ロルフィングのPhase IIとPhase IIIのトレーニングを受けていた頃、人間の腸についての話題となった。そこで日本に帰国後、日本語で書かれた腸について調べることにした。
今回参考にした本は、上野川修一先生の「からだの中の外界・腸のふしぎ」という本。2013年4月現在の最新情報が網羅され、わかりやすく語った一冊だ。この内容を中心にわかってくることをごく簡単に紹介したい。
人間は生きて行くために食事をとる。食事の主な役割として、三つあげることができる。第一に、身体の構成する約60兆個の細胞が利用されやすい形で消化・吸収するという「からだをつくる」ということ。第二に、運動のエネルギー源になるということ。第三に、体のはたらきを調整するということだ。
消化・吸収の役割を果たすのが、口・食道・胃・腸などの消化管。その中でも主要な役割を果たす腸は、消化・吸収のキープレーヤーだ。動物が肉食・草食によってその長さが異なっていることに特徴があるが、人体最大の免疫系を備える器官でもある。
腸は発生学上、最も早期に形成される器官で、身体の内部にありながら外界とのやりとりを活発に行う腸は、からだの中で「外界」と接する器官である。外界からの異物の侵入を防ぐため、免疫系を発達させ、人体最大の免疫器官になった。
脊髄と並んで1億個もの神経細胞を擁する腸は、脳神経系の指令に左右されることなく、食物から栄養分を取り込み消化・吸収を行うという。そのため、「第二の脳」という別名が付けられている。また腸内には細菌が様々な形で生息しており、人の腸に寄生しつつ、消化・吸収の手助けのみならず、免疫力を高めるとも言われている。
興味深いことに、腸は脳へ信号(ホルモン)を送ることもできる。満腹時には、コレシストキニン、インスリンやレプチン、空腹時には、グレリンが脳に伝わり食欲に大きな影響を与える。
一番の関心は、腸とこころは果たして繋がっているのか?についてのエビデンスがあるかどうかだった。古代の人たちは、こころを「腹」にあると考えていて、日本語でも「腹がすわる」「腹がたつ」といった言葉に表していた。英語にもGut feeling(虫の知らせ、第六感)とった言葉がある。ただ、「からだの中の外界・腸のふしぎ」によると、腸と心との関係については、現在までに科学的根拠が得られていないらしい。
とはいうものの、なんらかの形で腸とこころには経験的にあるように感じる。
例えば、先日(2015年5月18日)お腹を通じて内臓に直接働きかけることによって、感情のバランスが整ってくることで生命力を向上させることを目標とするチネイザンを体験したことを以前本ブログに書いた(「チネイザンを体験して」参照)。お腹回りを緩めると、全身がゆるみ、こころ落ち着いてくることに触れた。チネイザンについては、何度か経験した上で、腸との関連性について触れていきたい。
また、以前ポリヴァーガル理論について触れたが、脳と胃・腸を結ぶ迷走神経について書いた(【RolfingコラムVol.53】、【RolfingコラムVol.54】参照)。顔面を表現するために迷走神経を発達。顔面に集中する迷走神経の働きにより、心理的に距離を近づいていいという合図を発達させてきた。こうして人は、他人に近づく際には、顔や発声、他人からの合図によって判断するようになった。胃・腸につながっていることからこれらに対してもなんらかの影響があるように思う。
簡単に腸について触れた。腸と心については、また機会を見つけて書きたい。