「ロルフィングを受けて身体が変わった。自分もロルファーになりたい」「ボディワークを職業にしたいが、ロルフィングはどうやって学ぶのか」——そういう問いを持つ方に向けて、ロルファー認定までの全体像を解説する。
この記事でわかること:ロルファーになるために必要な認定団体(DIRI・ERA・ABR)の違い、ベーシック・トレーニングの内容と期間、継続トレーニングの条件、アドバンスト・ロルファー認定までの道筋——これらを、実際にERAでトレーニングを受け、日本でアドバンスト認定を取得したロルファーの視点から解説する。
なお、制度は変わる。私が受けたのは2014年から2016年にかけての課程で、当時はPhase I〜IIIという3段階だった。現在はLevel 1〜3に再編されている。この記事では現行の制度を中心に書き、自分が受けた当時の課程については、そのつど区別して触れる。
ロルファーになるための認定団体
ロルフィングの資格を認定する国際的な団体は主に3つある。
DIRI(Dr. Ida Rolf Institute)は米国コロラド州を本拠とする団体で、Ida Rolfが設立したロルフィング協会の直系にあたる。トレーニングはPhase I〜IIIの3段階、合計731時間・28週間で、コロラド州ラファイエットのキャンパスで行われる。各段階のあいだに3週間の休みが入り、教員1人に対して学生10人までという体制だ。
米国のマッサージセラピー認定委員会(COMTA)の認定を受けており、3段階すべてを本校で受けることが認定校修了の条件になっている。マッサージやカイロプラクティックなどの資格を持つ人には、既習分を認めて期間を短縮する制度もある。
日本ロルフィング協会(rolfing.or.jp)がDIRIと提携して日本国内でトレーニングを開催することもある。日本在住者にとって、語学のハードルを下げて受講できる選択肢だ。
ERA(European Rolfing Association/Dr. Ida Rolf Institute Europe)はドイツ・ミュンヘンを本拠とする欧州ロルフィング協会だ。トレーニングはLevel 1・Level 2・Level 3の3段階で構成され、ミュンヘンのほかアムステルダム、ストックホルム、ボローニャでも開講されている。私が受けたのはERAのトレーニングだ。ボディワークの経験がなくてもLevel 1から始めることができる。
ABR(Associação Brasileira de Rolfing)はブラジルのロルフィング協会で、南米を中心に活動している。日本国内でトレーニングが開催されることもある。
3団体の認定はいずれも国際的に通用し、クライアントへのセッション提供において実質的な差はない。トレーニングの場所・言語・アプローチの細部に違いがあるため、自分のライフスタイルや言語環境に合わせて選ぶことになる。
どこで認定を受けても、活動したい国で活動できる。私自身、ERAで認定を受けて日本で活動している。所属するのは活動する地域の協会で、日本の場合は日本ロルフィング協会になる。どの団体で学ぶかと、どこで活動するかは、切り離して考えてよい。
認定を維持するには、所属する協会に年会費を払い続けることになる。日本ロルフィング協会の正会員は年3万円だ(2015年から2025年までの実額)。米国のDIRIは年600ドルほどで、協会の専門誌でも会費の水準がたびたび議論されている(The Business of Rolfing SI)。認定後に毎年かかる固定費として、頭に入れておくとよい。
→ 日本ロルフィング協会 教育関連
→ ERA ロルファーになるには(Become a Rolfer, English site)
ステップ1──ベーシック・トレーニング(85日間)
3つのLevel
ベーシック・トレーニングは、解剖学・触診・筋膜理論・10回シリーズの理論と実践を習得する課程だ。ERAではLevel 1〜3の3段階で構成され、合計85日間になる。
Level 1(Myofascial Foundation)は27日間。
3日間のワークショップを9つ受ける構成で、動き(Movement)・解剖学(Anatomy)・触れること(Touch)の3つの柱を、それぞれ3コースずつ学ぶ。ボディワーク未経験でも入れる入門段階で、最初の3コース(Movement 1・Anatomy 1・Touch 1)だけを試しに受けることもできる。9コースすべてを修了すると Myofascial Foundation の証書が出て、Level 2へ進める。始める前に10回シリーズのセッションを1〜3回受けておくことが推奨されている。
さらに手前に、Meet ROLFING という1.5日間の入門ワークショップがある。経験は問われず、トレーニングの必須でもない。ロルフィングの歴史、結合組織と重力、身体の見方、触れることの基礎、デモンストレーションのセッションが含まれる。まず触れてみたい段階の人に向いている。
Level 2(Structural Fascial Bodywork)は34日間。
10回シリーズの理論と実践を学ぶ段階で、生徒同士で実践し、課程の終わりに初めて外部のクライアントにセッションを行う。倫理と開業準備の内容も含まれる。
Level 3(Rolfing Structural Integration)は34日間。
教員の監督のもとで外部クライアントに10回シリーズ全体を行う。中間面談と最終面談があり、最後の認定ワークショップを経てロルファーとして認定される。
2つの形式
ERAには、まとまった期間に集中して受ける形式(intensive)と、数週間おきに分けて受ける形式(modular)の2つがある。Levelごとに形式を切り替えることもできる。Level 2は集中形式なら4週間を2回、モジュール形式なら約10か月。Level 3は集中形式で8週間、モジュール形式で10か月から12か月かかる。仕事を続けながら学ぶのか、期間を区切って集中するのかで選ぶことになる。
私が受けたときの課程
私が受けたのはPhase I〜IIIという旧制度で、合計84日間だった。
Phase I(Foundations)が15日間、Phase II(Embodiment)が33日間、Phase III(Clinical Application of Rolfing Theory)が30日間。これに、認定の1年後に受ける6日間のSupervision Workshopが加わる。当時のSupervision Workshopは必修だったが、現在は継続教育の一講座(Deepening the 10 Sessions、4日間)になっている。
大きく変わったのは入口だ。当時のPhase Iには書類審査があった。認定ロルファーからの10回シリーズ、ムーブメント・セッション5回、大学の学位、手技の資格か経験、そして5000語から8000語の課題論文(Admission Paper)。これらを満たした人だけが教室に入れた。現在のLevel 1にそうした要件はない。
もう一つ、当時はSpectrumという課程が別にあった。動き・解剖学・触れることの3つを扱う13日間の集中形式で、本トレーニングの前に受けることが推奨されていたが、必須ではない。現在のLevel 1に相当するのは、実はこちらである。任意の事前研修だったものが、必修の入口になった。関門が、入る前の書類審査から、Level 1を修了したかどうかへ移ったことになる。
各段階で何を学ぶのか、誰が教えるのかについては、別の記事に詳しくまとめた。
→ ヨーロッパのロルファーとしての認定までの歩みについて〜ヨーロッパ・ロルフィング協会・認定トレーニング
出願要件をどう満たしたか
私の場合、出願の時点で満たしていなかったのは手技の要件だった。マッサージや指圧の資格を持っていなかったからである。
そこで、自分の経験を具体的に示した。全米ヨガアライアンスの200時間の指導者資格。30人以上の生徒に対する合計50時間を超えるハンズオンの経験。ヨガの指導で、ポーズごとに解剖学の知識に基づいて手で誘導していること。加えて、博士号による解剖学・生理学の素地。これらを書いて送り、教育委員会の判断を経て、Phase Iへの出願資格が認められた。
ただし条件が付いた。Phase Iが始まるまでに、肌に直接触れる練習をしておくこと。そしてPhase Iの期間中に全教師が評価し、解剖学や触れる技術が不十分と判断されれば、Phase IIへ進む許可は出ない、と。
あわせて、この機会にタイ古式マッサージの資格を取った。要件を満たすためだったが、初めて身につけたボディワークの技術になった。
要件は形式で決まっているように見えて、実際には何ができるかで判断されていた。事前のボディワーク経験や関連資格がある場合、出願要件について個別に相談できることがある。ただし、読み替えてもらった部分は、そのあと実際に見られることになる。私の場合、Phase I の解剖学の週で条件付きの評価を受けた。
トレーニングで学ぶこと
解剖学・筋膜の構造と機能はもちろん、最も重要なのは Body Reading(身体を読む力)と Touch(触れ方)だ。クライアントの身体がどのような構造的パターンを持ち、何を必要としているかを読み取り、筋膜に適切に働きかける——この2つを同時に育てるのがベーシック・トレーニングの本質だ。
さらに重要なのが、ロルファーとしての在り方(Being)を身体で学ぶことだ。技術を「する」のではなく、クライアントの身体が必要としていることに「応答する」——これがトレーニング全体を貫くテーマだ。
メンタリング・セッション
トレーニングには、教室の外で受ける課題がある。上級ロルファー(Advanced Rolfer)のオフィスを訪ね、個人的に教わるメンタリング・セッションだ。ERAでは認定までに5回受けることが必須になっている。
私が受けたのは次の4人から。
- Keith Graham(ロンドン):2014年と2016年の2回。
- Alan Richardson(ロンドン):2014年。
- Kathrin Grobelnik(ライプツィヒ):2016年。
- Hubert Godard(パリ):2016年。ロルフムーブメントの理論的支柱を築いたロルファー・ダンサーのゴダールから直接メンタリングを受けた体験は、身体と動きへの見方を根本から変えるものだった。
単に技術を習うのではなく、異なるロルファーの視点・在り方に実際に触れることが、学びの深さに直結する。一人ひとり、やり方がまったく違う。同じロルフィングでもこれほど違うのか、というのが率直な感想だった。
ロルフィングの学びを振り返ると、24人の講師の方から学ぶ機会があった。ベーシック・トレーニングで9人、ロルフムーブメント・トレーニングで7人、継続トレーニングで5人、アドバンスト・トレーニングで2人、メンタリングで4人。このうち3人は複数の課程で教わっているので、重複を除いた実人数である。誰に師事するかはトレーニングの深さに大きく影響する。どのロルファー・どのトレーニング講師を選ぶかについては、まず日本のロルファーに相談するのが最もよい近道だ。
ステップ2──継続トレーニング(Continuing Education)
ロルファー認定後、継続的な学びが求められる。アドバンスト・トレーニング受講の条件として、18単位以上の継続トレーニングが必要になる。1日の受講が1単位にあたる。
ERAの場合、この18単位には内訳がある。Intermediate(手技)が10単位、Movement が5単位、選択のワークショップが3単位。ムーブメントが必須として組み込まれているのが特徴だ。
内容は多様で、筋膜・頭蓋骨・神経系・ムーブメント——それぞれの専門家によるワークショップが世界各地で開催されている。
私がベーシック認定後に受けた主な継続トレーニング:
- Neural Fascial Mobilization(Jonathan Martine):神経筋膜の可動性を扱う12日間の集中コース。東京開催。
- Bone Work(Sharon Wheeler):骨格への直接的なアプローチを学ぶ5日間。東京開催。
- Structural Integration for the Cranium(Sharon Wheeler):頭蓋骨への構造的アプローチを学ぶ4日間。シアトル受講。
- Dimensions of Integration(Gael Rosewood):統合の深さを扱うムーブメント系の4日間ワークショップ。東京。
- Trauma Workshop(Lael Keen):身体とトラウマの関係を扱う1日間のワークショップ。東京開催。
- Peter Schwindのワークショップ(ERA):3日間、ERAのトレーニング講師であり、筋膜・構造統合の理論と実践の第一人者。著書『Fascial and Membrane Technique』でも知られるPeter Schwindから直接学ぶ機会は、筋膜へのアプローチの繊細さと体系的な理解を深める上で大きな意味を持った。ミュンヘン開催。
継続トレーニングはロルファーとしての視野と深さを広げる。
ただし、どの講座で18単位を埋めるかは決まっていない。ロルファーの道のりで、学ぶ内容を自分で選べる唯一の段階である。制度の枠組み、5つの分類、講師や地域ごとの傾向については別にまとめた。そして、目の前に選択肢があるときに何を見るかについても書いた。
- ロルファー認定後の継続トレーニング〜アドバンスト・ロルファーへ向けた18単位の枠組みと講師の地図
- 継続トレーニングをどう選ぶか〜講座を選ぶときに見ている4つの基準
- ロルファーへの道──認定までの歩み
- 資格・取得一覧
ステップ3──ロルフムーブメント・トレーニング(任意)
ロルフムーブメントの提供は、ベーシック認定だけでは行えない。別途 Rolf Movement Practitioner の認定トレーニングを修了する必要がある。ERAの課程では、Level 3のあと、Level 4の手前に置かれた独立した課程にあたる。
ERAのロルフムーブメント・トレーニングはPart 1〜3の3部構成で、合計30日間。Hubert Godard が体系化した Tonic Function や Pre-movement といった枠組みを、実践を通じて習得する。ロルフィングが身体の部位に手で働きかけるのに対して、こちらはクライアント自身が動くことを通じて身体に働きかける。
私は2017年7月から2019年12月にかけてミュンヘンでPart 1〜3を修了し、ERA認定の Rolf Movement Practitioner となった。日本国内では数少ないERA認定資格保有者だ。ERAの統計では、ロルファーのおよそ4分の1がこの認定を持っている。
ロルフムーブメントを身につけると、構造へのアプローチと動きへのアプローチが統合され、セッションの幅が大きく広がる。
→ ロルフ・ムーブメントとは何か──動きの質を探究するボディワーク
→ ヨーロッパのRolf Movement Practitionerまでの歩み
ステップ4──アドバンスト・トレーニング(AT)
受講条件
ERAの場合、アドバンスト・トレーニングの受講条件は、認定後3〜7年の実践経験と、継続トレーニング18日間以上の取得だ。ロルフムーブメント認定を取得する場合は、この期間が9年まで延長される。
私自身は、基礎トレーニングからロルフムーブメントまでERAで受けたが、アドバンスト・トレーニングだけは日本ロルフィング協会が主催するものを受講した。ロルファー認定から10年後、2025年のことである。講師は米国からRay McCall、日本から田畑浩良さんの2名だった。
トレーニングの内容
ATはPhase 1(12日間)とPhase 2(12日間)の合計24日間で構成される。外部クライアントへの実践セッションと生徒同士のセッションを通じて、Non-Formulaic(個別対応)・Seeing(観察する力)・Being(在り方)という3つの柱を身体で学ぶ。
技術を「教わる」のではなく、自分の観察力と応答力を根本から鍛え直す24日間だ。
「単なる目視ではない。感覚器官全体を使って身体を聴くことだ」——Jeff Maitland(ロルファー・哲学者)
ATで得るもの
アドバンスト認定後、セッションが変わる。クライアントからよく言われる言葉がある——「何をされたかわからないけど変わった」「以前と全然違う感じ」。これは Non-Formulaic と在り方(Being)がセッションに現れているサインだ。
アドバンスト・ロルファーのセッションがベーシックと何がどう違うのか、クライアントの視点から詳しく知りたい方は、別のGateway記事で解説している。
→ なぜアドバンスト・ロルファーのセッションは「深い」のか── ロルファー認定から10年・3つの違い
→ Advanced Rolferの認定までの歩みについて【総括】
ロルファーになるまでの全体像
課程の日数は、ベーシックが85日、ロルフムーブメントが30日、アドバンストが24日。ただし、日数がそのまま期間になるわけではない。Level 2 と Level 3 はそれぞれ10か月前後に分かれて進むため、ベーシック認定まででおおむね3年前後かかる。そこから3年以上の実践を経てアドバンストへ進むので、最短でも6年ほどの道のりになる。
これはロルフィングが技術だけでなく、身体・経験・在り方の蓄積を必要とする実践体系だからだ。

ロルファーになることを検討している方へ
まず、ロルフィングのセッションを受けることを強くお勧めする。受けることと施すことの両方を体験として知ることが、トレーニングへの動機を明確にする。ERAも、Level 1を始める前に10回シリーズを1〜3回受けておくことを勧めている。
日本国内でロルフィングを受けられるロルファーのリストは、日本ロルフィング協会の認定ロルファー一覧から確認できる。
ロルフィングがどんなものか、受けた人にどんな変化が起きるかを知りたい方は、こちらの記事が入口になる。
→ ロルフィングの10回セッションとは何か
→ ロルフィング体験記──どんな変化が起きるのか
→ ロルフ・ムーブメントとは何か
→ ヨガとロルフィングの接点
ロルフィングはボディワークの中でも学びの深さと期間が特に長い。長期的に学び続ける覚悟と、身体への深い関心が求められる。
どのトレーニング団体・講師を選ぶかについては、まず日本のロルファーに相談することをお勧めする。各団体の特徴・受講費用・日程・言語環境など、最新の情報を持っているのは現場のロルファーだ。セッションを受けながら、トレーニングについて聞いてみるのが最もよい近道だ。
私自身、2013年12月にクライアントとしてロルフィングを受け始め、10回シリーズを受け終えた2014年に「これを学びたい」と決意してトレーニングに入った。その11年後にアドバンスト認定を受けた。長い道のりだが、一歩一歩の積み重ねが実践の深さになる。
→ ロルフィングの10回セッションとは何か
→ なぜアドバンスト・ロルファーのセッションは「深い」のか
→ アドバンスト・トレーニング 記事一覧(37本)
→ ベーシック・トレーニング 記事一覧
ロルファーを目指すことへの疑問・トレーニングの選び方・継続トレーニングの情報など、お気軽にお問い合わせください。
→ お問い合わせ
大塚英文(Ph.D.)|認定アドバンスト・ロルファーTM/ロルフ・ムーブメント・プラクティショナー
東京大学大学院医学研究科博士課程修了。製薬業界を経て、2015年より渋谷でロルフィング®セッションを提供。2006年よりアシュタンガ・ヴィンヤーサ・ヨガを実践・指導。「思考・感情・身体の統合」をテーマに活動。
