ロルフィングのトレーニングの開始当初。自律神経系について考えさせられる体験をした。一番最初のクライアント・セッションの際、セッションが終わる直前になって「自律神経系が解放される」(英語では、Arousal(目覚めさせる)ともDischarge(解放)という言葉が使われる)という経験をした。
身体を調える過程、特にセッション4〜7の深層のセッションに入ると起きやすいこととして知られている(深層セッションについては「深層(コア)セッション」参照)。Phase IIのトレーニング中でGiovanni先生から説明があったが、実際にPhase IIの生徒同士のセッション中に涙や、自分の中で今まで押さえ込んでいた感情が出てくることで現れることがあり、実体験として感じることができた。
今回のPhase IIIトレーニング中に体験したケースでは、テーブルでのセッション(初回のセッション1)が終わり、起き上がった直後に身体の大きな変化についていけなくなり、冷や汗やめまいなどの自律神経系の症状が現れた。先生に助けを求め、落ち着いて対処することで、最終的に起き上がることができて、解決した。そして、その後も継続してセッションに訪れている。
「自律神経系が解放される」というのは様々な症状として現れる。例えば、呼吸が浅くなる、冷静さを失う、胸のみに動きが認められる(腹に動きが見られない)、背筋の姿勢が崩れる、涙を流す、皮膚が蒼白になる等。
Phase IIIのトレーニング中、5人がテーブルに横になり、残りの5人が時計回りにそれぞれのテーブルへ向かい、仙骨に手を当てて上半身でどのような変化が起きているのか?観察するというワークを行った。合計で3人が1人に対して仙骨に手を当て、それぞれの手の当て方によりどのように違った感じ方をするのか?を体感することができた。
驚くべきことに、私を含め3〜4人は、手を当てていた時間が長かったためか、なかなか起き上がることができず、先生に施術していただいてようやくテーブルから上がることができた。いわば「自律神経系が解放される」という体験の一つだったと思う。
ロルフィングのトレーニングに参加する前に、6年間アシュタンガヨガのマイソールクラスで自主的な練習を継続していた。興味深かったのは、ポーズの練習中に感情が出てくるケースが生徒の中に出てきたこと。特により身体を広げることが求められる後屈系のポーズで涙をする人も見かけたことがある。これはまさしくヨガのポーズによって自律神経系に影響を及ぼし、「自律神経系が解放される」という体験の一つではないかと思う。
トレーニングで学ぶのは、「自律神経系が解放される」体験を目撃したとすると、身体の中でホメオスタシス(恒常性=内部環境を一定に保つ仕組み、いわばバランスを調える仕組みが身体の内部にある)の機構が働き、身体が落ち着いてくるということ。その点を知ると、冷静に対処できる。
自律神経系に大きな影響を及ぼすロルフィング。もちろん、ロルフィングの施術は身体の全てが施術対象であるからであり、腹腔や胸腔、首回りや仙骨などは自律神経系へ影響を及ぼすからだ。
自律神経系とロルフィングについては本コラムで再度触れたい。
2026年8月の注記
一つの語だったもの
原文は「自律神経系が解放される」と一貫して書き、その英語として Arousal と Discharge を並べている。二つの語が、同じ現象の別名として置かれている。
今は、この二つが別のことを指すと分かる。Arousal は交感神経系が立ち上がること、Discharge はその蓄積が抜けること。方向が逆である。この記事に書かれた冷や汗とめまいは Arousal にあたり、涙は Discharge に近い。2015年の記述は、両者をひとまとめにしている。
現象が先にあり、名前が後から来る。Phase IIIの記事を読み返していて繰り返し出てくる順序だが、ここではもう少し込み入った形をしている。名前はあった。二つとも、すでに手元にあった。区別する解像度がなかった。
課題図書に入っていた
このことには続きがある。
基礎トレーニングでは課題図書のリストが配られ、その中にPeter Levineの『Waking the Tiger』があった。Levineはロルファーであり、後にソマティック・エクスペリエンシング(SE)を体系化した人である。動物は敵に遭遇したとき、闘うか逃げるかの手段が取れないと凍りつく。しかし動物にはエネルギーを放出する仕組みがあるためトラウマにならない——その考え方は、トレーニングの中でも取り上げられていた。
つまり、Arousal と Discharge を区別する枠組みは、2014年の課題図書の中にあった。読んでいながら、この記事を書いた時点では使えていない。
区別が身についたのは6年後である。2021年2月から11月にかけて、SEの初級を12日間受けた。Ariel Girretto先生によるオンラインの講座で、コロナ禍のさなかだった。そこで学んだのは、原因となった出来事ではなく、身体に残ったショックのエネルギーのほうを見るという順序である。どのような身体症状が出たのかを、自律神経系の変化から辿っていく。
その後、Patricia Meadows先生によるDARE(Dynamic Attachment Repatterning experience)に16日間、Dave Berger先生のEye of the Needle(SE Master Class)に5日間、いずれも海外から来たアシスタントへの通訳を担う立場で加わった。通訳をしながら授業も受けられる形だったので、支える側に立ちつつ、内容そのものにも繰り返し触れることになった。初級で学んだ枠組みが、その反復のなかで身についていった。
上流に本があり、下流に実習があった。間が6年空いている。
ホメオスタシスから、信じることへ
後半にこうある。「自律神経系が解放される」体験を目撃したとして、身体の中でホメオスタシスの機構が働き、身体が落ち着いてくる。その点を知ると、冷静に対処できる。
2025年のアドバンスト・トレーニングでは、同じことが別の言い方になっていた。身体は自己調整できると信じる、という言い方である。
「Body Readingと情報の寡多」の注記で、Resource——人は生来、創造力と才知にあふれ、欠けるところがない——というCTIコーチングの前提が、この信念につながると書いた。ここではもう一つ手前が見える。2015年の時点では、それは生理学の用語だった。ホメオスタシスは観察される機構であり、知識として持つものである。自己調整できると信じるというのは、施術者の側の構えを指す。
同じことを言いながら、記述の位置が、観察される側から支える側へ移っている。
手を当てていた時間
5人がテーブルに横になり、残りの5人が順に回って仙骨に手を当てる。当て方の違いで感じ方がどう変わるかを体感するワークだった。そして、手を当てていた時間が長かったためか、3〜4人が起き上がれなくなった。
Jörg先生が繰り返し言っていたのは Less is More である。与えすぎないこと。「Body Readingと情報の寡多」と「授業の進め方」の注記で二度扱ったが、いずれも教える側の話だった。ここにあるのは、受ける側の身体で確かめた記録である。長く触れることが良いわけではない、と分かった日の記録になっている。
当て方の違いで感じ方が変わる、という観察も、後に名前を得る。2025年のShape the Handは、手の形が受け取る情報を決めるという前提の上に立っている。
訓練より前に見ていたこと
ロルフィングを学ぶ前、アシュタンガヨガのマイソールクラスで、後屈系のポーズで涙を流す人を見かけたと書いている。
施術の外で同じ現象に触れる、という形は後に何度も出てくる。柔術、SSP、ソースポイントセラピー、IMAC。ただしそれらはすべて修了後の検証だった。ヨガでの目撃だけが、訓練より前にある。
現象のほうが先に来ていた。順番でいえば、これが最初だった。




