【R#296】姿勢維持に「身体地図」はなぜ重要なのか?〜個性、世界を作る

はじめに

東京・渋谷でロルフィング・セッションと脳科学から栄養・睡眠・マインドの脳活(脳科学活用)講座を提供している大塚英文です。

私は、2015年6月から、ロルフィングのセッションを提供している。「筋膜」へアプローチすることで、身体の姿勢が整えていく。ロルフィングで見る姿勢は「歩く」「立つ」「座る」の3つだ。今回は「姿勢」と「身体地図」との関係についてまとめたい。

身体地図とは何か?〜姿勢の維持、自己認識に重要

そもそも、なぜ身体は「姿勢」をとり続けることができるのか?

1)例えば、自分の身体の足、膝、腰、肩、腕、手をなぜ人間は、しっかりと認識できるのか?
2)目を閉じても、鼻、口、目に触れることができるのはどういった理由からなのか?

なぜ、これが可能かというと、人間には身体の中に地図(body map、身体地図)があるため、地図を頼りにどこになにがあるのか?が認識できるためだ。

更に、立ち上がって、指先をピンと伸ばしながら、手を前に伸ばしていく。前後左右に動かして、片足ずつ前に出すなどの動きをしてみる。身体の腕、足が届く範囲の目に見えない領域も、身体地図の一部で、ペリ・パーソナル・スペース(peri-personal space、身体近接空間)と呼ばれる。

実は、手に届く外部の空間も自分と認識。自分の手足と胴体に加え、皮膚のように囲むことが知られているのだ。馬を操る騎手は、馬を自分の中に取り込み、道具(スマホ、パソコン、飲み物のコップ等)を使っている人は、道具を自分の中に取り組むことができる。

このように身体地図は柔軟性を持っており、私らしい個性=主観的感覚と周囲の世界を把握して、うまく外部環境とやりとりしていける能力を作り出している。逆に、自分で物事を考えて、世界を認識する「自己認識」は、身体地図の力がなければできない。

身体地図の理解は、実体のない「心」と、物理的に実態のある「身体」がどのように絡み合って、人間の感情のある自己を作り出すのか?に関わっていると考えてもいい。

身体地図には2種類ある〜ボディスキーマ・ボディイメージ

サンドラ・ブレイクスリー著の「脳の中の身体地図」には、身体地図には、ボディスキーマ(Body Schema)とボディイメージ(Body Image)があることを紹介している。

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ボディスキーマのボディは身体、スキーマは図式。心理学では、スキーマは、私たちが経験に基づいて作られる思考のフレームワーク(枠組み)の意味で使われる。いわば、脳によって無意識に作られる身体地図だ。ボディスキーマは、主観や客観で分けられない世界を見る目を持つため、一人一人、個性を持つことができる。

ボディイメージは、身体によって意識的に知覚することで作られた身体地図だ。個人的な経験や態度、自分に対する期待や思い込みによって作られる。痩せているのに太っていると感じることは、一つのボディイメージである。

ボディイメージは「自分がどのように身体を知覚するのか?」というPerception(世界観や知覚)に関わっているともいえる。心理的、知覚的な側面ともいうことができ、心理学が重要な役割を果たすといってもいい。

以下、2つの身体地図について詳しくまとめたい。

ボディスキーマ〜身体の中にあるOS

ボディスキーマは、無意識で作られる身体地図の一つで、主に五感(視覚、聴覚、触覚等)、固有受容感覚(Proprioceptive)、前庭感覚(Vestibular)等によって作られる(これらの感覚については「なぜ「重力」があるのに、姿勢を維持できるのか?」にまとめた)。

米国の脳科学者のワイルダー・ペンフィールドが、初めて「身体地図」を作成したところから、歴史が始まった。

体の各部位に対応する脳の外側にある大脳皮質の(体性)感覚野(触覚、痛覚などをコントロールする脳の領域)と(1次)運動野(運動をコントロールする脳の領域)を、ホムンクルス(Homunculus、ラテン語で「小人」の意味)と呼ばれる絵図で表した。

現在では、大脳皮質の各部位が身体地図に重要な役割を果たすことがわかっている。後頭葉は、視覚に関わっており、目が見える人は、視覚情報を頭頂葉に送り、視覚を基本とした身体地図を作る。頭頂葉は、身体の感覚、身体周囲、空間との関係の身体地図を作る。前頭葉は、精密さが求められる細かい運動を指揮する指揮者の役割を果たし、道徳判断、言語、自制など心に重要な身体地図を作る、等。

身体地図は、「視覚情報」「筋骨格系」「触覚情報」から絶えず情報収集を行なっているが、その情報を「脳」に伝えることで、「世の中に対する見方」=「パソコンのOS」の情報が更新される。

「世の中に対する見方」のことを、フランスの哲学者、メルロ・ポンティは「身体図式」(ボディスキーマ)と表現した。

例えば、「皮膚」「関節」「筋肉」「内臓」からの感覚の流れによって絶えず最新情報を入手。脳に情報を送ることで、パソコンのOSのように、日々、情報が更新されている。その上「身体図式」は、身体からの感覚を無意識(自動的)に処理されているのだ。

ボディイメージ〜信念・価値観はどう生まれるのか?

ボディイメージは、身体によって意識的に知覚することで作られた身体地図だ。自分をどう捉えるのか?自分をどう表現するのか?自分のセルフイメージをどう作っているのか?に関わっている。自分の信念、価値観に関わっている。

ボディスキーマの身体地図は、脳の特定の場所に記憶している。対照的に、ボディイメージの身体地図は、脳の至る場所に散らばって記憶として残っている。このため、信念・価値観は、脳の中にあり、ボディスキーマ同様、脳の中で絶えず新情報によって更新されている。

実際、ボディイメージは、神経細胞の間の接合部に埋め込まれている上、外部環境に対して、自分の期待や予測に反応して働くと考えられている。

ボディイメージは、米国人の神経学者のポール・シルダーが、ボディスキーマだけでは身体経験を完全に捉えることができないと考え、1935年に導入した考え方だ。シルダーは、私たちの心に描いている自分の身体という意味でボディイメージという言葉を使った。

ボディスキーマは、身体の各感覚部位の相互作用によって生まれ、身体の成長につれて進化する。ボディイメージは、生涯を通じて蓄えられている個性で、人間関係、経験、態度、想定、期待、妄想等によって形づけられる。家族、文化、職場などによって形成されるが、解釈するのは個人。個人によって信念・価値観が生まれてくる。

ほとんどの人は、思春期の初期に、一定のボディイメージを作る。身体に対す思い込み(痩せ型)、信仰、政治の意識等が形づけられ、一度形になると変えるのが難しい。減量をしても、太っていると感じるのは、ボディスキーマとボディイメージにギャップがあると考えてもいい。

ロルフィングでできることは?

ロルフィングは、実体のないボディイメージに注目するのではなく、実体のあるボディスキーマに目を向ける。

ロルフィングのセッションを通じて、身体の「筋膜」にアプローチする。筋膜は、「皮膚」「関節」「筋肉」「内臓」をつなぐ重要な内蔵器官。驚くべきことに、筋膜にアプローチすると、ボディスキーマに関係する、五感(視覚、聴覚、触覚等)、固有受容感覚(Proprioceptive)、前庭感覚(Vestibular)に影響を及ぼすことができるのだ。

徐々に、身体が整っていくと、心と身体が一致していく感覚が養われる。最終的に、思考、記憶、感情が身体感覚と結びついていると感じられるようになると、ボディイメージは幻想であり、思い込みであることに気づいていく。そう考えると、ロルフィングは、ボディスキーマに注目することで、ボディイメージを書き換えていく方法と捉えることができる。

まとめ

今回は、姿勢と身体地図に関してまとめさせていただいた。

身体地図には2種類あり、
ボディスキーマ=一つ目は脳が様々な外部情報を集めることで自動的(無意識的)に作られる身体地図。
ボディイメージ=育った環境、文化等の主観的なイメージによって作られる地図。
と捉えるとわかりやすい。

それぞれが、どのような身体地図を作り「世の中に対する見方」へと至るのか?

ボディスキーマへアプローチすることで、ボディイメージが変わるロルフィングのことも紹介した。

少しでもこの投稿が役立つことを願っています。

 

 

 

 

 

 

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka