについて〜ヨーロッパ・ロルフィング協会・認定トレーニング」に書いた。

ロルフィング・セッションは10回からなり、各回、違った手順で行う。毎回、筋膜にアプローチし、クライアントが「楽な姿勢」=「負担のない姿勢」を無理なく、自然に取り戻すお手伝いをさせていただいている。

ここでの「負担のない姿勢」とは、必ずしも「正しい」姿勢というわけではなく、自分たち一人一人で見つけていくものだ。本来、自分でどの状態だったら身体が楽なのかわかっているのだが、人生経験によるストレス等によって、本来の場所がわからなくなっている。ロルフィング・セッションを通じて、本来の場所を一緒に見つけていくことにポイントがある。

10回の手順を覚えるために700時間近いトレーニングを行うが、カリキュラムの中には、身体を知るために身体の知識を学ぶ機会が多くなる。一方で、身体へアプローチすることで、結果的に「心」にも影響を与えることもある。

面白いのは、ロルフィングは「心」を扱わない点だ。「実体のないもの」=「心」にフォーカスするのではなく、「実体のあるもの」=「身体」を扱うことで、最終的に「心」にアプローチできると考えているからだ。

そうはいうものの、ロルフィングのトレーニングで全く「心」を扱わないかといえば、嘘になる。深層のセッションに入っていくと、ちょっとした深層の変化によって、その人の知られたくないことや、押さえつけられた感情が湧き出てくることがあるからだ。そのため、深層セッションに入っていくと、トレーニングでは、心理的にどのように考えたらいいのか、基礎的な考え方も取り上げられる。

ロルフィングのトレーニングを受けるときに、課題図書のリストが配布され、その中に、ロルファーでありSEの創始者であるPeter Levineの『Waking the Tiger – Healing Trauma』の紹介があった。その本で紹介されている考え方もトレーニングで取り上げられた。

動物は、なぜトラウマにならないのか

その本によると、動物は敵に遭遇するときに、闘う(Fight)または逃走(Flight)の2つの手段を取るが、その2つを取ることができない場合に、凍りつく(Freeze)という第三の手段の方法をとることが知られている。面白いのは、動物はエネルギーを放出させる方法を持っているので、トラウマにならないことだ。

ここで「トラウマ」の意味は、心的外傷によって長い間それに囚われた状態、または心理的に否定的な影響を持っている状態を指す。

普通、トラウマは「それが何によって引き起こされたか」を探ることに焦点を当てがちだ。Levineがユニークなのは、原因となる事件が問題ではなく、その結果として起きた身体内のショックのエネルギーが中途半端な形で身体内に残ってしまうことで引き起こされるのだと考えた点である。

そして、動物と似たように、エネルギーを全て放出するといったプロセスを経ることで初めてトラウマが完治することを、実際に何例かの患者を治療することを通じて示してきた。

Levineが強調しているのは、トラウマの解決は、その人の身体内で感じる身体感覚を呼び起こし、その観点を大事にするということだ。

参考に、SEのソマティックは身体を意味し、エクスピリエンスは経験という意味だ。

ロルフィングの深層セッションに入ると、未解決のトラウマが潜んでいることを考慮に入れながら、ニュートラル=中庸でクライアントに向き合う。その際、上記の考えが念頭にあると、動じることなく、セッションに臨むことができる。

なぜ、いま学ぶことにしたのか

実は、ロルファーとして認定された当初、正直なところ「トラウマ」について全く興味がなかった。姿勢が整っていくことで心が変わっていくので、そこに魅了されたからだ。そのため、セッションを提供してから5年近くは、夢中になってセッションを提供してきた。

転機になったのは、2020年に久々にアトピー性皮膚炎が発症し、その対処に追われるようになったことだ。症状がおさまったのは、その年の秋のことだった。

考えてみれば、アトピー性皮膚炎の発症は、大学院博士課程の時に、教授からのアカデミック・ハラスメントを受け、そのプレッシャーに耐えきれずに、徐々に発症したものだ。

それって、まさに「トラウマ」じゃない?

と、今まで蓋を閉めていたものがパッと開かれていったのが、昨年(2020年)だった。

このような背景があったので、ボディワークから自律神経へアプローチしていく方法としてSEを学び、自律神経を整えることを学べば、何か変わるのではないかという想いが強くなってきた。

トレーニングが始まった

タイミングよく、ロルファーのメーリングリストからSE Japanの幕張トレーニングIIのお知らせをいただき、2021年2月26日(金)から始まるトレーニングに応募した。無事書類も受理され、めでたく、トレーニングの初日を迎えた。

前半6日間、後半6日間の合計12日間を3年、合計36日間で全カリキュラムが終わる予定で、米国在住のAriel Girrettoさんから学ぶ予定だ。コロナ禍の影響もあり、最初の年はZOOMでの開催となる。

まとめ

トレーニングの内容については、SEの規約上、ブログに書くことができないが、SEに興味を持っている人もいるかと思うので、さわりの部分を紹介できればと思う。

2026年9月の注記

この記事では、SEに興味を持った理由を書いている。ロルフィングのトレーニングでPeter Levineの本が課題図書として紹介され、そこで扱われた考え方が入口になった、と。

いま振り返ると、入口はもう一つあった。

2015年のPhase IIIで、Pedro Pradoによる「Psychobiological Goals」という資料が配られている。10回シリーズの各回について、身体の側ではなく、心理と関係の側で何が起きうるかを記したものだ。

第4回の項には、その回で触れる場所が、多くの人にとって意識されておらず、触れられ慣れてもいない部位であること、そこへの接触がときにトラウマの履歴を呼び起こすことが書かれている。だから自律神経系の発火が起こりうるので、タッチのタイミングを変える必要が出てくる。少しずつ進めること、境界の問題が出てくるので安全な設定と器を保つことが強く勧められている。

第5回にも、呼吸へのタッチと腹部への直接のタッチには、少しずつ進めることと、自律神経系の発火のペースを追うことが必要だと書かれている。第7回にも同じ注意があり、そこでは安全な器が極めて重要だ、と念を押されている。

少しずつ進めること、自律神経系の発火を追うこと、安全な器。SEで学ぶことになる語彙が、そのまま入っている。

一部は当時も読んだ。ただ、何を言っているのかは分かっていなかった。読んだことと、受け取れたことは別だった。

本文には、認定された当初はトラウマについて全く興味がなかった、と書いている。それは正確だと思う。ただ、興味がなかったから素通りしたのではなく、素通りするしかなかった。自分の身に起きたことが、その言葉と結びつくまで、時間がかかった。

似たことが他にもあった。2014年のPhase Iで、身体図式と身体像の区別を扱ったGallagherとColeの論文が配られている。あれも当時は読まなかった。

渡された時期と、受け取れた時期は、たいてい一致しない。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka