【R#292】「歩く」と「腸腰筋」〜転倒防止、力を抜く、丹田の意識につながる

はじめに

東京・渋谷でロルフィング・セッションと脳科学から栄養・睡眠・マインドの脳活(脳科学活用)講座を提供している大塚英文です。

私は、2015年6月から、ロルフィングのセッションを提供している。「筋膜」へアプローチすることで、身体の姿勢が整えていく。ロルフィングで見る姿勢は「歩く」「立つ」「座る」の3つだ。

以前、人類学の視点から見た「二足歩行」と「歩く」ことについてまとめた。今回は「歩く」上で、重要な筋肉の一つ「腸腰筋」について取り上げたい。

歩くために重要な「腸腰筋」という筋肉

ロルフィングでは、第5回のセッションで取り上げる「腸腰筋」。腸腰筋は、小腰筋、大腰筋、腸骨筋の3つの筋肉からなる。下半身と上半身を結ぶ唯一の筋肉であり、下記の解剖図が示しているように、背骨の前側に筋肉が着いて(付着して)いる

大腰筋

腸腰筋は、足の太もも(大腿骨)、骨盤、背骨を結ぶ深層(コア)に位置する筋肉。背骨から下半身に向かって垂直に延び、斜めに骨盤を横切る。上半身と下半身をつなぐ筋肉のため、中心のバランスをとることができるのだ。

上図の赤色は腸腰筋の中の大腰筋の位置。腸腰筋全体が収縮・弛緩しながら、身体は「歩く」ことができるのだ。ポイントは、上半身と下半身のバランスを、まるで建物の建てる際のアーチのように支えてくれることだ。

さらに、丹田(ヨガでいう「バンダ」)の意識にも重要だ。背骨(腰椎)の前側から骨盤を経由して、足(大腿骨の小転子)まで伸びるのが「腸腰筋」。位置的には、身体の「重心」「丹田」の近くにあるので、腸腰筋が使えてということは、丹田の意識が深まっていると言ってもいい。

「内臓の動き」を整えていく上で「腸腰筋」が大事な理由とは?」に詳しく書いたように、
1)内臓の働きを良くする
2)横隔膜とコラボして、呼吸を深くする
3)血流と神経の働きを良くする
等。実は「腸腰筋」は上半身と下半身のバランスだけではない。身体に様々な刺激を与えてくれるのだ。

腸腰筋は、腰筋(大腰筋、小腰筋)と腸骨筋の2つからなるが、股関節を曲げる(屈曲)、伸ばす(伸展)動作に関わっており、太ももを上げる際に働く筋肉として知られている。大腰筋が弱っていると「歩き」「走り」への影響が強くなり、転倒やつまずきが起きやすくなるのだ。

腹筋の鍛えすぎにより、腸腰筋が使えなくなる

デスクワーク、運動不足によって「腸腰筋」が弱まるが、見落とされているのが、腹筋との関係。腸腰筋を弱くする可能性が指摘されている。腹筋の鍛えすぎは、問題があるのだ。

というのも、
1)肋骨の下と骨盤を結び筋肉である腹筋(特に腹直筋)が強くなりすぎる。
2)腹筋を囲む内側の内臓は動きたいのだが、空間が狭いため動きにくくなる
3)内臓が動きにくくなると、その内側にある大腰筋を圧迫。
4)大腰筋が動きにくい、身体になっていく
からだ。

腸腰筋〜「恐れ」の筋肉?

「腸腰筋」は、呼吸に関わる「横隔膜」に繋がっているが、ここは「太陽神経叢」として知られている位置。太陽神経叢(マニプラチャクラ)は、全身をめぐる生命エネルギーの流れを整える役目がある。自律神経系を整え、第二の脳、腸脳相関との関係もあると言われ・・・。

太陽神経叢の役割のキーワードとして、信頼、おそれ、脅迫、自尊心。自分を大切にすることや、自己責任など、自分で判断していくためにも重要なチャクラ。「怒り」や「恐れ」が強くなるようなトラウマ経験があると、ここが動きにくい傾向がある。実際に、トラウマを持っている方は、腸腰筋が働かないケースが多いのだ。

ロルフィングでできること〜空間を広げる

ロルフィングの5回目で「腸腰筋」を整えるセッションを行う。「腸腰筋」は、身体の深いところにあるので、手で直接触れることができない。そのため、周辺の筋肉・筋膜を緩めていくことで、「腸腰筋」の動くスペース(空間)を広げることを心がける。

驚くべきことに、これを心がけると、自ずと「腸腰筋」が動けるようになるのだ。

「歩き」の変化〜足がぶら下がる感覚

興味深いことに「腸腰筋」が使えるようになると、歩き方も変化する。普段、歩くと言えば、ズボンのベルトを足だと思って歩いていると思う。「腸腰筋」を意識できるようになると、肋骨の下から足が二つぶら下がっている状態で歩く意識へと変化する。その結果として、背骨も延びるようになるので、腰痛や肩こりも改善の方向へ進むのだ。

 

まとめ

今回は「歩き」に重要な「腸腰筋」に関して「腸腰筋」とは何か?から出発し、なぜ弱まるのか?腹筋の鍛えすぎ、恐怖を含めたトラウマの体験によって起きることを説明。その後、ロルフィングで何ができるのか?についても取り上げた。

少しでも、この投稿が役立つことを願っています!

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka