はじめに
私は2015年6月より、ロルフィングという手技を使ったセッションを提供している。よく聞かれる質問の一つに、
「整体、マッサージとロルフィングはどう違うのか?」
についてだ。
整体やマッサージは、主に痛い部分(肩こり、腰痛、首凝り)の症状を中心に施術を行っているところに特徴がある。症状のある場所に直接働きかけるので、その場での変化は分かりやすい。
一方で、ロルフィングは、「構造」を整えると自ずと「身体の働き(機能)」が整うとして捉える。土台を整えることを第一に考えるため、毎回毎回手順を決めて、全身を施術していく。
興味深いことに、毎回セッションを行った後、効果がある程度持続することだ。これは「構造」の中でも「筋膜」に注目し、バランスを整えていくからで、ご自身の中で楽な姿勢を自然と見つかるように変化していくから。
そして、元に戻ろうとすると、違和感を感じてくるので、身体が、楽な姿勢の方を好むようになり、その姿勢を保ちたくなる時間が増えていくのだ。
以下に、ロルフィングと整体・マッサージとの違いについて、まとめたので、ご興味のある方チェックくださいね。
| ロルフィング | 整体・マッサージ | |
|---|---|---|
| 見ているもの | 全身の構造。筋膜を中心に | 症状のある箇所 |
| 時間 | 60〜75分 | 10〜20分が多い |
| 進め方 | 10回の手順が決まっている。1〜2週に1回、その後2〜3ヶ月に1回 | 必要に応じて。週1〜2回など |
| 資格 | 欧米の認定機関で基礎トレーニングを修了し、ロルフ・ムーブメントの認定も取得 | あん摩マッサージ指圧師は国家資格。整体には資格制度がない |
どちらが優れているという話ではない。見ている場所が違う。症状のある箇所に直接働きかけてほしいときもあれば、身体全体の組み立てのほうを扱いたいときもある。
「構造」を整えるとは?〜本来の場所を一緒に見つける
私は、構造が整うとは、「身体が「本来の場所」=「答え」をわかっている」という意味で使っている。
毎回、クライアントさんが施術部屋にお越しの際、「座り方・立ち方・歩き方」を観察する。そこで、「楽な姿勢」は何か?を手掛かりに、一人一人にあった答えを、クライアントさんと一緒になって見つけていくのだ。
残念なことに、人は成長していくにつれて、親、学校の先生、会社を通じて、
「どういった姿勢が正しいのか?」「間違っているのか?」
人間関係の中で学んでいく。そして、「正しい姿勢・悪い姿勢」(又は姿勢矯正)を頭で考えるようになり、身体の感覚を大切にしなくなる。
どんなに知識があっても、人間の身体についてわかっているのはごく一部。しかも、解剖学を含めた知識を知っていればいるほど、身体の感覚から離れていってしまう。
大事になるのは、「楽な姿勢」だ。「正しい姿勢」「間違った姿勢」というのは答えが一つになってしまうが、「楽な姿勢」となると答えは、一人一人違ってくる。体格・骨格が違うからだ。
だからこそ「構造」に注目して、セッションを行うことが重要になるのだ。ポイントは、クライアントと一緒になって見つけていくことだ。
クライアントの中には、長年の習慣にとらわれてしまい、姿勢が整うのに時間がかかる方が多く見受けられる。必ず、自分で楽な姿勢を見つけるのだ、と決意された方は、ロルフィングの手順を踏んでいくと、身体の中で何かが動き、構造が整う意味を体感できるようになっていく。このような場面を何度も見る幸運に恵まれた。
まとめ
今回は、ロルフィングと整体・マッサージが、それぞれどこを見ているのかをまとめた。
症状か、構造か。この分かれ目は、どちらが正しいかではなく、何を扱おうとしているかの違いになる。
2026年9月の注記
この記事を書いたのは2023年5月で、よく聞かれる質問に答えるつもりで書いた。整体やマッサージとどう違うのか、と。
その問いへの答えは、後に別の場所が引き受けている。「なぜ肩こり・腰痛はマッサージでは治らないのか」という固定ページで、筋膜の連鎖、代償のパターン、背骨のS字カーブまで含めて、はるかに厚く扱っている。それぞれが適しているのはどういう場合か、という話も両方について書いた。比較として答えるなら、あちらのほうが役に立つ。
そうすると、この記事には何が残るのか。読み返して気づいたのは、比較をやめた後半のほうだった。
「楽な姿勢」と「正しい姿勢」。この対は、固定ページのほうには書いていない。正しい姿勢という言い方をすると答えが一つになるが、楽な姿勢なら答えは一人ずつ違う。体格も骨格も違うのだから、当たり前のことだ。
そして、その「正しい姿勢」をどこで身につけたのか、という指摘。親から、学校の先生から、会社の同僚や上司から。人間関係の中で学んでいる。頭で考えるようになった分だけ、身体の感覚から離れていく。これも、この記事にしかない。
書いていたときは、前半の比較のほうが本題のつもりだった。表まで作っている。だが実際に残ったのは、比較の枠から外れたところだった。
後年、この問いに別の答え方をしている。10回シリーズの1回目について書いた記事で、ロルフィングは技法によってではなく目的によって定義されている、と述べた。何を触るか、何分かけるか、どんな資格かではなく、何に向かっているか。その目的とは、重力との関係を変えることだった。
読み返すと、この記事には重力という語が一度も出てこない。構造と書いてあるが、何に対する構造なのかは書いていない。比較の枠の中にいるあいだは、そこまで行けなかったのだと思う。
