前回に続きモダリティについて。今回はロルフィングとの関連で取り上げたいと思う(【RolfingコラムVol.79】参照)。
Phase IIIのトレーニングでJörg先生、Andrea先生のクライアント・セッションを見る機会があるが、モダリティを変える場面がしばしば見ることができる。例えば、歩いているときに、歩行速度に緩急をつけること、あるいは身体の後側に意識を向けることで目の力を抜くこと等。
モダリティとは、「知覚する際にどのような身体の使い方をするのか」であり、この点については前回の本コラムでNLPとの関連で触れた(【RolfingコラムVol.79】参照)。その時に、「問題のある状態」(人に怒られた体験)と「うまくいっている状態」(人から褒められた体験)で違ったVAKの(サブ・)モダリティの形で保存されることについても触れた。そして、「人は出来事に反応するのではなく、出来事の記憶に反応する」と述べた。
身体観察についてもモダリティを利用することができる。例えば、ヨガのポーズをとる場合。ヨガのポーズをとる際に、吸うときに空間を広げる意識、吐くときに身体を伸ばす意識というようにヨガのインストラクターから学ぶ。それを逆手にとって、逆をおこなうとどうなるのか?というのもモダリティの変化を見る一つの機会。実際に、ヨガのインストラクター出身の生徒の身体観察の際、興味深いことが起きた。
通常、立位のポーズ(タダーサナ)から両手を上に挙げる場合には、吸気(息を吸う)を行う。その時、身体の後側の筋肉(僧帽筋、菱形筋)を使って両側の手を押し上げるというところを見ることができた。次に同じような呼気(息を吐く)を行いながら、同じような動きをするとどうなるのか?を試した。驚くべきことに、手をあげる動作で戸惑っている仕草を示しながら、手を挙げたのだが、その際に後側の筋肉を使うことなく身体全体に力を入れることなくスムーズに持ち上がったということだった。
呼吸を変えただけだが、ヨガのインストラクターのレベルであっても、気が付かない身体の使い方というのがあり、一つの身体の使い方を変えるだけでも身体にこのような大きな影響を及ぼすというのはただただ驚いた。モダリティが身体に大きな影響を及ぼしているということがよく分かる。
クライアント・セッションで、呼吸(体感覚といってもいい)を使うのみならず、イメージ(例、砂地に足を踏み込むイメージ)、嗅覚(例、オレンジのアロマ)や視覚(例、視野を広げる)のようなモダリティの変化を取り入れる機会を観察する機会が多くあった。今後、自立して自分でロルフィングのセッションを提供する際には五感やモダリティを含めたアプローチも大事にしていきたいと思う。