【R#81】Phase III(22)〜モダリティ(1)〜モダリティの意味とロルフィングでどのように生かすか?

身体に力が入っているときに、リズムを変えると力が抜ける時がある。例えば、歩行のときにゆっくり歩いているところを早くする。普段は吸いながら腕を上げる人に対して吐きながら腕を上げてもらう。等。身体の使い方を変えるとクライアントは違った身体の使い方が身につくことがあり、Phase IIIのトレーニングでは、セッション中に取り入れることがある。
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このように違った身体の使い方(知覚を変えること)のことをロルフィングでは、モダリティ(Modality)を変えてみるという言葉が使われる。馴染みの薄いこのModalityという言葉をOxford Advanced Learner Dictionaryで調べてみると、

  1. the particular way in which something exists, is experienced or is done.(ある事柄の存在様式、経験及び方法)
  2. the ideas expressed by modals(形態によって表現されるアイデア)
  3. the kind of senses that the body uses to experience things.(身体が経験する際に用いる知覚の種類)

という3つの意味が出てくる。ロルフィングで使うのは、3.の「身体が経験する際に用いる種類だ」。残念なことに、Phase IIIのトレーニングではモダリティというのはなんであり、どういった影響を身体に及ぼすのか?について詳細に学ぶことがない。そこで、今回は米国で発達した心理学の一つ、NLP(Neurolinguistic Programming、神経言語プログラミング)からモダリティついて迫ってみたいと思う。なお、私自身がどのような経緯でNLPに興味を持つようになったのか?については「心と身体について〜身体を動かすことによって心が変化する」で触れている。
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NLPは、1960年代、心理学を専攻していたリチャード・バンドラーと言語学の先生のジョン・グリンダーの2人が開発した心理学のモデルの一種である。このモデルは3人の天才心理療養士(「治療の魔法使い」とも言われた)を分析しモデル化することで生まれた。3人とは、催眠療法を実践していたミルトン・エリクソン、ゲシュタルト療法のフリッツ・パールズ、家族療法のバージニア・サティアのことである。
余談になるが、Ida Rolfの著書 ‘Rolfing and Physical Reality’によると、1950年代までにアイダ・ロルフはニューヨークで25年間施術を行いつつ、米国、カナダや英国でその手技について教えていた。ロルフィングが世界的に有名になってくるのが、Esalen Instituteへアイダが訪れてからのこと。フリッツ・パールズが招待したのだ。そこで、パールズと交流するようになり、Esalen Instituteで本格的にロルフィングのトレーニングを行うようになる。そう考えると、NLPはなんらかの形でロルフィングに影響を与えているように思う。
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NLPは、神経(Neuro、五感を通じた情報収集によって世界を認識)、言語(Linguistic、五感を通じて得られた情報を言語化)、プログラミング(Programming、体験や経験によって作られた人間の中にあるプログラム)の3つの言葉からなる。
NLPは、クライアントの「現在の状態」を分析した上で、クライアントが「望ましい状態」になるためにはどのように対処したらいいのか?そのために様々なスキルが用意されている。信頼の獲得や身体観察、言葉の使い方等が挙げられる。その中でモダリティを使ったスキルはNLPの特徴をもっとも良く現していると思う。
心と身体について〜身体を動かすことによって心が変化する」で触れたように、人間が外界を認識する際、視覚、聴覚、体感覚など、五感で感じた様々な構成要素を組みあわせて記憶するのだが、この構成要素をモダリティという。興味深いことに人には癖があり、視覚(visual、V)、聴覚(auditory、A)、体感覚(kinetic、K)のうち、どれかが優位なケースが多い(合わせてVAKと呼ばれる)。そして、NLPは、詳細にVAKを見ていく(そのことをサブ・モダリティ(Submodality)とも呼ばれる)。

ある出来事を経験すると人はそれを記憶する。例えば、ジェットコースターの体験、人から怒られた体験、人から褒められた体験等。その体験はVAKのサブ・モダリティの中に保存される。
私の例をあげたい。
自分自身が、人から怒られた体験を思い浮かぶと、視覚的に見ると目線は斜め下の近い距離にその映像が見え、モノクロにみえる。聴覚的に聞くと、その出来事は左耳の方が聞き取りやすい、音量の大きさは10段階で6、音声が高い、音のスピードが速いことを聞き取ることができる。体感覚的には、心臓あたりに感じる、温度は冷たい、重さを感じる、ずっしりと固く感じる。
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一方で、私自身が人から褒められた体験を思い浮かぶと、視覚的に見ると目線は中央の上、映像が大きく見え、カラーにみえる。聴覚的に聞くと、右耳、音量の大きさが10段階で4、音声が中ぐらい、音のスピードが中ぐらい等、聞き取れる。体感覚的には、全身に感じる、温度は暖かい、軽く、柔らかく感じる。
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このように「問題のある状態」(人に怒られた体験)と「うまくいっている状態」(人から褒められた体験)で違ったVAKのサブ・モダリティの形で保存されることがわかる。
では、人から怒られた体験を「うまくいっている状態」のVAKに変えてみるとどうなるか?実は、体験してみると驚くのだが、一瞬のうちにネガティブの出来事に対する見方が変わってしまうのだ。
このように体験した記憶はVAKという形で保存される。その後は、同じ出来事に遭遇した時に、出来事に反応するのではなく、出来事の記憶に反応することになる。そして、上記のことが示しているようにVAKを変えることで出来事の記憶を書き換えることができる
このように考えると、身体観察を行う際に、ネガティブやポジティブな体験がどのようにVAKで保存されているのか?を知ることが重要であることがわかっていただけたと思う。
次回、もう少しロルフィングとの関係で語りたいと思う。
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この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka