【R#104】セラピスト(4)〜Less is Moreについて

吉福伸逸氏のセラピストとしての考えについては、3回にわたって紹介してきた(「心の4レベル」、「コンテキスト」、「プロセス」参照)。今回はミュンヘンのロルフィング・トレーニングで学んだ、’Less is More’について吉福氏の考え方と共に紹介したい。
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ロルフィングの施術を行っている際に、
「各回どこまで施術(介入)したらいいのか?」
私にとって非常に悩ましい問題になりそう。
Phase IIで生徒同士で施術することで学んだ10回シリーズを、クライアントへ応用するPhase IIIの段階に移すと、ツールがあるのだが、どのツールを使ったらいいのか?わからなくなることがあるからだ。
Beginning of a fairy tale
例をあげたい。
Body Readingと情報過多」に取り上げたことがあるが、ロルフィングのセッションにおいては、歩行と立位の身体観察から始めるが、目に頼り身体を観察すればするほど情報量が増えてしまい大切なものを見失ってしまうこともある
1)そこで、今まで各回で学んだ手順のうち、優先順位をどのようにつけるのか?
2)施術するかしないかの判断をどうするのか?
情報の絞り込みを行っていく。
そして、トレーニングでは必要以上に施術を行わないことが秘訣の一つだと学ぶ。
なぜなら
クライアントは初めてロルフィングという施術を体験することになるわけで、身体にあまりにも多くの情報を与え過ぎると情報に圧倒される。ということは、自分の身体内でどのような変化が起きているのか?がわからなくなってしまう可能性がある
からだ。
Phase IIIのJörg先生はそれを’Less is More’という言葉で表現した。
このLess is Moreについてはどのようなサジ加減でみたらいいのか?吉福氏の考え(「吉福伸逸の言葉」)をベースに見ていきたい。
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中福氏は、現代の日本は「過剰介入の問題」を抱えていることを例に挙げながら説明している。
例えば、
1)駅で頻繁に「白線の内側をお歩きください」というアナウンス
2)子供が怪我しないように運動会で騎馬戦がなくなった
3)自己啓発セミナーで、社会で成功する方法、人生で勝ち組になる方法、お金を儲ける方法などを教えている
こういったことを行っていると、人々の安全が守られ、危険をいかにして回避するか、といったマインドとなり、過剰介入は個人の力を奪ってしまう。それは、危機を乗り越えるスキルが身につかず、心が折れやすくなるというのもある。そして、失敗して自分で這い上がる経験がなかなか身につく機会もなく、他人の言うことを従うことが多いことから、自分の頭で考える習慣を失ってしまう
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翻ってみれば、私自身9ヶ月の世界一周から戻ってきて受けた日本の第一印象は、サービスが過剰だということ。ヨーロッパの電車に乗ると、アナウンスは最小限なのに、日本の場合には、アナウンスがいたるところで行われている。また、どこかの店に入ると、店員のサービスの過剰ぶりが目についた。
このように考えると、セラピーで過剰介入をしてしまうと、クライアントは依存的になってしまうというのは良く分かる。
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ただ、全く介入しないのはいいか?といえばそうではない。何か起こっているのにそれを見過ごすというケース。セラピストはクライアントに対していい方向に向かって欲しいと思うもの。ついついいい情報のみに目が行き、悪い情報は見逃したりして、適切な時に適切な施術というタイミングを逃すことにつながる。
では、適切な介入というのはどういったものなのか?
吉福氏が考えるのは、「拮抗する力」。
吉福氏はボディワークを例に挙げて説明する。
クライアントは、感情が抑制されていることにより無意識にどこかで筋肉の緊張・硬直を意味する「筋肉の鎧」がある。抑圧していた感情が表に出ると「筋肉の鎧」に変化が起きてくる(この考え方は、身体中心型療法を唱えたウィリヘルム・ライヒからきている)。「微妙な震えの動き」は一つの例だ。セラピストは、その変化している部分に手を当てることでクライアントは身体の変化に気づく。反応の大小によってセラピストは力の入れ加減をクライアントに寄り添う形で変えていくことになる。力に沿うので「拮抗した力」となる。セラピストは、クライアントの感情が噴出し、表面化した時に触れていた手を離す。最終的に、クライアントの感情は流れ出ていくという。
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身体内で反応が続くようだったら、拡大・強調・促進という3つのステップも効果的らしい。それは、例えば震えが止まらない場合には、その震えをクライアントが感じてもらう方向でアプローチ。震えを拡大し、強調し、促進するために拮抗する力を与え続けるんだそうだ。一見危険な方向へ行くように感じられるが、逆にクライアントのエネルギーの強さに圧倒され、セラピストが不安になり右往左往する場合に、クライアントのプロセスが邪魔され、変容がおこならないのみならず、無力感・罪悪感・不安・恐怖が支配されることになる。クライアントが体験するプロセスを信じて進めば、終結の瞬間を迎えることができる。それが結果的にクライアントに新たな洞察を提供することになる。
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まとめると、適度な介入・施術を行いプロセスを信じることなのでしょう。
これからロルフィングにおいて、施術をどれだけするのか?については悩むことが出てくると思う。
不安と安心」で以下のIda Rolfの言葉を紹介した。
「自分自身が頼りになるということ。自分自身が見ることができ、感じることができるものこそが安心感を与えてくれる。安心感が得られないといったことを感じることは全く問題ない」
今後とも、今この瞬間に感じることを大事に、ロルフィングの各セッションで決められたことを忠実に行い、クライアントが体験するプロセスを大切にしていきたい。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka