ロルフィングの10回セッションとは何か──身体が変わる3つのフェーズと各回の流れ

はじめに

「ロルフィングはなぜ10回なのか」「各回で何が行われるのか」「受けるとどう変わるのか」

このページでは、10回セッションの全体像をまとめている。各回の詳細記事へのリンクも整理しているので、気になる回から読み始めることができる。

用語で引っかかったときは、こちらに戻ってきてほしい。

なぜ10回なのか

ロルフィングは1〜2回で終わりにはならない。

身体の変化には順序がある。表層の筋膜が解放されないと、深層にはアプローチできない。深層の構造が整わないと、全体の統合は起きない。この順序を経ることで、変化が身体に定着し、セッションが終わった後も変容が続く。

なお、10回という数がどこから来たのかについては、はっきりしないところがある。もともとは7回で一区切りだった。その経緯は、このページの最後にまとめた。

3つのフェーズ

10回は3つのフェーズに分かれる。

第1フェーズ(1〜3回目)は表層の解放。身体の外側を覆う層に触れ、深層へ入るための土台を作る。

第2フェーズ(4〜7回目)は深層の統合。骨盤底、腸腰筋、仙骨、首。身体の芯にあたる部位を扱い、中心軸を通していく。

第3フェーズ(8〜10回目)は全体の統合。部位を扱う視点から、身体全体が有機的に動くための視点へ切り替わる。

空間軸という見方

各回には空間軸というテーマがある。身体感覚の統合(Embodiment)という観点からみると、各セッションは身体の異なる空間軸を扱っている。

1〜2回目は上下。上半身(呼吸)と下半身(足)を整え、身体の縦軸の土台を作る。足は左右に2つあるので、2回目から左右という軸も入ってくる。

3回目は前後。背骨と前後のバランスが変わり、身体が立体として捉えられるようになる。

4回目からは中心軸。骨盤底、腸腰筋、仙骨という身体の芯に入っていく。

上下、前後、中心軸。この順序が10回の骨格になる。

そしてもう一つ、上半身を扱う回と下半身を扱う回が交互に組まれている。上の系列は1、3、5、7回目。下の系列は2、4、6回目。上を緩め、下を整え、また上へ戻る。この往復を繰り返しながら、少しずつ深い層へ降りていく。

呼吸と歩行という2つの動き

10回を貫いている線がもう一つある。

呼吸と歩行は、誰もが一日中繰り返している2つの動きだ。だからセッションの冒頭で、この2つを観る。すべての身体に当てはまる手順を作るなら、すべての人が行っている動きから観るしかない。

1回目で呼吸を扱い、2回目で歩行の土台を扱う。3回目で両者が出会い、5回目でより深い層で出会い、10回目で一つの流れになる。別々に整えられていた2つが、10回をかけて一つの身体の動きになっていく。

セッションはどのように進むか

各セッションは「観察→介入→再観察」という流れで進む。

冒頭で、クライアントの立ち方・歩き方・呼吸のパターンを観察する。ロルフィングではこれをBody Readingと呼ぶ。どこが過度に緊張しているか、重力の軸からどうずれているか。身体を読むところからセッションが始まる。

次に筋膜へのアプローチを行い、セッション後にもう一度、立ち方や動きを確認する。変化を施術者だけでなくクライアント自身が感じることで、身体への気づきが育つ。この気づきの積み重ねが、セッション後の変化を持続させる。

アドバンスト・トレーニングで講師のRay McCallと田畑浩良さんが繰り返し強調したのは、ロルフィングで最も重要なのは技術ではないということだった。クライアントの身体が何を必要としているかを聴く知覚力と、在り方(Being)のほうが先に来る。

変化は、起こすものではなく起きる

セッションで起きていることを、施術者が何かをして、クライアントが何かをされる、という形では捉えていない。

触れられているうちに呼吸が深くなる。条件が整うと筋肉が自ずと動きはじめる。仙骨は、動き出したところで手を離す。する側にも、される側にも属さない出来事が起きている。

古代ギリシャ語には、この種の出来事を表す態があった。中動態と呼ばれる。ロルファーがすることは、変化を起こすことではなく、変化が起こりうる場を保つことになる。

制限は、直すべきものではない

呼吸が浅い、足裏が硬い、頭が前に出ている、腸腰筋が縮んでいる。こうした状態を、欠陥として扱わない。

理由なく硬くなる筋肉はない。固めることで支えていたもの、守っていたものが必ずある。制限と可能性は対で存在する。いま制限になっているものは、かつてその身体が選べる範囲での最善だった。

だからセッションですることは、悪い癖を取り除くことではない。その支え方が要らなくなったことを、身体が受け取れる条件を作ることになる。

何をもって、整ったとするか

肩こりが軽くなったか、姿勢が良く見えるか。それ自体は判定の基準にしていない。

セッションの終わりに見ているのは、身体が重力とよりよい関係にあるかどうかだ。重力が負担ではなく、資源として働いているか。症状や体感の変化は、その関係が変わった結果として現れる。

マッサージや整体との違いはここにある。症状を取り除くのではなく、身体が本来の働きを取り戻す構造を作る。ロルフィングは技法によってではなく、この目的によって定義されている。

第1フェーズ(1〜3回目):表層の解放

1回目:呼吸を整える──上半身の表層

呼吸は全身の筋膜と連動している。胸郭・肋間・横隔膜の表層筋膜に触れると、全身の緊張パターンが緩みはじめる。胸まわりが広がり、仰向けで背中が床に触れる面積が増える。肩の力の抜きどころが分かる。呼吸はまた、自分の内側を感じ取る入口にもなる。

2回目:足を整える──下半身の表層

足裏の緊張は、筋膜を通じて腰・肩・首まで連なる。足が床からの情報を受け取れる状態に戻ると、接地の仕方が変わる。足裏が床に触れている面積が増え、歩幅や着地の音が変わる。腰や肩の緊張が、足元からの変化として抜けていく。

3回目:前後のバランスを整える──側面と背骨

肩・腕・背骨・腿の側面に触れ、平面で捉えていた身体が立体として感じられるようになる。背骨のS字カーブが働きを取り戻し、腰への負担が軽くなる。「身長が伸びた感じがする」という体感がよく報告される回だ。

第2フェーズ(4〜7回目):深層の統合

4回目:表層から深層へ──床との接触面から中心へ

足の裏と坐骨から、内転筋を通って骨盤底へ意識が届く。骨盤の底に床があるような感覚が生まれ、呼吸が骨盤まで届く。「自分の居場所」が定まったような感覚が出てくる、内的な変化の大きい回だ。

5回目:内臓と腸腰筋を整える──背骨の前側

背骨の前側に入る。腸腰筋は背骨と脚を直接つなぐ筋肉で、内臓の動きとも深く関わる。腹の奥から力が出る感覚が戻り、歩くのが楽になる。呼吸と歩行が、深い層で出会う回でもある。

6回目:仙骨と骨盤を整える──身体の真ん中

身体の真ん中が呼吸とともに動きはじめる。座ったときに坐骨で支えられる感覚が出て、腰の奥の詰まりが軽くなる。立ち方や歩き方だけでなく、人との距離の取り方まで変わることがある。10回の中で、触れる力がいちばん小さい回でもある。

7回目:首と肩を整える──内耳感覚

下からの支えが通ってくると、頭は自ずと背骨の真上に乗る。視野が広がる、声が変わる、呼吸がさらに深くなる、顎まわりの力が抜ける。深層のフェーズと上の系列が、ここで同時に閉じる。

なお、アイダ・ロルフは7回目を10回シリーズの中心として説明していた。1回目から6回目までは7回目のための準備であり、7回目で行ったことを8回目から10回目で統合していく、という見方だ。フェーズとして見るか、中心として見るか。どちらの見方も成り立つ。

第3フェーズ(8〜10回目):全体の統合

このフェーズを貫くのは3つの問いだ。クロージングに向けて何をすべきか。これまで学んだことは何か。今後どういった方向へ進むのか。技術的な問いではなく、クライアント自身への問いでもある。

8回目と9回目には、対になる主題がある。8回目は、在ること、存在、構造、静止、安定。9回目は、流れ、為すこと、機能、動き、統合。まず動かずに支えられる状態を作り、その上で動きながら保てる状態へ移る。

8回目:肩帯と骨盤帯──2つのGirdle

2つの帯(Girdle)は、それぞれ上肢と下肢の動きの基礎になり、互いに連動している。首こりが軽くなり、胸まわりが自由になる。腕と脚が、胴体から動かせるようになる。

9回目:連動性──手先・足先まで

手先と足先までを含めた全身が、一つの動きとして協調する状態を目指す。骨盤帯と肩帯を意識せずに歩けるようになり、手足の末端まで動きが届く。骨盤帯と肩帯が透明になると理想的だ、とトレーニングでは表現されていた。

10回目:統合──自立への扉

残った箇所を仕上げるのではなく、スペースを残し、時間をかけて重力によって身体が整っていくのを促す。姿勢を保つことに使っていた力が戻り、気づいたときに自分で整えられるようになる。クライアントの自立を育てることが、この回の本質的な目的になる。

セッションとセッションのあいだ

10回は、1〜2週間に1回のペースで進む。数か月かけて受けることになるので、セッションを受けていない日のほうが圧倒的に多い。

間隔について、Sharon Wheelerから聞いたことがある。若い方は代謝がいいので2週間に1回を目安に、年長の方は1か月あけるとよい。そして10回シリーズを何度か受ける場合には、そのあいだを6か月あけるとよい、と。

もう一つ、覚えておくとよいことがある。セッションを終えた後に疲れを感じることがある。それまで使われていなかった筋肉が使われはじめるためで、その筋肉が動き出すには1〜2週間かかる。セッションの直後は、この疲れのほうに注目したほうがいい、というのが彼女の助言だった。

変化はセッションの中だけで起きるのではない。むしろ、あいだの日々のほうで定着していく。

10回を通じて何が変わるのか

身体的な変化として報告されることが多いのは、姿勢の改善、慢性的な肩こり・腰痛の軽減、呼吸の深まり、歩行の改善だ。

それ以上の変化を語る方も多い。頭が整理されるようになった、感情の浮き沈みが落ち着いた、自分軸がはっきりした。身体の構造が変わることで、感情・思考・自律神経のパターンも変わるためだと考えられる。

アドバンスト・トレーニングで、Ray McCallはロルフィングの目的をこう述べた。クライアントの身体とシステムを支えて、その人自身の道を歩む手助けをすること。その人が本来の自分である状態を促すプロセスだ、と。姿勢の改善は、その入口に過ぎない。

体験記

山田康喜様(理学療法士)は10回セッションを終えて、体重が10kg減少し、腰痛・膝痛がほぼ消失、不眠も解消された。身体の専門家として「頭でわかっていた」ことが、セッションを通じて身体の変化として現れた体験だ。

柿崎亜耶子様は腰痛の改善と同時に「内面的な部分と連動して身体の中の詰まり・滞りを自分で捉えられるようになった」と報告した。

10回という数は、どこから来たのか

ここからは、10回シリーズの成り立ちの話になる。受けるかどうかを考えている段階では、読み飛ばしてもらってかまわない。

10回という数は、最初からあったものではない。かつては7回で一区切りとされ、基礎トレーニングでも7回を終えた時点で乾杯が行われる。統合のための3回は、後から加えられたものだ。

では、その7回はどう決まったのか。

2016年に、アイダ・ロルフから直接学んだ数少ないロルファーの一人であるSharon Wheelerに、この質問をしたことがある。アイダはどうやって10回セッションを思いついたのか、と。

返ってきたのは、アイダは自分の過去について一切語らなかった、という答えだった。Sharonはそれを一言、Divine Inspirationと表現した。

そのうえで、彼女は自分の推測を述べている。アイダは、足をしっかり施術すると肩が落ちて広がる、と言っていた。だとすれば、もともとは足を扱う回が最初にあったのではないか。呼吸の回は、足の感覚をつかめない人がいるために、後から前に置かれたのではないか。

順序が、身体の論理ではなく、受け手の感じやすさから決まった可能性がある、という見立てになる。

それでも、この順序は50年以上機能してきた。

そして2025年のアドバンスト・トレーニングで扱われたのは、決まった順序を外したところで何を手がかりにセッションを組み立てるか、という問いだった。クライアントが何を期待しているか、どの原則が足りていないか、どこから働きかけるか。

手順の起源を疑うことと、手順を外して組み立てることは、同じ問いの両端にある。

10回でなければならない理由を、証明することはできない。ただ、この順序を通ると身体が変わることは、11年のあいだ見てきた。

もっと深く読む

フェーズごとの解説

筋膜・姿勢の科学


10回を終えた方・さらに深めたい方へ

10回のシリーズを終えた後、さらに統合を深めたい方のためにアドバンスト・シリーズ(5回)がある。決まった手順をなぞるのではなく、その時点の状態に合わせて毎回設計する。アドバンスト・ロルファーは、この上位のセッションを提供できる資格を持つ。

ロルフィングに興味を持ち、自分もロルファーになりたいという方へ。認定団体(DIRI・ERA・ABR)の違い、ベーシックからアドバンスト認定までの全体像を解説している。

ロルフィングの変容と「認識のOS」の更新はつながっている。思考・感情・身体の統合というテーマをより深く扱っているのが、Mind and Bodywork Labだ。

受ける前に確認してほしいこと

強い痛みが出ている、原因が分からない症状がある、怪我や手術の後である。こうした場合は、まず医療機関で診てもらってほしい。ロルフィングは医療ではないので、診断も治療も行わない。

治療を受けている最中の方も、主治医に相談したうえで受けていただくことになる。並行して受けること自体に問題はないが、いま何を優先するかは、診ている側と一緒に決めるほうがいい。

そして、10回は数か月かかる。その期間を取れる時期かどうかも、判断の材料になる。

まず体験セッションで、身体に何が起きているかを確認するところから始められる。


大塚英文(Ph.D.)|認定アドバンスト・ロルファー™/ロルフ・ムーブメント・プラクティショナー
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(医学博士)。外資系製薬会社でメディカル・マーケティング業務に従事した後、2015年より渋谷でロルフィング®セッションを提供。「科学と実践の統合」をテーマに活動。