【R#413】頭で動かすから、身体で動くへ ── 料金改定によせて、変化が馴染むということ

はじめに

この6月15日から、ロルフィングのセッション料金を改定します。

そこで前回は、改定する理由を、「身体を整える」意味と、それがどのようにして「(ご自身の)認識を整える」へと変化していくのか?を中心にまとめた。

今回は、一回のセッションが、クライアントの身体と、その後の人生に何をもたらすのか。そして、その変化はどうやって起きるのか。なぜ、変化が持続するのか?過去のクライアントさんの声を引用しつつ、できるだけ具体的に書きたい。

その日、身体に起きること

セッションのあと、多くの方が同じことを口にする。「立ったときの感じが、違う」と。

こわばっていたところがほどけ、呼吸が深くなり、足の裏から床の感触がはっきり伝わってくる。重力が、つかえることなく身体を通り抜けていく。自分の身体の輪郭が、内側からくっきりと感じられるのだ。

フリーアナウンサーの相本幸子さんは、骨盤まわりの動きを整えるセッションの後、

「背中や肩に触れていないのに、楽になった」
「腰も肩も足も、つながりを感じる」

と感想をシェアしてくれた。

直接ふれていない場所まで、ひとつながりにほどけていく——身体は、そういうふうにできているといっていい。これは、ただ気持ちがいい、というのとは少し違う。身体が、本来の立ち方を思い出しはじめる感覚。ただし、ここはまだ入口にすぎない。

一回で、終わらない

マッサージ・整体とロルフィングとのいちばんの違いは、ここだと思う。

受けて楽になって、数日でまた戻る——のではなく、身体が「自分から動きなおせる」状態へと整えていく。私が力で固さをこじ開けるのではない。ご自身の身体が、ひとりでに変わりはじめる「場」を整える。それが、施術家の私として最も重要な役割だと考えている。

だからこそ、変化は戻りにくく、日常生活に戻っても持続する。ここ数年、アドバンスト(Advanced Rolfer Training、上級トレーニング)の学びを通していちばん深まったのが、まさにこの「変化が起きる場を整える」という関わり方だった。

長年、かかとの外側に体重が乗るクセを直したいと思っていた男性は、10回を終えてこう書いてくれた

「直そうと思っても簡単に直るものではなかったのに、完全に変わった」。
そして——「マッサージや整体では、一時ほぐれてもまた元に戻ってしまう。けれどロルフィングは、自分で身体の使い方を意識するようになるから、基本的に前の状態には戻らない」。

受けるたびに振り出しへ戻るのとは、逆のことが起きているといっていい。

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では、その変化は、どうやって起きるのか

ここが、いちばんお伝えしたいところだが、なぜ、戻らないのか?

まず、はっきりさせておきたいことがある。私が力でクライアントの身体の固さをこじ開けて、強引に身体を変えているわけではない、ということだ。私の役割は、むしろ逆。クライアントの身体が「自分から動いてもいい」と思える条件まで、待つこと。

「その人にとって必要な変化が起きるのを待つこと」

このようにして、深い変化は、こちらが押し込むときではなく、その安心感が身体に届いたときに、ひとりでに動き出す。

そのために、セッションはとてもゆっくり進む。

私たちはふだん、頭で身体を動かしている。速く、効率よく、考えてから動く——そういう毎日のなかで、身体そのものの感覚は、だんだん後ろへ追いやられていく。本来、「身体で動く」というのは、それとは別。頭から指令を出すのではなく、身体の内側の感覚を手がかりにして動く。いちど速さを手放して、ていねいに動いてみると、その違いがはっきりしていく。

自分のどこが緊張しているのか、どこが動きにくいのかが、クライアントの中に答えとして見えてくる。

そして、もうひとつ大切にしているのが、その感覚を言葉にしていくこと。といっても、「ここをこう感じてください」と教えるのではない。

「いま、何が起きていますか」
「どこを、手放せそうですか」

——はい・いいえでは答えられない問いを、ゆっくり投げかける。その問いに、クライアントの言葉を探していく。「ここがつかえている」「ここは、ふっとゆるんだ」と、感じたことが言葉になっていくと、ぼんやりしていた身体の感覚が輪郭を持ち、新しい動きが、クライアントのなかになじんでいく。急いで頭で覚えた動きはすぐに抜けていくが、こうして自分の言葉とともに馴染んだ動きは、身体に長くとどまる。

ドイツでトレーニングを受けていた頃、ロルフィングのインストラクターの一人、Pierpaola Volponesから、TeachとEducateの違いについて教わった。Teachは、手順一つ一つ伝えて、生徒に手技を覚えさせること。Educateは、生徒の良さを引き出す(Eduは引き出すという意味)ために、どうしたらいいのか?生徒に考えさせること。

施術者が、TeachよりもEducateに意識を向けると、必要な変化が勝手に起こってくる。そして、クライアントは、見えてきて、なじんでくると、選べるようになる。長いあいだ握りしめてきた古いクセを、すこしずつ手放し、新しい動き方に出会っていく。変化は、施術者が外から与えたものではなく、クライアントの内側から生まれたものになる。だからこそ、その変化はクライアントの中に居つく。

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10回という道のりが、運んでくれるもの

ロルフィングは、10回という古典的な手順がある。これは、似たような施術を10回くり返すこととは違う。一回ごとに、扱う場所と深さがあらかじめ決まっている、設計された一本の道だ。

はじめの数回は、身体の表層から。呼吸がほどけ、立ったときの軽さが変わっていく。中盤は、もっと深いところへ。身体を奥から支えている部分が目覚め、上半身と下半身が、しだいにつながりはじめる。終盤は、全体の統合へ。これまでばらばらだったものがひとつにまとまり、クライアントの真ん中に、一本の軸が静かに育っていく。

最初は小さな予感だったものが、回を重ねるごとに、確かな手応えに変わっていく。多くの方が、そういう道のりを経る。

とはいえ、いきなり10回を受ける必要はなく、体験セッションで実感できるかどうかが重要になる。クライアントの身体にいま何が起きているのかを、頭ではなく身体で確かめる。その先へ進むかどうかは、それから決めてからで大丈夫。

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感じ方そのものが、すこし動く

身体がゆるむと、床の感触も、重力のかかり方も、呼吸の深さも変わる。そして不思議なことに、その変化は、いつのまにか「自分や世界をどう感じるか」にまで届いていく。

同じ出来事に対して、心に少し余裕が生まれる。とっさの判断が、落ち着く。「頭ではわかっているのに、どうしても動けない」——その手前で身体がかけていたブレーキが、すこしずつほどけていく。

私はこれを、身体を通して認識が整っていく過程だと考えている。姿勢が変わることや、症状がやわらぐことの、さらに先に広がる景色といっていい。

実際に、こんな声がありました

10回のシリーズを終えた、会社員の山田エレーヌ麗子さんが、変化の備忘録を送ってくれた。そこには、身体のことと、感じ方のことが、ひとつながりに並んでいた。

体感として——「首が後ろに楽に曲がるようになった」「股関節の詰まりがなくなった」「仙骨がどこにあるか体感でわかった」。

そして同じ時期に——「自分以外の人を理解する幅が広がった」「なんか肝が据わった」「自分を責めていたような状況でも、“ここは私のいる場所じゃなかった”と瞬時に思えるようになった」。

身体がほどけることと、感じ方がひらくこと。それが別々ではなく、地続きに起きていく。私がいちばんお伝えしたいのは、この感覚だ。

施術室を出たあとも

セッションが終わって、クライアントが一人になってから——そこからが本番だ、とも言える。

だから今は、家でどんなふうに身体とつきあえばいいか、何を続け、何を手放せばいいかを、以前よりずっと具体的にお伝えできる。クライアントの身体に合わせた、無理のない動きや、意識の向け方を、一緒に見つけていく。

10回を終えた柿崎亜耶子さんは、こんなふうに書いてくれた。「普段の生活でも、ヨガのアサナをとるときでも、細かい身体の観察を心掛けられるようになった」「内面的な部分と連動して、身体の中の詰まりや滞りを、自分で捉えられる」。

これが、クライアントに伝えたいことだと思う。施術家の私がそばにいなくても、クライアントが自分の身体の変化を言語化できるようになっていく。一回ごとの変化を、次の一回まで、クライアント自身の手でつないでいけることが重要なのではないかと思う。

おわりに

今回は、クライアントの声を中心に、ロルフィングを受けることによってどのような変化が起きるのか?なぜ、変化が定着していくのか?を中心にまとめた。

新しい料金は6月15日から始める。詳しくは、料金改定のお知らせをご覧ください。まずは一度、体験セッションで、ご自身の身体で確かめてみてください。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka