ロルフィング・トレーニングで様々な技術を学んでいるが、先生から時々、
「人は「正しい」「間違い」で物事を捉えるが、自分にとって正しくても、クライアントにとって正しいとは限らない。だから、自分で考え、解釈をするのではなく、相手にスペースを与えて、相手にも考える時間を作り、相手と付き添うように施術を行うことが大事だよ」
と言われる。技術を学ぶ際に、あたかも正解があるかのように「施術は正しく行わなければならない」と考えがち。あるいは、パーフェクトに行わなければ、間違えを侵しているのではないか?といった心理状態になることもある。このように考えすぎてしまうと、相手から発信している情報を受信損ねてしまう。
学校教育や親のしつけを通じて、
「物事には正しい・間違いがあり、失敗を犯してはいけない」
といった単一の考えに毒されていたということに気づかされる瞬間であった。ロルフィングの場合には、数多くの試行錯誤を通じて学んでいくわけだから。
自分にとって正解であっても、相手にとって正解であるとは限らない。それぞれの基準で正しいと判断しているにすぎないし、一人一人身体が違う。人の多様性を受け入れるためには、人には様々な基準に基づいて判断していることを理解することだと思う。
ロルフィングでは、施術する前に相手が持っていた古いパターン(old pattern、古い動きの習慣)と施術後の新しいパターン(new pattern、施術の結果として生まれた新しい動きの習慣)という言葉を使う。ここで注意して頂きたいのは、古いパターンや新しいパターンがあるだけで、正しい・間違いのパターンではないこと。どちらかというと選択肢が与えられたと考える方がいいかもしれない。
そして、古いパターンと新しいパターンの間でクライアントが迷う場合には、Negotiation(交渉)やRe-negotation(再交渉)の余地があるというのだ。あくまでも、セッションを積み重ねつつ、対話を通じてこれらのパターンを考えていく。
クラスでは、この古いパターンと新しいパターンとの移行の際、どういった変化が起きるのか?について時間を割いて身体感覚を掘り下げていく。興味深いのは、少しでも深層の部分で変化が起きると、自分の感情内に動きが出てくるというケースが多いということ。そういったプロセス(process)を大事に少しずつクライアントと新しい変化をどう受け入れていくか?だと思う。
考えてみれば身体というのは、自分一人で今のパターンになったわけではない。親のしつけ、学校の教育、社会に出てからの社会人としての心構えなどを通じて姿勢ができている。その古いパターンを深層から少しずつ変えるというのは、想像以上の変化をもたらすことになる。またその古いパターンの中に本人が感じていない心的外傷(トラウマ)もあるかもしれない。
今後のトレーニングにおいても、正しい・間違いではなく、多様性を受け入れるようなマインドセットを意識しながら学びのプロセスを深めていければと思う。