5回目で背骨の前側が整うと、6回目では後ろ側に入る。注目するのは仙骨と尾骨、そしてそれを取り巻く骨盤だ。
6回目の位置づけ
4〜7回目は中心軸を扱う第2フェーズにあたる。4回目で足場を作り、5回目で前側を通した。6回目はその裏側にあたる。
深層のセッションがどういう性質のものかは、別の記事にまとめている。
仙骨とは何か
仙骨は骨盤の一部であり、背骨の終わりにあって、身体の中心に位置する。
背骨につながっているため、仙骨が傾けば中心が傾き、他の椎骨にも歪みが生じやすくなる。さらに仙骨は靭帯を通じて大腿骨、つまり脚ともつながっている。骨盤全体も靭帯によって幾重にも巻かれており、骨盤・背骨・脚がどれほど密につながっているかが読み取れる。

骨盤は寛骨(腸骨・恥骨・坐骨)からなり、すべてが連続している。

動かない仙骨が、支えてきたもの
セッションで「仙骨は呼吸とともに動いている」と伝えると、意外に思われる方が多い。実際に仙骨は動いており、呼吸が浅い方はその動きが弱まる傾向がある。
アイダ・ロルフは、整った身体には見分けのつく徴があると述べ、その一つとして、呼吸のたびに仙骨が動くことを挙げていた。6回目が目指しているのは、この状態になる。
動かない仙骨を、不具合として扱わない。
骨盤は身体の中心にあるため、そこが揺れれば全体が揺れる。腰に負担のかかる時期、転倒や出産を経た身体、長く座り続けてきた生活。どの場合も、骨盤を固めることが安定を確保する手立てになる。動かさないことで、その人は立っていられた。
動きが戻るのは、固めなくても安定していられる条件が揃ったときになる。
仙骨は動く──呼吸との関係
仙骨の動きは、左右にある腸骨に対してどちらを向いているかで捉える。仙骨と腸骨の間の関節を仙腸関節と呼ぶ。
座位では、腸骨の幅が狭まり、坐骨の幅が広がって、仙骨は腸骨に対して前傾する。これをnutation(うなずき運動)という。ラテン語で「うなずく」を意味する語に由来する。

立位では、腸骨の幅が広がり、坐骨の幅が狭まって、仙骨は後傾する。counter-nutation(起き上がり運動)だ。

前傾と後傾のリズムが、呼吸に合わせて繰り返される。坐骨に手を当てたまま立つ・座るを繰り返すと、仙骨と骨盤の動きは体感できる。
ヨガやピラティスで身体が硬いと感じている方には、この仙骨の動きが意識できていないケースが多い。仙骨が体感できるようになると、難しかったポーズが急にできるようになったり、力を抜いたまま身体を動かせるようになったりする。
アシュタンガヨガの後屈系のポーズを練習していた頃、6回目のセッションを受けたあたりで難関のカポタ・アーサナが一気に深まり、驚いた経験がある。
仙骨ワーク(Pelvic Lift)──手を離す
テーブルワークを終える前に、仙骨に手を当てる。そして仙骨が動き出した段階で、手を離す。仙骨ワーク、あるいはPelvic Liftと呼ばれる手技だ。
この手技が示しているものは、6回目の性質そのものだと思う。仙骨を動かすのではない。動き出すのを待つ。動き出したら、それ以上は関わらない。手を当てている時間の長さは、施術者が決めるのではなく、身体のほうが決める。
「仙骨が落ちた」「呼吸が深まった」という感想をいただくことが多い。身体の真ん中の動きが戻るため、上半身と下半身が結びつく。
頭蓋仙骨療法との関係
オステオパシーの手技の一つに、頭蓋仙骨療法(Cranio Sacral Therapy)がある。頭蓋骨から骨盤までを軽く触れることで、脳脊髄液の流れが変わるとされる手技だ。体液の流れが改善することで、自然治癒力が働きやすくなると考えられている。
仙骨を強くぶつけた後にアレルギー症状が出た、という方に出会ったことがある。因果を確かめられる話ではないが、仙骨まわりの状態が全身に及ぼす範囲の広さを考えさせられる経験だった。
この手技の背景については、大阪でソースポイントセラピーの補講を受けたときに学んだ。William Sutherlandから始まる頭蓋ワークの歴史、オステオパシーの外へどう広まっていったか、そしてエネルギーワークとの関係。仙骨と頭蓋は、同じ流れの両端にある。
仙骨が動き出すと、自律神経のバランスが副交感神経へ傾き、腹式呼吸が入りやすくなる。6回目のセッション中に眠ってしまう方が多いのは、仙骨付近が緩んでいる証拠だと見ている。
触れる力が、いちばん小さい回
6回目には、他の回と違う特徴がある。触れる力がいちばん小さい。
仙骨ワークは、手を当てて待つだけだ。頭蓋仙骨療法も、軽く触れる手技として組み立てられている。押し込むことも、深く入ることもしない。それでいて、この回はセッション中に眠ってしまう方が多く、変化の実感も大きい。
触れる強さと、起きる変化の大きさは比例しない。
これは、この回だけの話ではない。ロルフィング全体が辿ってきた変化でもある。
1980年代以降、バイオダイナミック・クラニオセイクラルの考え方が、オステオパシーの外へ広まっていった。ロルフィングのコミュニティも、その影響を大きく受けている。アイダ・ロルフの時代の強い圧とは異なり、身体と空間が自然に組み替わるための、適切な在り方が重視される方向へ変わってきた。
2025年のアドバンスト・トレーニングでRay McCallと田畑浩良さんがライトタッチを重んじたのも、この流れの上にある。
このことは、ロルフィングの中でエネルギー的と呼ばれる領域につながっていく。ただ、エネルギーワークという語は曖昧だ。手を触れないこと、イメージを使うこと、遠隔で行うこと、強い力を使わないこと。どれもその定義にはならない。あらゆる徒手の手技は、物理学の意味でのエネルギーを使っている。
だから、道具で分けるのをやめて、どんな情報が渡っているかで記述するという考え方がある。この記事で毎回「身体が受け取る情報」という節を立てているのは、その考え方に沿っている。6回目に渡っているのは、真ん中は動いてよいという情報だ。それを伝えるのに、強い力は要らない。
第二チャクラと社会性
仙骨は、ちょうど第二チャクラの位置にある。チャクラの体系では、人間関係、感情、物欲、性のエネルギーに関わるとされる場所だ。
ここが整っていないと、環境の変化に柔軟に対応しにくい、人とのやりとりが取りにくい、情緒が揺れやすい、といったことが起こるとされる。逆に整っていると、表情が豊かになり、自分の気持ちに正直でいられ、創造性が働きやすくなるという。
チャクラはロルフィングの理論から出てきたものではない。同じ場所を別の入口から見ている記述として扱っている。
ただ、実際に骨盤が安定すると、立ち方や歩き方だけでなく、人との距離の取り方まで変わったという報告を受けることは多い。中心軸を整えることが自分で判断できる軸を身につけることだとすれば、6回目はそこに社会性という側面が加わる回だといえる。
チャクラを持ち出さなくても説明はつく。この回で起きるのは、背面を感じられるようになることと、胴体の内と外の関係が同時につかめるようになることだ。しかも支えが下から届いている。自分の後ろ側に、自分では見えない支えがある、と分かる。
それは強い体験になりうる。自分の身体をどう捉えているかが変わり、そこから自分自身の捉え方も変わっていく。骨盤が安定すると人との距離の取り方が変わる、というのは、その先に起きることだと考えている。
この回の施術は、うつ伏せの時間が長くなる。だからこそ、途中で身体を動かしてもらい、いま何が起きているかを一緒に確かめることが要る。変化が起きた場所を、その場で言葉と動きに結びつけておく。そうしないと、せっかくの変化が定着しない。
セッションの冒頭で観ているもの
冒頭のBody Reading(立ち方や歩き方の観察)で見ているのは、次のような点だ。
- 立位と座位で、仙骨の傾きがどう変わるか
- 左右の坐骨に均等に体重が乗っているか
- 腸骨の高さの左右差
- 歩行中、骨盤が前後・左右にどう動いているか
- 呼吸に伴って仙骨が動いているか
6回目に整えていく条件
仙骨と仙腸関節そのものを動かしにいくことはしない。周辺の筋肉(脛、臀筋群など)が緩み、動くための余地ができると、仙骨は自ずと動きはじめる。
結果として背骨の前後のバランスが整うため、5回目で扱った腸腰筋がさらに緩む。
この回で、身体が受け取る情報
6回目にしていることを、仙腸関節をモビライズした、臀筋群をリリースした、と手技で説明すると、実際に起きていることから離れる。
受け取っているのは、真ん中は動いてよいという情報だと考えている。骨盤は固めて安定させる場所ではなく、呼吸に合わせて動く場所だ。この情報が届くと、固めることで得ていた安定が、動きながら保つ安定へ置き換わりはじめる。
何をもって、整ったとするか
仙骨が動くようになったかどうかを、それ自体では成果としない。
セッションの終わりに見ているのは、重力との関係のほうだ。上からの重さと下からの支えが、仙骨のところで出会っているか。骨盤が、重さを受け止めて逃がす場所として働いているか。
セッション後に起きること
- 座ったときに坐骨で支えられる感覚が出る
- 腰の奥の詰まりが軽くなる
- 呼吸が骨盤まで届く
- 立ち方や歩き方、人との距離の取り方が変わる
- セッション中から深く眠くなる
次の回へ
骨盤まで整うと、その上に首と頭を乗せる段階に入る。7回目では、肩・首・顔・頭を扱い、内耳感覚を呼び起こしていく。
- 7回目:首と肩を整える──内耳感覚を呼び起こす意義
- 深層セッションとは何か──4〜7回目に起きること
- ロルフィングの10回セッションとは何か──身体が変わる3つのフェーズと各回の流れ
- ロルフィング用語集──10回セッションを読むために
トレーニングでこの回をどう学んだかは、こちらに書いている。
大塚英文(Ph.D.)|認定アドバンスト・ロルファー™/ロルフ・ムーブメント・プラクティショナー 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(医学博士)。外資系製薬会社でメディカル・マーケティング業務に従事した後、2015年より渋谷でロルフィング®セッションを提供。「科学と実践の統合」をテーマに活動。
