ロルファーになるには何が必要か──資格・認定団体・トレーニングの全体像をロルファーが解説

「ロルフィングを受けて身体が変わった。自分もロルファーになりたい」「ボディワークを職業にしたいが、ロルフィングはどうやって学ぶのか」——そういう問いを持つ方に向けて、ロルファー認定までの全体像を解説する。

この記事でわかること:ロルファーになるために必要な認定団体(DIRI・ERA・ABR)の違い、ベーシック・トレーニングの内容と期間、継続トレーニングの条件、アドバンスト・ロルファー認定までの道筋——これらを、実際にERAでトレーニングを受け、日本で、アドバンスト認定を取得したロルファーの視点から解説する。

ロルファーになるための認定団体

ロルフィングの資格を認定する国際的な団体は主に3つある。

DIRI(Dr Ida Rolf Institute)は米国コロラド州ボルダーを本拠とする団体で、Ida Rolfが設立したロルフィング協会の直系だ。トレーニングはUnit 1・Unit 2・Unit 3の3段階で構成されている。米国を中心に展開しており、日本ロルフィング協会(rolfing.or.jp)がDIRIと提携して日本国内でもトレーニングを開催することがある。日本在住者にとって、語学のハードルを下げて受講できる選択肢だ。

ERA(European Rolfing Association / Dr. Ida Rolf Institute Europe)はドイツ・ミュンヘンを本拠とする欧州ロルフィング協会だ。トレーニングはLevel 1・Level 2・Level 3(旧Phase I〜III)の3段階で構成されており、ミュンヘンをはじめ欧州各地・日本を含む世界各地で開催される。私が受けたのはERAのトレーニングだ。ボディワーク未経験の方でも、Level 1(旧称Spectrum)から始めることができる。Level 1は動き・解剖学・タッチの基礎を学ぶ入門コースで、ロルフィングを体験しながら学ぶのに最適な入口だ。

ABR(Associação Brasileira de Rolfing)はブラジルのロルフィング協会で、南米を中心に活動している。日本国内でトレーニングが開催されることもある。

3団体の認定はいずれも国際的に通用し、クライアントへのセッション提供において実質的な差はない。トレーニングの場所・言語・アプローチの細部に違いがあるため、自分のライフスタイルや言語環境に合わせて選ぶことになる。

日本ロルフィング協会 教育関連
ERA ロルファーになるには

ステップ1──ベーシック・トレーニング(約89日間)

トレーニングの構成

ベーシック・トレーニングは、解剖学・触診・筋膜理論・10回シリーズの理論と実践を習得する課程だ。ERAのトレーニングはLevel 1〜3の3段階(旧Phase I〜III)で構成されている。

Level 1(旧Phase I・Foundation:基礎)では動き・解剖学・タッチの基礎を9つのコースで学ぶ。ボディワーク未経験者でも入れる入門段階で、最初の3コース(Movement 1・Anatomy 1・Touch 1)だけ参加してロルフィングが自分に合うかを確認することもできる。

私の場合、トレーニング開始前にタイ古式マッサージの資格を取得し、身体への触れ方・解剖学・ボディワークの基礎を身につけた上でトレーニングに臨んだ。また、ヨガ・インストラクターの資格を持っていたため、ERAとの交渉によってLevel 1(旧Spectrum)が免除となり、直接Level 2から開始することができた。事前のボディワーク経験や関連資格がある場合は、このようにトレーニング開始レベルについて交渉できることがある。

Level 2(旧Phase II・Structural Fascial Bodywork)では10回シリーズの理論と実践を深め、外部クライアントへの初めてのセッションを行う。倫理・開業準備の内容も含まれる。33日間の濃密な課程だ。

Level 3(旧Phase III・Practitioner & Client)では外部クライアントを通じて10回シリーズ全体を習得し、最終試験を経てロルファーとして認定される。30日間。認定後は正式にERAの会員として開業できる。

Supervision Workshop(旧Phase IV)は認定後1年以内に受ける必修の6日間ワークショップだ。開業1年目に直面した課題や経験を持ち寄り、インストラクターの監督のもとで実践を深める。ベーシック・トレーニングの総仕上げとして位置づけられている。

トレーニングで学ぶこと

解剖学・筋膜の構造と機能はもちろん、最も重要なのは「Body Reading(身体を読む力)」と「Touch(触れ方)」だ。クライアントの身体がどのような構造的パターンを持ち、何を必要としているかを読み取り、筋膜に適切に働きかける——この2つを同時に育てるのがベーシック・トレーニングの本質だ。

さらに重要なのが「ロルファーとしての在り方(Being)」を身体で学ぶことだ。技術を「する」のではなく、クライアントの身体が必要としていることに「応答する」——これがトレーニング全体を貫くテーマだ。

私がベーシック・トレーニング中に受けたこと

トレーニング中、ロルファーとしての実践力を深めるためにメンタリング・セッションを受けることができる。私はトレーニング期間中にロンドン・ライプツィヒ・パリでメンタリングを受けた。

Keith Graham(ロンドン):2014年と2016年の2回。

Alan Richardson(ロンドン):2014年。

Kathrin Grobelnik(ライプツィヒ):2016年。

Hubert Godard(パリ):2016年。ロルフムーブメントの理論的支柱を築いたロルファー・ダンサーのゴダールから直接メンタリングを受けた体験は、身体と動きへの見方を根本から変えるものだった。

ERAではメンタリングを5回受けることが認定の必須条件となっている。単に技術を習うのではなく、異なるロルファーの視点・在り方に実際に触れることが、学びの深さに直結するからだ。

ロルフィングの学びを振り返ると、私はベーシック・トレーニングで6人、ロルフムーブメント・トレーニングで7人、継続トレーニングで6人、アドバンスト・トレーニングで2人、メンタリングで4人——合計25人の講師の方から学ぶ機会があった。誰に師事するかはトレーニングの深さに大きく影響する。どのロルファー・どのトレーニング講師を選ぶかについては、まず日本のロルファーに相談するのが最もよい近道だ。

ヨーロッパのロルファーとしての認定までの歩みについて

ステップ2──継続トレーニング(Continuing Education)

ロルファー認定後、継続的な学びが求められる。アドバンスト・トレーニング受講の条件として18日間以上の継続トレーニングが必要だ。

継続トレーニングには多様な種類がある。筋膜・頭蓋骨・神経系・ムーブメント——それぞれの専門家によるワークショップが世界各地で開催されている。

私がベーシック認定後に受けた主な継続トレーニング:

Bone Work(Sharon Wheeler):骨格への直接的なアプローチを学ぶ3日間。Seattle受講。

Neural Fascial Mobilization(Jonathan Martine):神経筋膜の可動性を扱う12日間の集中コース。東京開催。

Structural Integration for the Cranium(Sharon Wheeler):頭蓋骨への構造的アプローチ。Seattle受講。

Dimensions of Integration(Gael Rosewood):統合の深さを扱うムーブメント系ワークショップ。4日間・東京。

Trauma Workshop(Lael Keen):身体とトラウマの関係を扱う1日間のワークショップ。東京開催。

Peter Schwindのワークショップ(ERA):ERAのトレーニング講師であり、筋膜・構造統合の理論と実践の第一人者。著書「Fascial and Membrane Technique」でも知られるPeter Schwindから直接学ぶ機会は、筋膜へのアプローチの繊細さと体系的な理解を深める上で大きな意味を持った。

継続トレーニングはロルファーとしての視野と深さを広げる。どのトレーニングを選ぶかは、自分の関心と目指すクライアント層によって変わる。

ロルファーへの道──認定までの歩み
資格・取得一覧

ステップ3──ロルフムーブメント・トレーニング(任意)

ロルフムーブメントの提供は、ベーシック認定だけでは行えない。別途「Rolf Movement Practitioner」の認定トレーニングを修了する必要がある。

ERAのロルフムーブメント・トレーニングはPart 1〜3の3部構成で、合計約36日間にわたる。ユベール・ゴダール(Hubert Godard)が提唱したTonic Function・Pre-movement・Seeingという理論的枠組みを実践的に習得する。

私は2017年7月から2019年12月にかけてミュンヘンでPart 1〜3を修了し、ERA認定のRolf Movement Practitionerとして認定を受けた。日本国内では数少ないERA認定資格保有者だ。

ロルフムーブメントを身につけると、構造へのアプローチと動きへのアプローチが統合され、セッションの幅が大きく広がる。

ロルフ・ムーブメントとは何か──動きの質を探究するボディワーク
ヨーロッパのRolf Movement Practitionerまでの歩

ステップ4──アドバンスト・トレーニング(AT)

受講条件

ERAの場合、アドバンスト・トレーニングの受講条件は「認定後3〜7年の実践経験」と「継続トレーニング18日間以上の取得」だ。ロルフムーブメント認定を取得する場合は、期間が9年まで延長される。条件を満たして初めてATに参加できる。

私はロルファー認定から10年後、2025年に日本でATを受講した。ロルフムーブメント認定を取得していたため延長条件に該当し、この10年間の実践と継続トレーニングの積み重ねがATでの学びの土台となった。

トレーニングの内容

ATはPhase 1(12日間)とPhase 2(12日間)の合計24日間で構成される。外部クライアントへの実践セッションと生徒同士のセッションを通じて、Non-Formulaic(個別対応)・Seeing(観察する力)・Being(在り方)という3つの柱を身体で学ぶ。

技術を「教わる」のではなく、自分の観察力と応答力を根本から鍛え直す24日間だ。

「単なる目視ではない。感覚器官全体を使って身体を聴くことだ」——Jeff Maitland(ロルファー・哲学者)

ATで得るもの

アドバンスト認定後、セッションが変わる。クライアントからよく言われる言葉がある——「何をされたかわからないけど変わった」「以前と全然違う感じ」。これはNon-Formulaicと「在り方(Being)」がセッションに現れているサインだ。

アドバンスト・ロルファーのセッションがベーシックと何がどう違うのか、クライアントの視点から詳しく知りたい方は、別のGateway記事で解説している。

なぜアドバンスト・ロルファーのセッションは「深い」のか──ロルファー認定から10年・3つの違い
Advanced Rolferの認定までの歩みについて【総括】
参加を決意〜アドバンスト・ロルフィング研修・2025年4〜7月

ロルファーになるまでの全体像

ベーシック認定からアドバンスト認定まで、最短でも8〜10年はかかる。これはロルフィングが「技術」だけでなく「身体・経験・在り方」の蓄積を必要とする実践体系だからだ。

ロルファーになることを検討している方へ

まず、ロルフィングのセッションを受けることを強くお勧めする。「受けること」と「施すこと」の両方を体験として知ることが、トレーニングへの動機を明確にする。

日本国内でロルフィングを受けられるロルファーのリストは、日本ロルフィング協会の認定ロルファー一覧から確認できる。

日本の認定ロルファー一覧

ロルフィングがどんなものか、受けた人にどんな変化が起きるかを知りたい方は、こちらの記事が入口になる。

ロルフィングの10回セッションとは何か
ロルフィング体験記──どんな変化が起きるのか
ロルフ・ムーブメントとは何か
ヨガとロルフィングの接点

ロルフィングはボディワークの中でも学びの深さと期間が特に長い。長期的に学び続ける覚悟と、身体への深い関心が求められる。

どのトレーニング団体・講師を選ぶかについては、まず日本のロルファーに相談することをお勧めする。各団体の特徴・受講費用・日程・言語環境など、最新の情報を持っているのは現場のロルファーだ。セッションを受けながら、トレーニングについて聞いてみるのが最もよい近道だ。

私自身、2013年にクライアントとしてロルフィングを受け、「これを学びたい」と決意してトレーニングに入った。その決意から11年後にアドバンスト認定を受けた。長い道のりだが、一歩一歩の積み重ねが実践の深さになる。

ロルフィングの10回セッションとは何か
なぜアドバンスト・ロルファーのセッションは「深い」のか
アドバンスト・トレーニング 記事一覧(37本)
ベーシック・トレーニング 記事一覧


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大塚英文(Ph.D.)|認定アドバンスト・ロルファーTM/ロルフ・ムーブメント・プラクティショナー
東京大学大学院医学研究科博士課程修了。製薬業界を経て、2015年より渋谷でロルフィング®セッションを提供。2006年よりアシュタンガ・ヴィンヤーサ・ヨガを実践・指導。「思考・感情・身体の統合」をテーマに活動。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka