ロルフィング用語集──10回セッションを読むために

10回セッションの記事に出てくる用語をまとめた。読んでいて引っかかったときに戻ってくる場所として使ってほしい。

セッションの進め方

Body Reading セッションの冒頭で、クライアントの立ち方・歩き方・呼吸のパターンを観察すること。どこが過度に緊張しているか、重力の軸からどうずれているか、身体を読む。施術の後にもう一度確認し、変化をクライアント自身が感じ取れるようにする。この観察→介入→再観察という流れが、毎回のセッションの骨格になる。

表層(Sleeve)と深層(Core) 身体の外側を覆う層と、その内側にある層。1〜3回目で表層を、4〜7回目で深層を扱う。表層が解放されていないと深層には届かない。玉ねぎの皮を一枚ずつ剥がすように進む。

統合セッション 8〜10回目を指す。部位を整える段階から、身体全体が有機的に動くための段階へ移る。

Closure(完了) プロセスに適切な終わりを与えること。ロルフィングの原則の一つとして挙げられる。終わりがあるから次が始まる、という考え方に基づく。アイダ・ロルフ本人が定めたものではなく、後の世代が整理したものにあたる。

Neutral(ニュートラル) 施術者が特定の意図や答えを持ち込まずにいる状態。当初は心の持ち方を指す語だったが、現在は施術者が自分の身体をどこに置くかという、具体的な手順として扱われる。

中動態 能動(する)でも受動(される)でもない、第三の態。古代ギリシャ語に由来する。触れられているうちに呼吸が深くなる、条件が整うと筋肉が自ずと動きはじめる——セッションで起きていることの多くは、この態に属する。ロルファーの仕事は変化を起こすことではなく、変化が起こりうる場を保つことになる。

空間 何もない場所ではなく、質を持ち、身体が応答する相手として捉える。対象そのものに意識を向けたときと、対象とのあいだの空間に意識を向けたときとでは、身体の反応が変わる。前景と背景のどちらを認識しているかで、姿勢や歩きの力みが変わる。

重力と筋肉

Tonic Muscle(持続的に働く筋肉) 重力の下で姿勢を支える筋肉。使い続けても疲れない。働き出すまでにおよそ5秒、緩むのにもおよそ5秒かかる。事故や強い衝撃を受けた経験によって、スイッチが切れたままになることがある。

Phasic Muscle(一過性に働く筋肉) 動作を起こすときに働く筋肉。使えば疲労し、筋肉痛が残る。筋力トレーニングで鍛えるのはこちら。

Tonic Function 重力に対して身体がどう反応しているかを扱う理論の枠組み。姿勢を筋力の問題としてではなく、重力との関係の問題として捉える。

Palintonicity(2方向性) 互いに逆を向く力が張り合うことで形が保たれること。上へ向かう自由と下へ向かう支えは、どちらか一方では成り立たない。語源はヘラクレイトスの弓と竪琴で、名前そのものは非常に古い。

動きと知覚

Pre-movement 動作が始まる前に、すでに始まっている支えの働き。腕を挙げる前にヒラメ筋が働き、物を掴む前に前鋸筋が働く。何をするかよりも先に、どう支えるかが決まっている。

Eye of the Foot(足の目) 足裏に目があると仮定して、それを開いたり閉じたりする知覚のエクササイズ。閉じて立つと身体全体が縮み、開くと骨盤底と横隔膜がゆるむ。足裏そのものを操作していないのに張力の配分が変わることから、知覚の置き方が身体の使い方を決めていることが分かる。アドバンスト・トレーニングで扱われる。

Triangle of Support 姿勢を支えるセンサーを、眼・足・内耳の3つを頂点とする三角形として捉える見方。2回目で足を、7回目で内耳を扱うのは、この三角形の別の頂点に触れているからだ。

Finding Back Space 背面の空間を捉えること。姿勢を支える筋肉の多くが背中側にあることと対応している。前だけを見ている身体は、支えの側を使えていない。

内受容感覚(身体感覚) 体内の状態を感じ取る感覚。五感が外の世界の情報を受け取るのに対し、内臓・筋肉・骨から集まる情報が「今、自分がどう感じているか」を形づくる。

ボディスキーマとボディイメージ 身体地図の二つの層。ボディスキーマは意識に上らないまま姿勢や動きを支えている層、ボディイメージは自分の身体をこういうものだと思っている像。セッションで先に変わるのは、多くの場合ボディスキーマのほうになる。

Palpatory / Haptic 手や足が触れたときに、そこから情報を受け取れる状態にあること。Palpatoryは解剖学の触診(Palpation)から、Hapticはギリシャ語の「触れる」から来ている。

Embodiment 身体感覚が統合され、知識が身体の使い方として働くようになること。

身体の構造

Girdle(帯) 肩帯と骨盤帯を指す。肩帯は肩甲骨から鎖骨、胸骨のあたり。骨盤帯は恥骨、坐骨、腸骨、骨盤底のあたり。それぞれ上肢と下肢の動きの基礎になる。

Articulation 関節が分かれて動けることと、身体の中に隙間が生まれることを同時に指す。力を抜くというのは、脱力することではなく、隙間ができることに近い。

nutation と counter-nutation 仙骨が腸骨に対して前傾する動き(nutation、うなずき運動)と、後傾する動き(counter-nutation、起き上がり運動)。ラテン語の「うなずく」に由来する。呼吸に伴って繰り返される。

AO関節(環椎後頭関節) 頭蓋骨と頸椎のあいだの関節。ここが解放されると、全身の緊張が抜けやすくなる。

腸腰筋 大腰筋と腸骨筋からなる深層の筋肉。腰椎の前側から骨盤を通り、大腿骨の小転子に付く。背骨と脚を直接つないでいる数少ない筋肉で、身体の重心のあたりに位置する。


ロルフィングの10回セッションとは何か──身体が変わる3つのフェーズと各回の流れ


大塚英文(Ph.D.)|認定アドバンスト・ロルファー™/ロルフ・ムーブメント・プラクティショナー 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(医学博士)。外資系製薬会社でメディカル・マーケティング業務に従事した後、2015年より渋谷でロルフィング®セッションを提供。「科学と実践の統合」をテーマに活動。